相談役 近森正幸のひとりごと soliloquy

相談役 近森正幸のひとりごと

相談役 近森正幸のひとりごと

[2024年12月吉日] 叙勲のお礼状

2024年秋の叙勲に際し、お祝いをお届けくださり、本当にありがとうございました。

今回、高知県医師会 会長 野並誠二先生のご推薦で瑞宝小綬章を受章させていただきました。これから叙勲される皆様のため、又、めったに聞けない叙勲の話を聞きたい方のため、叙勲をめぐる大騒動のお話をさせていただきます(興味のない方は、これ以上読む必要はありません)。

内閣府賞勲局から高知県・高知県医師会を通じての何回もの問合せを経て無事叙勲が決まりそうでしたので、私はモーニングを叙勲の経験豊富な日本橋高島屋に、妻は色留袖を昔からなじみの美馬呉服の美馬君にすべてお願いし用意しておりました。叙勲の日時は寸前まで分からずやきもきしましたが、あらかじめ帝国ホテルの副支配人に準備万端をお願いしていましたのでスムーズに事が運びました。

11月3日文化の日に秋の叙勲者が公表されると、お祝いの品のパンフレットが高さ15cm程届けられ、高知の業者は自宅まで訪ねて来たのには驚きました。叙勲の日は公表から15日後の11月18日(月)と連絡があり、同時に当日の詳細な注意書が送られて来ました。

帝国ホテルには前泊し、当日は朝6時起きで、皇居ではお弁当や昼食は出ませんので(いただいたのは皇居へ行くバスの中でペットボトル1本だけでした)、しっかり朝食をとり、妻は8時半からホテルの美容室で髪のセットや着付けをしていただき1時間ほどで帰ってきました。さすがは帝国ホテルの美容室で、多くの方が来られていましたが非常にスピーディーに対処してくださり、着付けもしっかりしており1日移動しても全然着崩れしませんでした。昼前にサンドイッチをほおばり、11時10分にホテルを出ました(帝国ホテルのロビーには薔薇の花が大きく飾ってあり、シャンデリアとバックの階段を入れて、ロビースタッフは全員写真撮影の訓練を受けていますので、素敵な写真を撮ってくれます、正装してバッチリ撮ってもらって下さい)。

伝達式が行われるホテルニューオータニに到着後、ロビーに各県の旗を持った高知県の東京事務所の方が2名おられ、その方から「ハイ」と勲章を渡され、その場で装着しました(勲章を付ける金具がありますので、それをあらかじめ胸元に付けておいてください)。勲記(勲章を授与された方に与えられる賞状で、真ん中に日本国天皇が皇居において璽をおさせられた明治7年に作られた金印の大日本国璽がバーンと押され、上には菊のご紋章が燦然と輝いています)は意外に大きくて荷物になりますので、あらかじめ高知の方に送ってもらう申し込みをすれば高知に帰って翌日には県の医師会の事務局長が届けてくれます。

伝達式の会場は厚生労働省関係の叙勲者のみで(隣の会場は文科省でしたが、同じような会場ですので間違えて入らないで下さい)、すべて東京事務所の事務の方が案内や写真撮影をして下さいますので、その指示に従ってください。会場の壇上には日本国旗とお花が飾られており、勲章を付けて妻との記念撮影には最高の場所ですので、できるだけ早く会場に入り写真を撮って下さい(少しでも遅れると長蛇の列になりますので、早目の撮影をお勧めします)。伝達式までに時間があるのでトイレに行ったり、ロビーでクリスマスの飾りつけの前で写真も撮って下さい。

伝達式では国歌斉唱の後、福岡厚生労働大臣から勲記の授与がそれぞれの勲章の代表者に行われましたが、私の人生で一回も見たこともない渡し方をしました。どんな渡し方でしょうか?と何十人にも質問しましたが、正解の方は1人のみで、いかに人間は思い込みが強いかがよく分かりました。これを読んでおられる方、分かりますか?・・・・・・
なんと、大臣は勲記を黙読していました。日本国天皇が皇居において璽をおさせる勲記ですので、恐れ多くて声に出して読むことが憚られたのではないかと思います。そのあと大臣の祝辞がありましたが、新米の大臣ですので役人の文章をそのまま棒読みしたひどいものでした。

会場に座った順番にグループに分かれ13台のバスに分乗、私は12台目のバスに乗り皇居に向かいました。ここからは厚労省のスタッフが担当ですので指示に従って下さい。10分ほどで皇居前広場に着き、広場の左側(南側)は二重橋の見える正門ですが、バスは右側(北側)の坂下門から入ります。皇居内は撮影禁止です(皇宮警察は一見温厚そうですが何かあれば本当に怖い存在なので、写真を撮ったり、列からはずれてウロウロするようなことはしないで下さい)。宮内庁の庁舎の前を通り、お正月参賀で皇室の皆様方に旗を振る広場が東庭(トウテイ)でそこがバスの駐車場になっています。目の前の2階がガラス張りの宮殿が長和殿(チョウワデン)です。見ていると各省庁ごとに順番に流れ作業で天皇陛下に拝謁しているようで、順番が来るまでに時間がありますので、東庭の南東角にトイレがありますので早目に済ませておいてください。トイレの手前からは中門から二重橋が見れますので、中門の見事な石垣の長軸1個、短軸2個の完成された算木積みなども見ていただければと思います。

ここで宮殿の説明をします。手前の長和殿の奥に西に向かって北側と南側に回廊があり、北側の2階には陛下に拝謁する豊明殿(ホウメイデン)があります。広い中庭の奥には正殿(セイデン)、その奥には天皇陛下のおられる表御座所(オモテゴザショ)があります。ここで古い神社の構造を考えてみると、手前の長和殿は拝殿、奥の正殿が神社の本殿、その奥には神様のおられる建物、その昔は神様のやどられる山や岩があります。そうです!宮殿の構造上は天皇は戦前、現人神といわれるように神だったことが分かります。

さて、時間になると横6列の縦隊でバスの順番に宮殿に入りますが、北車寄せの横にはちゃんと救急車が待機していますので、体調が悪くなっても心配ありません。北車寄せから北溜(キタダマリ)に入り豊明殿のある2階に上がる階段は非常に広く、6人が横一列で上がることができ、年寄り連中がスムーズに2階に上がれる仕組になっています。

豊明殿は宮殿の中で最も広いホールで、前の方に叙勲者、後方に随伴者が座ります。天皇陛下のお出ましまで時間がありますので、キョロキョロと周りを見て下さい。黒い柱がどーんと上に上がり、天井は鳥取県産の杉の一枚板、横8列、奥行き4列の計32個のクリスタルガラス製のシャンデリアが燦然と輝き、壁面には中村岳稜画伯のつづれ織りの「豊幡雲」(とよはたぐも)、床は杉山寧画伯の手織段通(熟練した職人が1日30cmしか織れません)が敷き詰められています。日本文化の粋を集めた宮殿ですので、ぜひ堪能して下さい。

時間になると左前の大きなドアが「すーっ」と音もなく開き、天皇陛下と侍従長がお出ましになりました。天皇陛下が壇上に立たれると叙勲者を代表して叙勲のお礼を奏上し、天皇陛下からはお言葉をいただきましたが、叙勲者の労をいたわり、国民を思う陛下の温かいお言葉に接し、出席者全員が深く頭を垂れておりました。そのあと陛下は最前列に座っている叙勲者、とびとびに4名にお言葉をかけられましたが、緊張した叙勲者が自然にお返事ができるようご質問をされ、叙勲の労をいたわられておりました(陛下にお言葉をいただきたければ、ぜひ最前列に座って下さい)。陛下が退出される時も一礼されましたが、全員が心からの感謝と感動とともに頭を垂れておりました。

退出は家内と2列縦隊で、点呼をして人数確認後、入って来た時と同じく広い階段を下りて1階の北溜に下りますが、そこに人数分の椅子が揃えられていて、2列縦隊で順番に座ると椅子に叙勲者が座り後ろには随伴者が立つようになりますので、北溜の2階から記念写真を撮ってくれます(縦列の順番に奥から座っていきますので、真ん中に写りたければ縦列の真ん中にいてください。写真撮影には白い手袋を用意しておけば格好がつきます。写真は希望者のみで、個人が写真屋さんに依頼するようになりますので、バスの中で宮殿の写真とともに申込書が配られます)。

私たちのバスは12台目でしたので南車寄せから出てバスに乗り込み、陛下から下賜(カシ)されたお菓子(菊の御紋の入った大きな「どら焼き」3個、あんこがパンパンに入っています)が配られ、ホテルニューオータニに到着、そこで解散で、タクシーで帝国ホテルへ帰りました。間隔を置いて順番にバスが皇居を出ますので、ニューオータニのタクシー乗り場ではあまり待つことはありませんでした。17時に帝国ホテルに着き、急いで本館3階の佐藤写真に上がりましたが、すでに10数人が待っており、順番に記念撮影をしてくださいました。(後日談ですが、撮影の際、変な体位で長時間ポーズを取らされましたので、翌日から坐骨神経痛が再発、羽田空港では家内に車椅子を押してもらって移動したぐらいの激痛でしたが、1カ月経ってだいぶましになりました。)撮影後、すぐ部屋に帰りちょうどお世話になった美馬君が東京に来ていましたので、モーニングと色留袖を美馬君に手伝ってもらって荷造りして、ホテルを通じて宅急便で高知に送り、19時30分にはすべり込みで中2階のセゾンで美馬君と3人でおいしいフレンチとワインを楽しみました。その時、つくづく思ったことは・・・ 近森正幸の真の勲章は「瑞宝小綬章」ではなく、当日最も輝いていた「妻 けい子」だということでした(少し照れますが、本音です)。

以上が叙勲の顛末ですが、意外に詳細が知られていませんので、これから叙勲を受ける方のために書かせていただきました。長文にかかわらず読んでいただき、ありがとうございました。また、叙勲のお祝いをいただき本当にありがとうございました。今回の叙勲はすべて近森会の多くの先生方やスタッフ、サポートして下さる企業の皆様方のおかげですので、12月10日(火)近森会忘年会の前半をお借りして叙勲祝賀会を行い、忘年会の最後には叙勲のお礼にドン ぺリニヨン30本をかけた大じゃんけん大会で大盛り上がりに盛り上がりました。今年の忘年会は途中で一人も帰らず、全員が最後のじゃんけん大会まで残って下さいました。感謝!!

2024年12月吉日

社会医療法人近森会 近森病院

相談役

近森正幸