消化器外科

部長 坪井 香保里

 2017年度の消化器・一般外科における手術件数は588例であった。
 2014年度が461例、2015年度が494例、2016年度が549例であり、年々増加の傾向にある。

1.胃への手術(43例:悪性29例、良性14例)
胃癌に対する手術がほとんどである。
開腹手術28例、腹腔鏡下手術15例。
当院の特徴として基礎疾患を有する高齢者の進行癌が多く、例年同様に緊急・準緊急手術もあった。
進行癌症例が多く、鏡視下手術は前年度よりも少なかったといえる。
適応を見極めて今後も症例を積み重ねていきたいと思っている。

2.大網・小網への手術(9例:腹腔鏡下手術1例、開腹手術8例)
胃潰瘍・十二指腸潰瘍に対する手術として、大網充填や大網被覆術が施行される。前年度は十二指腸穿孔に対する腹腔鏡下手術の1例のみであったが、今年度は9例と増加した。いずれも緊急手術であるが、ほとんどが開腹下の手術であった。
潰瘍穿孔の場合は保存的加療も可能である場合が比較的多く、発症時期、全身状態、理学所見、血液・画像所見、年齢や基礎疾患の有無などの患者背景から判断して治療方針を決定する。

3.大腸への手術
①結腸への手術(46例:悪性34例、良性19例)
 *腹腔鏡下手術;11例
②直腸への手術(25例:悪性18例、良性7例)
 *腹腔鏡下手術;4例

大腸癌は男性では死亡率3位、女性では1位の疾患です(2014年統計)。
大腸癌の好発部位としてはS状結腸と直腸であり、この両者で70%を占めるとされており、当院でも約80%がS状結腸癌あるいは直腸癌であった。
大腸癌の場合、進行して腸閉塞や穿孔を合併してから医療機関を受診する場合もある。イレウス管留置やステント留置して減圧後に待機的或いは一期的手術が可能なこともあるが、人工肛門(ストマ)造設を伴う緊急手術が必要となる場合もある。早期発見が望まれるが、大腸癌においても進行癌が多いのが現状である。
今年度も緊急手術や高度進行癌を除いては症例に応じて腹腔鏡下手術を選択しており、今後も症例を積み重ねていく予定である。

4.小腸への手術(49例:悪性9例、良性39例)
小腸の病変は腸閉塞や遺物による消化管穿孔などが今回も多かった。腸閉塞は保存的加療で改善されない場合や索状物による絞扼を疑った場合は手術の適応となる。遺物穿孔は基本的には緊急手術となる。
一方、CT・MRI・小腸内視鏡・カプセル内視鏡検査といった画像診断の進歩に伴い、癌やGISTを含む腫瘍性病変の診断のもとに外科的切除となる場合もあり、腹腔鏡下手術のよい適応であり、2016年度は13例が鏡視下手術であった。
尚、大腸、小腸の疾患の中には、便通異常や併存する循環器疾患あるいは全身状態不良に基づく腸管の血流障害(虚血、壊死)や穿孔もしばしば認めた。

5.虫垂炎手術(47例;緊急手術27例、待機手術20例)
近年は急性虫垂炎保存的加療後に待機手術を行う症例が増加していたが、2015年度以降は緊急手術、とくに腹腔鏡下で緊急手術を行うことが増え、今年度は緊急症例27例中23例が腹腔鏡手術であった。
待機手術例1例以外は腹腔鏡下手術が行われ、緊急手術の場合も23例例が腹腔鏡下手術であり、緊急手術でもほぼ腹腔鏡手術で行っている。腹腔鏡下手術は準備などで煩雑な印象があるが、実際の手術時間は従来の開腹と同程度であった。また、体型によっては(特に肥満)腹腔鏡手術の利点をより発揮できることも多く、感染のリスクも少ないことも特徴のひとつとしてあげられる。

6.ヘルニア根治術(69例;鼠径49例、大腿4例、臍3例、腹壁4例)
ヘルニア手術は例あったが、今年度もそのほとんどが鼠径ヘルニアに対する手術であった。
術式の選択として、診療報酬の改定がきっかけとなった一面もあり、腹腔鏡下修復術も多く選択され、近年増加の傾向にある。

7.胆管、胆嚢への手術(150例)
今年度も胆嚢結石症に起因する急性/慢性胆嚢炎に対する手術がほとんどであった。腹腔鏡下胆嚢摘出術は109例、開腹胆嚢摘出術が38例であった。
急性胆嚢炎の場合、発症からの期間と炎症の程度、患者背景を含む全身状態から早期手術が選択される場合とドレナージ後に待機手術を選択する場合がある。
待機手術、予定手術の場合はほぼ全例に腹腔鏡下胆嚢摘出術が行われた。緊急あるいは準緊急であっても腹腔鏡下胆嚢摘出術を術式として選択することが多いが、状況よっては開腹手術に移行せざるを得ない場合もある。

8.肝臓への手術(17例;悪性16例、良性1例)
慢性ウイルス性肝炎やアルコール性肝障害に合併した肝細胞癌や転移性肝癌に対して行われた。
肝細胞癌や転移性腫瘍は12例が切除、4例が腹腔鏡下ラジオ波焼灼術(RFA)であった。腹腔鏡下RFAは経皮的RFA困難例に対して選択される。
今年度は外傷に伴う肝損傷の手術症例はなかった。肝外傷の多くは動脈塞栓術(TAE)を含むIVR(Interventional Radiorogy)治療が選択され、軽快することが多い。しかし、損傷の状態や全身状態、IVR後の経過によっては手術が必要となる症例もある。

9.膵臓への手術(8例;悪性6例、良性2例)
膵頭十二指腸切除7例、体尾部切除2例であった。
悪性疾患である膵癌や前癌病変ともいえるIPMNは無症状で経過することが多い。特に膵癌の場合、症状を認めた時には進行癌となっている場合が多く、予後も不良な癌腫であるが、唯一治癒を望める手段が手術である。
膵頭十二指腸切除術は侵襲の高い手術であり、年齢や基礎疾患の有無など患者背景を見極め、受け止める姿勢が大事である。そのためには患者さんやご家族に十分な説明を行い、理解を得ることが重要である。


 外科医の役割は手術治療だけではない。手術以外の治療選択後のフォローや術後のフォローも重要である。
 化学療法もその一つであるが、胃癌・大腸癌・膵癌においては最近になって新たな治療方法が確立されるなど、新しい知識を得ることも必要となってくる。
 また、各科と連携し合って適切な治療方針を選択し、実施していくことが重要となってくる。

 腹腔鏡手術の経験も蓄積されつつある。
 2015年度から3D内視鏡が導入された。今後も「腹腔鏡」手術が選択される機会は増すことが予測される。ただし「低侵襲」イコール「低リスク」ではなく、適応となる症例を見極めて実践することが肝要である。
 また、実臨床・それ以外における研修医の教育の充実、各部署との連携、学会発表、論文発表も行っていけるよう今後も努力していきたいと考えている。