脳神経内科

動作、意識、言葉、
「いつもと違う」と気づいたときは
救急の受診を!

近森病院の大内科制について

内科

近森病院内科は、前副院長浜重直久医師が内科部長となった1988年より「内科医は、専門医である前にジェネラリスト(総合内科医)であるべき」という信念のもとバランスのとれた内科医を育成し続けています。
発足当時は、7名であった内科医も現在では58名となりました。医学の進歩により診断と治療により高度な専門性が求められる様になったため、2020年からは、より専門性を高めるため、循環器内科や消化器内科などに分かれましたが、浜重先生の信念を受け継ぎ1フロアーの医局で病棟も共有し、毎朝のミーティング、週1回の症例検討会、月1回のCPC(臨床病理検討会)など全員で集まり、内科の各診療科を統合した「大内科制」を堅持し、各診療科の医師が自由に相談して診療を行う垣根のない診療を心掛けています。

診療方針と特徴

脳神経内科は脳や脊髄、神経、筋肉の病気をみる内科です。
体を動かしたり、感じたりする事や、考えたり覚えたりすることが上手にできなくなったときにこのような病気を疑います。症状としてはしびれやめまい、うまく力がはいらない、歩きにくい、ふらつく、つっぱる、ひきつけ、むせ、しゃべりにくい、ものが二重にみえる、頭痛、かってに手足や体が動いてしまう、ものわすれ、意識障害などがあります
脳神経内科の病気は後遺症が残ることが多く、早期受診・早期治療が大切です。このような症状が『突然』出現してきた場合には直ちに救急外来(ER)を受診してください。当科には脳卒中の専門医も在籍しており、脳神経外科とも連携して脳卒中(脳梗塞を中心に)急性期診療を行なっています。
また病気によっては、数週間から数年以上かけて徐々に症状が強くなってくるといった場合もあります。そのようなことに気がついた場合には、まずはかかりつけのクリニックなどにてご相談ください。その上で必要に応じて当院へ紹介してもらってください。パーキンソン病や脊髄小脳変性症、重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症、末梢神経障害などの診断や治療も行なっています。

専門医の教育施設として

当科は、以下の役割を担っています。

医師紹介

主任部長 細見 直永 Naohisa Hosomi (リハビリテーション科部長)

Field[得意分野]

脳卒中の急性期診療に加え、高血圧・脂質異常症・糖尿病・全身の動脈硬化症や血栓症などへの介入を通じて、脳卒中の発症や再発の予防に努めた診療をいたします。

Message[患者さんへのメッセージ]

一度発症してしまうと重度の後遺障害を残すこともある脳卒中ですが、予防することが可能です。患者さん毎に合わせた最適な発症・再発予防方法をご相談させていただきながら見出していきます。お気軽にご相談ください。

Qualifications[資格等]
    医師の専門性資格
    [ 厚生労働省医政総発0124第1号通知に準ずるもの、および日本専門医機構認定の資格等 ]
  • 日本内科学会 総合内科専門医
  • 日本神経学会 神経内科専門医・指導医
  • 日本老年医学会 老年病専門医・指導医
  • 日本循環器学会 循環器専門医
  • 日本リハビリテーション医学会 リハビリテーション科指導医
  • 日本専門医機構 リハビリテーション科専門医
  • その他資格等
  • 広島大学医学部客員教授
  • 日本脳卒中学会 専門医・指導医
  • 日本動脈硬化学会 指導医
  • 日本医師会 認定産業医
  • 医学博士(香川医科大学大学院-1996年)
  • Fellow of American Heart Association
  • Fellow of European Stroke Organization
  • Fellow of World Stroke Organization

部長 山﨑 正博 Masahiro Yamasaki (近森病院附属看護学校学校長)

Field[得意分野]

・脳卒中診療
・神経眼科学(眼球の運動障害)
・ケイレン・てんかん性疾患
・神経難病

Message[患者さんへのメッセージ]

1976年から神経診療を行っています。病歴を聴き、打鍵器と音叉、針などの診察道具を用いて頭のてっぺんから足の先まで丁寧に診察して診断をつけます。

Qualifications[資格等]
    医師の専門性資格
    [ 厚生労働省医政総発0124第1号通知に準ずるもの、および日本専門医機構認定の資格等 ]
  • 日本内科学会 総合内科専門医・指導医
  • 日本神経学会 神経内科専門医・指導医
  • その他資格等
  • 日本脳卒中学会 専門医
  • 高知大学医学部老年病科臨床教授

部長 葛目 大輔 Daisuke Kuzume

Field[得意分野]

主として脳梗塞やGuillain-Barre症候群、痙攣発作などの急性期脳神経内科的疾患の診療、及びパーキンソン病などの神経変性疾患、成人のてんかんの外来診療を中心に診療しています。

Message[患者さんへのメッセージ]

昔、脳神経内科疾患は「なおらないか」と言われていましたが、医学の発展により徐々に治療が可能な疾患が増えていきました。しかし、その多くの疾患に「特効薬」はなく、看護・介護などの「ケアcare」が主体です。今後とも一緒に頑張っていきましょう。

Qualifications[資格等]
    医師の専門性資格
    [ 厚生労働省医政総発0124第1号通知に準ずるもの、および日本専門医機構認定の資格等 ]
  • 日本内科学会 総合内科専門医・指導医
  • 日本神経学会 神経内科専門医・指導医
  • 日本老年医学会 老年病専門医
  • その他資格等
  • 日本神経学会 代議員
  • 日本老年医学会 代議員
  • 日本脳卒中学会 脳卒中専門医
  • 日本認知症学会 認知症専門医・指導医
  • 日本嚥下医学会 認定嚥下相談医

非常勤 森本 優子 Yuko Morimoto

Field[得意分野]

脳神経内科一般 (脳卒中、それにともなう生活習慣病、パーキンソン病などのパーキンソン関連疾患、筋萎縮性側索硬化症や重症筋無力症などの神経難病、脳炎、髄膜炎、末梢神経障害など)

Message[患者さんへのメッセージ]

脳神経内科医の少ない高知県で、少しでも患者さんの役に立てればと思っています。手足の動かしにくさやしびれなどでお困りの方は一度脳神経内科の受診も考えて頂ければ幸いです。

Qualifications[資格等]
    医師の専門性資格
    [ 厚生労働省医政総発0124第1号通知に準ずるもの、および日本専門医機構認定の資格等 ]
  • 日本内科学会 総合内科専門医
  • 日本神経学会 神経内科専門医
  • その他資格等
  • 日本内科学会 認定内科医

堤 聡 Satoshi Tsutsumi

Field [得意分野]

脳神経内科一般

Message[患者さんへのメッセージ]

皆様の笑顔のために全力を尽くしてまいります。

Qualifications[資格等]
    医師の専門性資格
    [ 厚生労働省医政総発0124第1号通知に準ずるもの、および日本専門医機構認定の資格等 ]
  • 日本内科学会 総合内科専門医
  • 日本リウマチ学会 専門医
  • その他資格等
  • 日本内科学会 認定内科医
  • 歯科医師免許
  • 医学博士(神戸大学-2010年)

吉田 剛 Takeshi Yoshida (リウマチ・膠原病内科科長)

Field [得意分野]

リウマチ膠原病内科、脳神経内科。
特に、自己免疫性神経疾患と膠原病の神経筋合併症の診療を最も得意としています。

Message[患者さんへのメッセージ]

微力ながら高知県の医療の発展に尽力いたしますので、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

Qualifications[資格等]
    医師の専門性資格
    [ 厚生労働省医政総発0124第1号通知に準ずるもの、および日本専門医機構認定の資格等 ]
  • 日本内科学会 総合内科専門医・指導医
  • 日本リウマチ学会 専門医
  • 日本神経学会 神経内科専門医・指導医
  • その他資格等
  • 日本リウマチ学会 登録ソノグラファー
  • 日本臨床神経生理学会 専門医(筋電図・神経伝導)
  • 日本内科学会 認定内科医
  • 臨床研修指導医
  • ECFMG Certificate
  • 医学博士(徳島大学-2021年)

非常勤 金子 恵子 Keiko Kaneko

Field[得意分野]

脳神経内科、認知症を専門としています。

Message[患者さんへのメッセージ]

難病とされる病気が多い脳神経内科ですが、患者さんの生活により沿った治療をしたいと考えています。

Qualifications[資格等]
    医師の専門性資格
    [ 厚生労働省医政総発0124第1号通知に準ずるもの、および日本専門医機構認定の資格等 ]
  • 日本神経学会 神経内科専門医
  • その他資格等
  • 日本認知症学会 認知症専門医・指導医
  • 日本内科学会 認定内科医
  • 日本医師会 認定産業医
  • 認知症サポート医

主な疾患と治療方法

脳卒中

この病気は昔、中気あるいは中風と言われた病気で、突然体の半身が動かなくなったり、言葉が出ないあるいは滑舌が悪くなります。多くの人はこのような典型的な症状がみられますが、病変部によっては反応だけが悪くなったり、めまい・ふらつきのみだったり、ものが二つに見えたり、口のまわりや顔だけがしびれたり、一方の足や手だけが動かなくなることもあります。このような非典型的な症状の時は様子を見る患者さんが多く、診断が遅れることがあります。しかし、脳卒中は後遺症が残ることが多く、すぐに受診していただくと後遺症なく回復することもあります。
当院では24時間対応の診療体制で、入院となった場合には「SCU(ストロークケアユニット)」という専門病棟に入院していただき、リハビリ、栄養部、薬剤部などの多職種のスタッフが連携を取りながら集中的に治療を行います。
脳卒中診療は“いかに早く治療を開始するか”という時間との争いになります。上記のような症状が急に出現して、いつもの体と違っていたら、救急外来を受診してください。

けいれん・てんかん

ヒトは一生のうち1度はケイレンを起こすといわれています。ケイレンの多くは原因不明で再発することはありませんが、その中に「てんかん」が隠れていることがあります。特に再発を繰り返す時はてんかんの可能性が高くなります。
てんかんというと手足が震えるケイレン性疾患と思われがちですが、てんかんの約半数はケイレンのない意識障害といわれています。特に、高齢者では一過性に意識が途切れたり、反応が悪くなります。最近では、「認知症の中にてんかんが隠れている」ともいわれるようになってきました。反応がいつもと違ったら脳神経内科を受診してください。
けいれん性疾患の大事なことは、「てんかん」を除外することです。てんかんであれば専門家を受診して、発作型あるいは脳波所見に応じた抗てんかん薬を内服することが重要になります。抗てんかん薬の進歩には目覚ましいものがあります。

パーキンソン病、脊髄小脳変性症(SCD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)など

脳神経内科の診療する疾患の中で慢性的に進行する疾患が多くあり、その代表的なものとして「神経変性疾患」といわれる疾患群があります。いずれの疾患も数ヶ月から数年単位で手足に力が入りにくくなったり(ALS)、滑舌が悪くなり酔っ払いのようなふらつく歩行になったり(SCD)、動作が鈍くなったり手足が震えたり(パーキンソン病)します。
このような神経難病の多くを占める神経変性疾患は、専門医が診察しないと長年にわたって見逃されることがあります。ビンやふたが開けられなくなったり、トイレや風呂などの日常生活に時間がかかるようになったり、あるいは真っ直ぐに歩けなかったり、滑舌が悪くなっていくようなら受診してください。

ふるえ

脳神経疾患の中で最も多い訴えは「手や頭、あるいは足が震えること」という統計があります。ふるえで受診する患者の20%程度は良性で、進行もしないがほぼ一生内服を続ける必要のある本態性振戦症のことがあります。手が震えて字がうまく書けなかったり、コップ等の食器を持ったとき震えてお困りの方は、まず受診してください。

末梢神経障害、筋疾患

末梢神経障害の症状はしびれ・ふらつきが中心であり、慢性的に続いている場合もあれば、急性に進行して速やかに治療を要する場合もあります。頻度の多い原因としては、糖尿病、ビタミン欠乏症、ギランバレー症候群やリウマチ膠原病のような免疫疾患があります。しびれで受診されても、よく診てみると頸椎に原因があることもしばしばあります。検査は血液検査、頸椎・腰椎などのMRI検査、神経のエコー検査、神経伝導検査(手足に弱い電気をあてて神経のつながりを調べる)などを行うことが多いです。
筋疾患は筋力の低下、特に腕や脚の体に近い部分や体幹の筋力が低下してくることが多いです。多くの場合は筋肉の萎縮を伴いますが、筋炎や、重症筋無力症といった病気では、筋萎縮が目立たないこともあります。これらの病気では比較的症状が急に進んでくるため、早く受診いただいて診断を付ける必要があります。診断のためには腕や脚の筋肉のMRI検査、エコー検査、筋電図などを行います。より詳しい検査を、専門医からご説明の上行うこともあります。
末梢神経・筋疾患専門外来(しびれ外来)では、高知県で唯一の脳神経内科と神経伝導検査、筋電図の両方の専門医である吉田医師による診察を行っております。末梢神経障害、筋疾患が疑われる場合は、ぜひ一度受診をお勧めします。

末梢神経・筋疾患専門外来(しびれ外来)のご案内

新たな取り組み

SCU(stroke care unit)の能力アップ

SCU病棟の運用は脳神経外科と協力して順調に行われており、稼働率・算定率は年々改善しています。また、超急性期脳卒中治療のt-PA治療が定着して症例数も増加しています。さらに、t-PA無効例の多くは脳神経外科に依頼し、血栓回収療法を行い良好な結果を得ています。入院ベッド数が高知県で一番に多いSCU病棟として、呼吸器装着などより重症の脳卒中患者を早期から受け入れられるように、今後はスタッフ教育、多職種との連携などチーム医療の充実を進めてまいります。

脳卒中の市民啓発運動

脳卒中患者で発症後、数日して受診する患者さんが未だに散見されます。全国的にt-PAの対象患者の5~8%程度しか実施されていないという現況と、脳卒中診療では早期診断・早期加療が最優先されるという観点から、市民のみなさまに啓発運動をしていくことが重要と捉えています。特に、TIA(一過性脳虚血発作)の重要性と、t-PA投与時間制限が緩和になったことなどについて重点的に啓発してまいります。

地域連携の拡充

発症時から、患者であると同時に障害者であることの多い神経疾患では、医療ソーシャルワーカーを中心に多職種が参加して、神経難病ネットワークや脳卒中地域連携パスを通じた回復期病院、療養型病院および開業医との連携を深め、地域で完結する神経診療体制の構築と連携の深化を図る必要があります。大病院から地域包括診療という国の医療施策の流れに沿って、地域中核病院や診療所との連携を重要視してまいります。

てんかん診療の拡充

絶対数が多く、救急搬送されることの多いケイレンやてんかんの患者数は年々増加していますが、高知県ではてんかん診療の専門家が少ない現状が続いています。成人のてんかん診療においては、専門家のいる当院が高知県のてんかん診療の中心を担っていかざるを得ない状況であります。今後はてんかん診療の若手医師を育てていくことが課題です。

診療実績

脳神経内科入院患者の推移

2018年から2022年

  • 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
    脳血管障害 315 361 279 260 177
    てんかん・けいれん等神経機能性疾患 130 177 125 85 86
    神経変性疾患 64 52 63 66 53
    神経感染症 27 18 15 28 14
    ギランバレー症候群など神経免疫疾患 29 30 15 14 35
    その他 42 33 36 49 71