クライオバイオプシー(TBLC)

凍結生体組織検体採取(クライオバイオプシー)とは、気管支内視鏡から先端部を冷却することのできるプローブを病変に接触させることにより、周囲の組織を凍結して採取する新しい生検方法で、2017年3月に保険適用となりました。
従来は鉗子を用いて生検をおこなっていましたが、採取できる検体のサイズが小さいことや採取できた検体も挫滅(※)による修飾が強いことなどが正しい診断の妨げとなっていました。2022年12月、当院で初回となるクライオバイオプシーを施行しました。組織を凍結するため生体をきれいに、また大きく採取できることから診断率の向上が期待されます。

※挫滅...
衝撃や圧迫などで、内部の組織が破壊されること。
クライオプローブ クライオバイオプシー 検体イメージ

クライオバイオプシーのメリット

クライオバイオプシーの利点は広く認識され、鉗子生検と外科的肺生検との中間的な位置付けとされています。悪性腫瘍や間質性肺炎の診断率が向上するほか、末梢病変のみでなく中枢気道の可視病変の生検や異物除去などの治療的介入も良い適応とされています。 使用機器は冷凍装置、専用クライオプローブ、医療用CO²ボンベ、バルーンカテーテルなどを取り揃える必要があり、確かな内視鏡技術と経験をもつ複数の医師でおこなう体制づくりやコストとの兼ね合いから普及は遅れていますが、当院は2022年12月15日に高知県初、四国では2番目に導入した施設となりました。

安全面に十分に配慮しながらクライオバイオプシーに適する症例での実績を積み重ね、高知県の呼吸器診療の質向上のため更に貢献できればと思います。

合併症やリスク

主な合併症は中等度以上の出血と気胸です。

検体採取の流れ

冷却中のプローブ先端.png
冷却中のプローブ先端には白く霜が見える

手技はまず気管チューブを気管内に挿入します。気管チューブを通して、バルーンカテーテルを採取する部位近傍の気管支に留置して、生検後の止血に備えます。事前に同定していた病変部位にクライオプローブを当て、5秒程フットスイッチで冷却させるとプローブ周囲の組織が氷塊となるため、その後すばやい動作で気管支内視鏡とプローブを一体にして引き抜くように剥離採取します。採取直後は前述のバルーンを膨らませてしっかり止血します。

全体図.jpg
1 病変を見つける

気管支内視鏡から超音波プローブで病変を見つける。

2 カテーテルを病変の近くへ

超音波プローブを抜き、気管支内視鏡で見ながらバルーンカテーテルを病変の近くに持っていく。

3 ガイドシースを残す

再度、気管支内視鏡から超音波プローブで確認し、ガイドシースを残す。

4 病変部組織を凍結

ガイドシースをたどって、気管支内視鏡からクライオプローブを入れて病変部組織を凍結。

5 剥離採取、止血

すばやく気管支内視鏡とプローブを引き抜き、剥離採取。直後、バルーンカテーテルを膨らませ止血。

6 止血の確認

別の気管支内視鏡でしっかり止血されたかを確認。

確かな技術とチームワークで5秒の冷却から剥離採取、止血確認までを一息に

プローブを操る医師

内視鏡画像を見ながらプローブを操る医師の後方でプローブを保持する医師、右端の医師が剥離採取後すぐに交代して止血のバルーンを確認できるよう気管支内視鏡を持っています。

病理 組織標本の比較

内視鏡室内で、採取後すぐに顕微鏡で臨床検査技師が検体を確認します。

鉗子生検
Forceps biopsy
鉗子生検
クライオ生検
Cryobiopsy
クライオ生検
検体採取
検査の様子

担当医師紹介

中岡 大士 呼吸器内科 部長

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