PFO閉鎖術

卵円孔開存(PFO)が関与したと考えられる脳梗塞や一過性脳虚血発作(一時的な麻痺などを起こす状態)を発症した方に対して、閉鎖治療を行い、脳梗塞の再発リスクを低減するものです。
従来からの「抗血栓薬(血液をサラサラにするお薬)を生涯服用する予防治療」に対して、1回限りの手技で脳梗塞再発リスクを低減できる利点があります。
また、薬物のみによる脳梗塞再発予防と比較して効果は高いとされています。

卵円孔開存(PFO)とは

心臓の左右の心房の間にある心房中隔に隙間が開いている状態を言います。卵円孔は、私たちが母親のおなかにいる時に、母親から共有された、酸素を多く含んだ血液を体全体に送る際に重要な役割を果たします。出生し、自分で呼吸ができるようになると多くの方は生後2~3日で自然に閉鎖します。しかし、開存したままの状態の方は4~5人に1人ほどいると言われています。この状態でも通常は無症状で治療の必要もありません。
しかし、稀にPFOがあるために、運動や咳、排便などで静脈圧が高まると、右心房から左心房に血液が直接流れ込み、血栓が卵円孔を通過し脳に達することで、脳梗塞や一過性脳虚血発作の原因になると考えられています。

PFO(卵円孔開存)による潜因性脳梗塞イメージ

卵円孔開存(PFO)と脳梗塞

高知県では死因第3位は脳血管疾患※1です。そのなかで約70%を占めるのが脳梗塞で、そのうち約25%が原因の分からない潜因性脳梗塞です。さらにこの潜因性脳梗塞患者の40%にPFOが存在し、脳梗塞の発症に関与している可能性があると言われています。
脳梗塞の再発率は10年間で49.7%というデータがあります※2。脳梗塞の再発は、発症してから1か月以内が最も多いですが年数が経過していても再発の危険性があります。
再発時の特徴としては、初回と異なるタイプの脳梗塞を引き起こすこともありますが、ほとんどが初回と同じタイプの脳梗塞を繰り返す可能性が高いです。このことからも、PFOが原因とみられる脳梗塞患者さんには閉鎖することで再発のリスクを低減することをお勧めしています。

AMPLATZERTM PFOオクルーダー

PFOを半永久的に閉鎖し、脳梗塞を予防するためにデバイスを植え込みます。
従来より有効な予防策として抗血栓薬(血液をサラサラにするお薬)を生涯服用するという方法がありますが、出血のリスクが高まるという問題があります。消化管出血や脳出血などのリスクの高い患者さんは、出血の危険性を考慮せねばならず、抗血栓薬による治療が難しいことがありました。また、定期通院の負担もかかります。
PFO閉鎖術はカテーテルで行う治療であり、体への負担が少ないというメリットがあります。

治療適応

  • 卵円孔開存(PFO)が関連すると思われる潜因性脳梗塞既往患者さん(原則として18才~60才未満)
  • 閉鎖術施行後一定期間の抗血栓療法施行が可能と判断される患者さん
  • (女性の場合)妊娠していない、かつ 1 年以内の妊娠を希望しない方

より詳しい適応基準はこちら

必須基準

下記の条件をすべて満たす場合に本治療の施行が検討される

  • 卵円孔開存の関与があり得る潜因性脳梗塞の診断基準に合致した患者
  • 閉鎖術施行後一定期間の抗血栓療法施行が可能と判断される患者
  • 原則として、60 歳未満の患者
  • (女性の場合)妊娠していない、かつ 1 年以内の妊娠を希望しない患者
推奨基準

上記を満たし、かつ下記のいずれかの条件に当てはまる場合には本治療の施行が推奨される

  • 下記のような機能的・解剖学的に高リスクの卵円孔開存を有する場合
    • シャント量が多い
    • 心房中隔瘤(atrial septal aneurysm:ASA)の合併
    • 下大静脈弁 (Eustachian valve:EV)の合併
    • キアリ網(Chiari network)の合併
    • 安静時(非バルサルバ負荷下)右左シャントを有する
    • 長いトンネルを有する卵円孔開存
  • 適切に施行された抗血栓療法中に上記潜因性脳梗塞を発症した場合
禁忌
  • 心臓内に腫瘤・疣贅または腫瘍が認められる患者
  • 留置部位及びアクセス経路に血栓を認める患者
  • 心臓内または血管内の構造が、デバイス留置の操作に適さない形状やサイズの患者
  • 術前に活動性心内膜炎を発症した患者、感染症が完治していない患者
  • 抗血栓療法が実施できない患者
  • 既知の凝固促進状態がある患者
  • ニッケルアレルギーがある患者

※日本脳卒中学会、日本循環器学会、日本心血管インターベンション治療学会、一般社団法人日本循環器学会「潜因性脳梗塞に対する経皮的卵円孔開存閉鎖術の手引き 2019年5月」 より

実際の手技紹介

1

鼠径部(太ももの付け根)の大静脈からカテーテルを通して、AMPLATZER™ PFOオクルーダーを心臓に挿入。

2

卵円孔開存部を通過させて左心房側で一方のディスクを展開します。

3
4

続いてデリバリーカテーテルを右心房側に移動させて、もう一方のディスクを展開することにより卵円孔開存(PFO)を閉鎖。

心臓超音波装置を食道に挿入し、心臓超音波画像によるモニタリングでカテーテルの操作を行うため、全身麻酔下で行います。

治療の流れ、注意点

脳梗塞の原因としてPFOが疑われる場合に、外来で経胸壁心エコー図検査、経食道心エコー図検査などを行い、治療適応かどうかを診断します。

治療適応であれば、後日、治療の前日に入院していただき、入院翌日にPFO閉鎖術を行います。閉鎖術後は集中治療室で経過観察の後に、状態が落ち着けば一般病棟へ移ります。同時に元々の状態に応じてリハビリも開始します。

原則3泊4日で退院します。手術後約1か月で、埋め込んだデバイス表面が内皮化するため、術後45日および半年を目途に再度外来で検査を行います。

なお、一定期間(約6ヵ月)は抗血栓薬を継続しますが、その後状況に応じて、抗血栓薬の中止を検討します。

合併症やリスク

  • PFO閉鎖術中および留置後の合併症として、脳梗塞(4/1,000人)、心房細動(6/1,000人)、 心タンポナーデ(4/1,000人)、肺塞栓(4/1,000人)などが報告されています※3
  • 留置後、PFOの閉鎖が完全に達成されず、抗血栓療法の継続が必要になる可能性があります。
  • 閉鎖デバイス留置後の抗血栓療法の中止に伴い、PFO由来以外の左房内や留置したデバイスに血栓が発生する可能性があります。
  • 術後の抗血栓療法による出血の可能性があります。
  • PFOによる脳梗塞の発生は予防しますが、他の機序による脳梗塞の発症を予防する治療ではありません。

よくあるご質問

① どういったタイミングで治療を行えばよいですか

全身状態にもよりますが、PFOが原因で脳梗塞を発症された方は、選択肢の一つとして検討していただければと思います。気になる際はお早めにかかりつけ医や当科にご相談ください。

② 全身麻酔も含めた手術時間は

約1時間から1時間30分程度です(麻酔 = 30分 = 手技開始 = 30~60分 = 麻酔からの覚醒)

③ 手術後、生活に制限はありますか

特にありませんが、一定期間(約6ヵ月)は処方された抗血栓薬を継続します。
MRI検査も受けることができます。

近森病院ハートセンター

循環器内科、心臓血管外科を中心に、放射線科や麻酔科、その他多職種が協働してリスクの高い心臓病治療にあたっています。全国屈指のチーム医療を誇る当センターでは、診療科間の垣根がなく、取り組みモデルとして全国からの見学者も多く、互いに意見交換を行うことで日々進化しています。

担当医師紹介

細田勇人 循環器内科 科長
中岡洋子 循環器内科 部長
川井和哉 循環器内科 主任部長(兼 副院長)

連絡先

近森病院循環器内科 細田、中岡、川井

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近森病院 循環器内科 

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出典

※1:令和元年(2019)人口動態統計(確定数)参考表 ( 都道府県別順位 )

※2:Hata J, et al.:Ten year recurrence after first ever stroke in a Japanese community:
the Hisayama study. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2005; 76(3): 368-72.

※3:N Engl J Med. 2017;377:1033-1042.
N Engl J Med. 2017;377:1022-1032.

画像・動画提供:アボットジャパン合同会社