大動脈ステントグラフト
開胸あるいは開腹といった身体に負担のかかる手術を必要とせず、太ももの部位の動脈からカテーテルを用いて人工血管を大動脈内に留置して大動脈の破裂を予防する治療方法です。
2002年、県内では初めて当院が導入しました。
担当医紹介
- 入江 博之(心臓血管外科)
- ステントグラフト実施 四国最長経験/1997年~
腹部ステントグラフト指導医
胸部ステントグラフト指導医 - 宮﨑 延裕(放射線科)
- 腹部ステントグラフト指導医
胸部ステントグラフト実施医 - 衣笠 由祐(心臓血管外科)
- 腹部ステントグラフト指導医
胸部ステントグラフト実施医 - 髙尾 賢一朗(心臓血管外科)
- 腹部ステントグラフト実施医
大動脈瘤とは
大動脈
心臓から全身に血液を送る大動脈は身体の中で最も太い血管で、心臓から横隔膜までを胸部大動脈、横隔膜から下の部分を腹部大動脈といいます。
大動脈瘤は、この大動脈の壁が薄くなり、瘤(=こぶ)のように大きくなる病気で、大動脈のどこにでも起こり得ます。瘤ができてもすぐに血管の機能が低下する事はなく、ほとんどが無症状ですが、自然に縮小することはなく、有効な薬物療法もありません。瘤が大きく膨れ続け破裂すると多くの場合、死に至る恐ろしい病気ですが、適切な治療を行うことで破裂を回避することができます。
大動脈瘤の部位による分類
大動脈瘤の形状による分類
大動脈解離とは
大動脈は、外膜、中膜、内膜の3層構造となっており、十分な強さと弾力を持っていますが、なんらかの原因で内側にある内膜に裂け目ができ、その外側の中膜の中に血液が入り込んで長軸方向に大動脈が裂けることを大動脈解離といいます。外側には外膜一枚しかないため、破裂の危険性を伴います。何の前触れもなく胸や背中に激痛が生じるなど、この病気の可能性がある場合は早急に医療機関を受診する必要があります。
大動脈壁の3層構造
大動脈解離の発生
大動脈の治療法
大動脈の治療法として、胸部あるいは腹部を切り開いて動脈瘤、または動脈解離を確認し、人工血管を縫い付けて埋め込む、「人工血管置換術」を行うのが一般的ですが、高齢者や他に疾患を持つ患者さんにとって開胸、開腹する外科手術は、身体にとても負担がかかります。
血管に細い管(カテーテル)を用いて人工血管を大動脈内に留置する「大動脈ステントグラフト」は、手術ではどうしても必要な切開部を小さく済ますことができ、手術時間も短いので、身体にかかる負担がとても少なくなります。
A.直接手術(開胸もしくは開腹)
B.大動脈ステントグラフト
ステントグラフトは、ステントと人工血管を組み合わせた器具のことで、カテーテル操作によって、動脈瘤を血管の内側から治療する手術法のことです。脚の付け根を4〜5cm切開して動脈内にカテーテルを挿入し、動脈瘤、または動脈解離のある部位にステントグラフトを留置します。
腹部では大きく切開することなく、また、胸部では、胸骨を切らず、体外循環(人工心肺)を使用しないで治療することができます。大動脈瘤は切除されず残ることになりますが、瘤はステントグラフトにより蓋をされることで瘤内の血流が無くなり、次第に小さくなる傾向がみられます。たとえ瘤が縮小しなくても、拡大を防止することで破裂の危険性がなくなります。また、大動脈解離の場合には、内膜にできた傷を塞ぐことができるので、根本的な治療になります。ステントグラフトで治療可能な動脈瘤、動脈解離は、それぞれに適した形、部位で異なりますので、患者さんごとに説明させていただいています。
大動脈ステントグラフトを実施するためには(実施基準)
腹部と胸部の大動脈ステントグラフトを行うための実施基準と審査システムはそれぞれ異なりますが、当院はどちらも実施基準を満たし認定を受けている病院です。
また、腹部大動脈ステントグラフト指導医2名・実施医1名、胸部大動脈ステントグラフト指導医1名・実施医1名(重複あり)が治療にあたっています。
施設認定
関連10学会構成日本ステントグラフト実施基準管理委員会 腹部ステントグラフト実施施設
関連10学会構成日本ステントグラフト実施基準管理委員会 胸部ステントグラフト実施施設
実際の手技紹介
近森病院ハートセンター
循環器内科、心臓血管外科を中心に、放射線科や麻酔科、その他多職種が協働してリスクの高い心臓病治療にあたっています。全国屈指のチーム医療を誇る当センターでは、診療科間の垣根がなく、取り組みモデルとして全国からの見学者も多く、互いに意見交換を行うことで日々進化しています。