救命救急センター
救命救急センターは、重症及び複数の診療科領域にわたるすべての重篤な救急患者さんを24時間体制で受け入れる第三次救急医療機関です。
当院は、県内で最も多くの救急患者さんを受け入れてきた実績や災害医療支援への取り組みなどを評価され、2011年5月に高知県より救命救急センターの指定を受けました。
救命救急センターの理念
近森病院 救命救急センターは、地域医療機関や消防機関との密な連携を通じ、第三次救急医療機関として全診療科の協力のもと、県内全域から重症患者さんを受け入れ、患者さんに寄り添う救急医療を提供して社会復帰を全力で支援します。
基本方針
- 安全で高度な救急医療に先進的に取り組み、患者さん中心の医療を実現します。
- 地域医療機関、消防機関との密な連携を実現します。
- 全職員の継続的な教育により、技術向上を実践します。
- 医療活動を通じて社会貢献を実践します。
診療体制
設備について
救命救急センターでは、24時間365日急患を受け入れています。救急外来エリアであるERは、Redゾーン(重症患者対応)とYellowゾーン(中等症患者対応)に分かれており、例えばRエリアでは、搬入後、直ちに緊急手術も対応可能な設備を有しています。
また、入院が必要となった患者さんは、重症度に応じて、救命救急病棟、集中治療室(ICU)、ハイケアユニット(HCU)などを選択し対応させていただきます。
このほか、脳卒中の患者さんには、脳卒中専用治療室(SCU)もあり専門医が24時間体制で対応しています。
スタッフについて
救急医をはじめ、各科専門医、研修医、専任看護師のほか院内救急救命士、診療放射線技師、薬剤師、事務職員、クラークなど多職種により、救急搬入患者さんから徒歩で直接来院、受診される患者さんまで、すべての方に対応しています。夜間帯や休日は当直体制となりますが、必要に応じて各科専門医を呼び出す体制を採っていますので、安心して受診してください。
災害医療への対応
2009年に災害拠点病院に指定されており、被災地へのDMAT隊派遣など、災害医療への即時対応が可能となっています。南海トラフ地震を想定した、災害訓練も定期的に行っています。
ドクターカーについて
2007年6月から重症患者さんへの一刻も早い接触を目的に、医師同乗による現場出動や病院間搬送、遠方の消防機関との中継搬送などを行っています。また、2018年4月からは全日日勤帯へとその対応範囲を広げています。
ドクターカーには最新の医療機器を搭載しており、いかなる疾患にも対応可能なよう充実を図っています。これまでの実績では、循環器系疾患、脳疾患、外傷の方が多くを占めています。
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[近森病院 救命救急センタードクターカーの出動基準]
- 気道確保が困難(窒息症例など)
- 急性呼吸不全、慢性呼吸不全の急性増悪など
- 急性心不全、心筋梗塞など循環が不安定
- 脳卒中の疑いや意識障害、けいれん発作
- ショックあるいはショックに陥る可能性あり
- 広範囲熱傷(気道熱傷含む)
- 急性薬物中毒
- 重篤な代謝性疾患(腎・肝不全、糖尿病など)
- 心肺停止(搬出、搬送困難など)
- 心肺停止蘇生後
- 重症外傷、多発外傷(止血困難、搬出困難など)
- 事故・災害現場での医療活動が必要な場合
- その他、医師の臨場/早期接触が望ましいと判断した症例
ドクターヘリについて
2007年、高知県防災ヘリを使ったドクターヘリ的運用で空路からの受け入れが始まりました。高知県ドクターヘリの正式運用の開始(2011年)と本館A棟屋上ヘリポートの完成(2014年)に伴い、搬入件数は徐々に増加し、年間約100件の実績を挙げています。また、ドクターヘリに搭乗する「フライトドクター」として当院救急科医師も登録されており、定期的に出動しています。
救急ワークステーションについて
2022年5月より、高知市消防局の救急隊が週に1回、当院に常駐し、そこから要請に応じて出動する体制をとっています。
出動にあたっては、救急科医師、または看護師が同乗し必要に応じて助言、指導を行います。
帰院後には、救急活動の振り返りや事例検討を行い、救急隊員の知識、技能の向上を目指しています。
教育体制
専攻医・研修医への教育
日本救急医学会専門医資格を有する指導医が中心となって、専攻医や研修医に対して、ほぼマンツーマン体制による指導を行っています。また、各種の勉強会、カンファレンスなどにも参加し、いかなる疾患にも対応可能な技術や知識の習得に励んでいます。専攻医は、研修基幹病院である近森病院研修プログラムに従い、当院及び関連施設での研修を行っています。
Off-the-job training(院外研修)の実施
JATEC(外傷初期診療プログラム)、JPTEC(病院前外傷救護)、DMAT(災害医療支援チーム)研修など各種のコースに、救急科医師を中心に講師、受講者として積極的に参加し日々研鑽を積んでいます。
また、近森ICLS(初期救命処置)コースは、県内外から広く講師、受講生を受け入れ、多職種間での交流も図っています。
MC体制構築の取り組み
MC(メディカルコントロール)体制とは、医学的観点から救急救命士を含む救急隊員が行う応急処置等の質を保証する仕組みであり、オンライン指示対応(救命士が現場から患者さんの状況を医師と直接連絡し、医師の指示を受け応急処置等を行うこと)や事後検証などを行っています。また、県内3つの救命救急センターが持ち回りで、定期的に消防機関との救急症例検討会も行っています。院内救急救命士が特定行為が可能になるという救命士法改定に合わせて、院内MC体制を準備しています。
学生実習・特定行為研修の受け入れ
当院では医学生をはじめ、看護学生、薬学生、専門学校生などの臨床実習に協力しています。診察室や病棟、検査室などにおいて、当院のスタッフとともに学生が診療内容を見学し、実習や補助をさせていただく場合もございます。
また、当院は、厚生労働省「特定行為に係る看護師の研修制度」の指定研修機関です。看護師として一定の経験を有し、かつ専門的な研修を受けた者が、実習で医師の指導を受け、特定の医行為を実施することがあります。医師との連携を図り安全には十分配慮して行いますのでご理解、ご協力をお願いします。
患者さん・ご家族へのお願い
受診について
救命救急センターでは、重症患者さんが数多く受診されます。軽症患者さんにつきましては、診察順序の変更や待ち時間などでご迷惑をおかけすることがございますが、何卒ご理解ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
入院について
当院は救命救急センターとして、重症患者さんの受け入れのために常時ベッドを確保する必要がございます。急性期治療により容態の安定した患者さんには早期の退院、転院をお願いすることになりますので、何卒ご理解ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
近森の救急医療
当院では、1964年に高知県で最初に救急告示病院に指定されて以来、『医療の原点は救急である』『救急医療こそ、今この瞬間に人の命を救う最も必要とされる医療行為である』という方針のもとに、職員一同が救急医療に取り組んでまいりました。
各科への割り振りによる単独診療が主体の救急医療でしたが、2002年10月より、ER(Emergency Room)救急センターを開設し、救急担当医師と各診療科医師の協力による、北米型ER※1)といわれる救急医療体制を構築し、治療の優先順を決定するトリアージ※2)などを取り入れました。
その後、救急科専門医の赴任、専従医の増員を契機に、さらに院内支援体制を強化しあらゆる救急疾患に全科協力のもと対応してきました。救急専従医の初期治療により病態の安定を図り、各診療科の専門医に引き継ぎ、高度な専門治療が行われていきます。当院では医療側よりも患者さんの立場を考え『いつでも、誰でも、どんな疾患でも』をモットーに、患者さん主体の救急医療を行ってきました。
その結果、県内で最も多くの救急患者さんを受け入れてきた実績や災害医療支援への取り組みなどを評価していただき、2011年5月には県内で3番目の救命救急センターに指定されました。これにより、心疾患、脳卒中や複数診療科にまたがるような重症患者さんを優先的に24時間体制で受け入れるという使命は果たさなければなりませんが、診療スタイルを変えることなく、軽症から重症まで広く受け入れていきたいと考えています。
[語句説明]※1)北米型ER・・・
軽症から重症まですべての患者さんを受け入れ、その緊急度・重症度を即時に判断した上で治療にあたる救急医療体制です。これまでの、受け入れ側の医療機関の立場から考えられた、一次、二次、三次救急という日本独自の救急医療体制とは異なり、1996年にNHKの医療系ドラマ『ER 緊急救命室』が放送されて以来、日本でも注目されるようになりました。
※2)トリアージ・・・
受診される患者さんの病状に応じて、治療に当たる優先順位を決めるシステムです。患者さんが自身の病状が軽症であるのか、重症であるのかを判断するのは容易なことではなく、判断ミスや一次医療機関から二次や三次医療機関へという転送による診断、治療の遅れが生じてはなりません。このため、救急車やヘリコプターで搬入される重症患者さんから、徒歩で直接来院、受診される患者さんまで、すべてを受け入れ、直ちに緊急度・重症度を判断した上で優先順位を決定し治療にあたります。災害などの多数傷病者発生時などでも行われますが、当院では訓練を受けた専任の看護師や救急医が救急医療の現場で行っています。たとえ救急車で搬入された患者さんでも、緊急度が低い場合には、多少お待ちいただくことがありますし、徒歩で直接受診された患者さんの方が、緊急度が高い場合がしばしばあります。
診療実績
治療効果の自己評価について
院外心肺停止症例を対象とするウツタイン統計と、外傷入院症例を対象とする重症度スコアを用いて、予測生存率などを算出し、治療効果の自己評価に取り組んでいます。
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