倫理指針
職業倫理指針について
医療従事者は、人の病気や健康に関わる仕事を行うにあたり、責任感と使命感をもって自身の役割を果たさなければなりません。そのため、医療に関わる様々な職種で、遵守すべき倫理指針や綱領が各学術団体から発表されています。各職種により求められる倫理的項目に違いはありますが、患者さんの人権を尊重すること、患者さんの個人情報を守ること、知識や技術の向上に励むことなどは共通しています。
当院では、それらを職種に関わらず遵守すべき共通の項目とし、以下のとおり職業倫理指針として定めています。
近森病院 職業倫理指針
原則
- 人間の生命を尊重し、また人間としての尊厳および権利を尊重します。
- 対象の国籍、人種、信条、年齢、性別、社会的身分、経済的状態にこだわることなく対応します。
- 対象のプライバシーの権利を保護するために、個人に関する情報の秘密を守り、これを他者と共有する場合については、適切な判断のもとに対応します。
- 現実の状況下において個人としてあるいは他者と協働して、常に可能な限り高度な医療を提供します。また、自己の実施した医療については個人としての責任をもちます。
- 対象のケアが他者によって阻害されているときは、対象を保護するよう適切に行動します。
- 常に質の高い医療を提供できるよう個人の責任において継続的学習に努めます。
- 実践の水準を高め、よりよいケアのために研究に努めます。
- 人々に常に質の高い医療を提供できるよう教育の水準を設定し、実施します。
- 常に医療水準を高めるような制度の確立に参画し、また、各専門職のレベルの向上のために組織的な活動を行います。
臨床倫理指針について
医療従事者や患者さんの間で、同じ医学的事実を共有していても、それを捉える価値観が異なれば、治療上の判断が分かれる事態が起こり得ます。これらは臨床倫理問題とよばれます。
当院ではこの問題に対し、各関係法令を遵守するとともに、患者さんの尊厳や人権に配慮するため、以下を臨床倫理指針として定めています。また主な具体的課題に対しては、学術団体等から公表されているガイドライン等を参照し、対応指針として定めています。
近森病院 臨床倫理指針
原則
- 患者さん個人の意思を十分に確認し、自己決定を尊重します。
- すべての医療行為は患者さんの同意にもとづくことを原則とします。同意を得ることが困難な場合には、対応指針に従うとともに、患者さんの意思を尊重するよう努めます。
- 患者さんにとって納得のいく選択ができるよう、わかりやすい説明および情報の提供を行います。訴えやご意見は誠意をもって聴き、信頼を得るよう努めます。
- 臨床上の倫理的問題には、ガイドラインの適用や倫理委員会での審議などをもって、実践的な対応ができるように備えます。
- 安全管理に最大限努め、有害事象が発生した際には患者さんの救済を優先します。また、原因の究明に尽力し、再発防止を図ります。
- 診療行為にかかる各関係法令を遵守します。
- 多様な局面で公平かつ最善の対処ができるよう、継続的に対応の見直しをし、倫理指針が深く浸透するように取り組みます。
主な臨床問題への対応指針
- 1.真実の開示
- 原則として開示する。ただし、患者さんが望まない場合や、臨床試験に参加しているために、担当医も知らない場合はこの限りではない。
- 2.精神的判断能力が欠如している患者さんへの対応
- 適切な代理人の方に説明し、同意を得ることとする。適切な代理人がいない場合は、担当医が当院の臨床倫理指針の原則に従い判断する。
- 3.法的判断能力のある患者さんの同意が得られない治療
- 治療によって生じる負担と利益を提示し、その上で、望まない治療は受けない権利を患者さんに認める。ただし、感染症法などに基づき、患者さんの自己決定の権利が制限される場合がある。
- 4.信仰上の理由により同意が得られない輸血
- 「近森病院における信仰上の理由による輸血拒否患者に関するガイドライン」に従う。
- 5.身体拘束
- 患者さんの尊厳を尊重し、不必要な行動制限は行わない。治療上やむを得ない場合でも、必要最小限に止め、安全対策中は毎日カンファレンスにて評価を行い、不必要となった場合は速やかに解除する。
- 6.虐待事案
- 児童虐待を認知した場合は通報する。児童以外の場合においても、当院の「虐待事案対応マニュアル」に従う。
- 7.心肺蘇生、延命治療
- 心肺蘇生の有効性について患者さんやご家族、代理人に説明する。
状況に変化があった際は、患者さんの事情に応じ①~④より対応をする。- 患者さんが意思表示できる間に、延命治療など終末期医療に対する希望を確認し、それを尊重する。
- 患者さんの意思が確認できない場合で、ご家族等から患者の意思が推定できる場合は、それを尊重する。
- 患者さんの意思が確認も推定もできない場合、ご家族等との話合いで意見の一致があれば、それを尊重する。
- 患者さんの意思が確認も推定もできない場合で、ご家族等の意見に一致がみられない場合は、担当医が臨床倫理の原則に従い判断する。
また、心肺蘇生術を行わないことを希望し、「同意書」を提出している場合でも、これを撤回することができる。
なお、当院ではいかなる場合も積極的な安楽死や自殺幇助は認めない。
- 8.脳死判定、臓器移植
- 当院の脳死判定委員会、臓器移植委員会の判断に従う。
- 9.臨床研究、治験
- 国等の指針、当院の倫理委員会、治験委員会の指示に従う。
- 10.その他
- 近森病院臨床倫理指針の原則に従う。必要に応じて倫理委員会を開催し、その方針に従う。