災害拠点病院
災害拠点病院は、災害時救護において中核となる病院です。多発する重篤救急患者の救命医療に対応した高度な診療体制をはじめ、傷病者等の広域搬送への対応や災害派遣医療チームの派遣機能などを有します。
当院は、1997年に災害支援病院の指定を受け、救護病院や一般の医療機関からの負傷者を受け入れのための体制整備を進めてまいりました。2009年9月11日には、高知県より災害拠点病院に指定され、災害医療のさらなる後方支援活動に努めています。
災害拠点病院指定要件
出典:平成24年3月21日付け医政発0321第2号厚生労働省医政局長通知
「災害時における医療体制の充実強化について」令和元年7月17日改正運営体制
- 24時間緊急対応し、災害発生時に被災地内の傷病者等の受入れ及び搬出を行うことが可能な体制を有すること。
- 災害発生時に、被災地からの傷病者の受入れ拠点にもなること。なお、「広域災害・救急医療情報システム(EMIS)」が機能していない場合には、被災地からとりあえずの重症傷病者の搬送先として傷病者を受け入れること。また、例えば、被災地の災害拠点病院と被災地外の災害拠点病院とのヘリコプターによる傷病者、医療物資等のピストン輸送を行える機能を有していること。
- 災害派遣医療チーム(DMAT)を保有し、その派遣体制があること。また、災害発生時に他の医療機関のDMATや医療チームの支援を受け入れる際の待機場所や対応の担当者を定めておく等の体制を整えていること。
- 救命救急センター又は第二次救急医療機関であること。
- 被災後、早期に診療機能を回復できるよう、業務継続計画の整備を行っていること。
- 整備された業務継続計画に基づき、被災した状況を想定した研修及び訓練を実施すること。
- 地域の第二次救急医療機関及び地域医師会、日本赤十字社等の医療関係団体とともに定期的な訓練を実施すること。また、災害時に地域の医療機関への支援を行うための体制を整えていること。
- ヘリコプター搬送の際には、同乗する医師を派遣できることが望ましいこと。
施設及び設備
- 病棟(病室、ICU等)、診療棟(診察室、検査室、レントゲン室、手術室、人工透析室等)等救急診療に必要な部門を設けるとともに、災害時における患者の多数発生時(入院患者については通常時の2倍、外来患者については通常時の5倍程度を想定)に対応可能なスペース及び簡易ベッド等の備蓄スペースを有することが望ましい。
- 診療機能を有する施設は耐震構造を有することとし、病院機能を維持するために必要な全ての施設が耐震構造を有することが望ましい。
- 通常時の6割程度の発電容量のある自家発電機等を保有し、3日分程度の備蓄燃料を確保しておくこと。なお、自家発電機等の燃料として都市ガスを使用する場合は、非常時に切替え可能な他の電力系統等を有しておくこと。また、平時より病院の基本的な機能を維持するために必要な設備について、自家発電機等から電源の確保が行われていることや、非常時に使用可能なことを検証しておくこと。なお、自家発電機等の設置場所については、地域のハザードマップ等を参考にして検討することが望ましい。
- 災害時に少なくとも3日分の病院の機能を維持するための水を確保すること。具体的には、少なくとも3日分の容量の受水槽を保有しておくこと又は停電時にも使用可能な地下水利用のための設備(井戸設備を含む。)を整備しておくことが望ましいこと。ただし、必要に応じて優先的な給水協定の締結等により必要な水を確保することについても差し支えないこと。
- 衛星電話を保有し、衛星回線インターネットが利用できる環境を整備すること。また、複数の通信手段を保有していることが望ましい。
- 広域災害・救急医療情報システム(EMIS)に参加し、災害時に情報を入力する体制を整えておくこと。すなわち、情報を入力する複数の担当者を事前に定めておき、入力内容や操作方法などの研修・訓練を行っておくこと。
- 多発外傷、挫滅症候群、広範囲熱傷等の災害時に多発する重篤救急患者の救命医療を行うために必要な診療設備
- 患者の多数発生時用の簡易ベッド
- 被災地における自己完結型の医療に対応出来る携行式の応急用医療資器材、応急用医薬品、テント、発電機、飲料水、食料、生活用品等
- トリアージ・タッグ
- 食料、飲料水、医薬品等について、流通を通じて適切に供給されるまでに必要な量として、3日分程度を備蓄しておくこと。その際、災害時に多数の患者が来院することや職員が帰宅困難となることを想定しておくことが望ましい。また、食料、飲料水、医薬品、燃料等について、地域の関係団体・業者との協定の締結により、災害時に優先的に供給される体制を整えておくこと(ただし、医薬品等については、都道府県・関係団体間の協定等において、災害拠点病院への対応が含まれている場合は除く。)。
- 原則として、病院敷地内にヘリコプターの離着陸場を有すること。病院敷地内に離着陸場の確保が困難な場合は、必要に応じて都道府県の協力を得て、病院近接地に非常時に使用可能な離着陸場を確保するとともに、患者搬送用の緊急車輌を有すること。なお、ヘリコプターの離着陸場については、ヘリコプター運航会社等のコンサルタントを受けるなどにより、少なくとも航空法による飛行場外離着陸場の基準を満たすこと。また、飛行場外離着陸場は近隣に建物が建設されること等により利用が不可能となることがあることから、航空法による非公共用ヘリポートがより望ましいこと。
- DMATや医療チームの派遣に必要な緊急車輌を原則として有すること。その車輌には、応急用医療資器材、テント、発電機、飲料水、食料、生活用品等の搭載が可能であること。
災害医療に対する運営理念と運営方針
運営理念
近森病院は、災害発生時のみならず災害対策においても、災害拠点病院として地域の医療機関、消防、自治体ほか関係機関と協力連携を密にし、すべての病院職員がすべての被災者の方々のために尽力します。
南海トラフ地震対策においても災害医療の最先端を目指し、多くの人たちの救命と地域復興の礎となる努力を続けます。
運営方針
- 日常から地域の多くの医療機関との連携を密にします。
- 高知県・高知市の災害医療対策とシームレスな関係を保ち、信頼関係を高めます。
- 常に課題の抽出と解決を意識し、災害対策に取り組みます。
- すべての病院職員に対し、その意識を常に高く保つための訓練や研修を行います。
- 災害医療を通じて社会貢献を実践します。
災害派遣医療チーム
(Disaster Medical Asistance Team、以下DMATと呼称)
DMAT隊員は、医師、看護師、業務調整員(救急救命士、薬剤師、放射線技師、事務員等)で構成され、大規模災害や事故などの現場において急性期医療(おおむね48時間以内)の活動を展開します。機動性を持ち、専門的な訓練を受けており、いつでも対応可能な医療支援体制をとっています。当院は、2021年4月時点で、22名の隊員を擁しています。
活動実績
これまでに、東日本大震災(福島、宮城)、熊本地震(熊本、大分)、西日本豪雨災害(愛媛)などに出動し医療支援活動を行ってきました。
取組み
院内では、南海トラフ巨大地震発災時を想定した災害医療訓練などを行い、災害対策の向上に努めています。また、DMAT隊員は、毎年9月に行われる政府主催の防災訓練やDMAT研修会に参加し、医療支援活動にまつわる知識や技能の維持に励んでいます。