相談役 近森正幸のひとりごと soliloquy

相談役 近森正幸のひとりごと

理事長のひとりごと

[2017年01月25日] 桜島の日の出を眺めながら

桜島の右手から昇る太陽.jpg  近森病院は、救命救急センターとして緊急を要するリスクの高い重症患者さんがひっきりなしに入院してくる。そのために、病院の仕組みづくりはもちろんのこと、高度な設備投資や医師をはじめスタッフの充実、さらには患者さんからのクレームや医療事故の対応など、絶えず崖っぷちの上で決断し、その決断に責任を持たなければならなかった。
桜島の右手から昇る太陽.jpg
 それが高度急性期病院の院長の宿命といえるものだが、そんな日々を32年間勤めてきて、若いときには感じなかったが、年をとるに従って、自分の周りや将来が霧が晴れるように見えてくるようになった。そうすると、ものすごい重圧感が両肩にのしかかってきた。

 2016年4月の診療報酬改定で、急性期病院にも7:1看護に重症度、医療・看護必要度ABC25%ルールというアウトカム評価が導入され、日本の医療が大きく変わった。

 これからの院長は診療報酬改定とか、人口減による患者さんの減少、命に対する国民の考え方の変化に合わせて、自分たちのもてる医療資源を有効に使い、平均在院日数を下げ、高い病床稼働率を保つという相反する課題に挑戦しなければならず、そのためにも現場をよく知ったトップによるマネジメントが求められている。今年1月から近森病院の舵取りは新しい院長、副院長にお願いすることになった。

 近森病院院長という重責をバトンタッチした解放感は、たとえようもないものだった。院長を退くと決めてから何日か経った12月2日の午後、理事長室の椅子に座っていたわたしは、なぜかその日、肩にのしかかっていた重圧感がスーッと消えていくのを感じた。

 2週間後、鹿児島に呼ばれて300人を前に講演をした。わがままをいって宿泊先を何度か泊まったことのある城山観光ホテルにしてもらった。展望露天温泉「さつま乃湯」があり正面に桜島が見える。朝、桜島の右手から昇る太陽の光を浴びながら、すっかり寛いでいる自分を感じた。近森病院の院長がいかに重責であったかを改めて考えさせられた朝であった。

2017年1月25日

近森 正幸