相談役 近森正幸のドキュメント document

相談役 近森正幸のドキュメント

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近森病院附属看護学校 2021年度卒業式

卒業式 祝辞

36名の卒業生の皆さん、本日は卒業おめでとうございます。

お祝いの言葉の前に、2月1日、近森病院北館病棟で判明した爆発的な新型コロナのクラスターについて、これから医療現場に出られる卒業生に一言ご報告させていただきます。

今回のクラスターは、オミクロン株の想像を絶する感染力の強さが大きな要因でしたが、医療スタッフや高齢患者はワクチンを複数回打っており、症状のまったく出ない方や検査でコロナ陽性と分かった後に症状の出る方、発熱があっても肺炎や尿路感染症があったりして、感染が蔓延しているにもかかわらず、気付かなかったことがクラスター発生の大きな原因と考えられました。感染制御部のリーダーシップのもと、100人単位の検査を迅速に行い、全員にコロナ抗体注射や経口薬の投与、病棟の編成やゾーニング、勤務繰りや応援体制、使い捨て食器による給食の提供など、すべての部署が今何が必要か、自分で考え、判断し、対応してくれましたので、早期に終息することができました。まさにスタッフ一人一人が自分で考え、行動する自律、自働で、近森の底力を強く感じました。感染された患者さんやご家族、入院や救急がストップしたことで多くの皆様にご迷惑をおかけしましたが、2月24日からは入院の受け入れもフルオープンとなり、2月28日の月曜日には1日で52名の入院があるなど、近森病院が県民から信頼され、必要とされていることを強く感じています。現在、患者さんに接する部署はすべてN95マスクを装着するなど、再発防止に向け厳重な感染防御を行っています。

それではお祝いの言葉に戻らせていただきます。

皆さんは、近森病院附属看護学校の5期生として入学されました。1期生が立ち上げ、先輩達が育ててくれた本校の伝統をみんなで協力しあいながら充実させて下さいました。1年時の終わりの2020年2月から3月にかけ、新型コロナの第一波が流行し始め、特に、2年時の2020年度は新型コロナへの対応が未だ確立されておらず、皆さんの学校行事や病院実習に大きな影響を及ぼすこととなりました。

「フリーダム&フレキシビリティ」の校風のもと、皆さんは大きな夢を持って本校に入学して下さいました。入学当初は、授業や演習時など「もう少し後ろに下がってください」と教員が言うほど、積極的な姿勢がとても印象に残っているクラスでした。「誓いのセレモニー」では、学生個々が目指す看護の目標を宣誓することで、看護学生としての自覚と向上心を高めてくれましたし、リハーサルを重ねるうちに、徐々にクラスがまとまっていったように思います。

3年時の2021年度は、夏から秋にかけ新型コロナの第5波が襲来し、近森病院のコロナ病棟でも重症の患者さんを数多く受け入れておりました。新型コロナ対応がある程度確立したことと、本校は病院に附属した看護学校であり、医療人にとって、もっとも大事な感染防御を学ぶ千載一遇のチャンスととらえ、充分な感染対策を講じた上で、学校内での授業や近森病院での実習は可能な限り行わせて頂きました。

5期生の皆さんは3年間、一人のコロナ感染者も出さず頑張って下さいました。すばらしいことだと思います。最後の実習である統合看護学実習では、新型コロナの影響を受け、臨床実習の経験が少ない学年ではありましたが、病棟スタッフではないかと勘違いしてしまうほど積極的に生き生きと実習に取り組んでいる学生もいて、先生方は感無量であったとのことです。私も3年時にチーム医療の授業をした時は、WEB講義で直に接することは出来ませんでしたが、画面を通じて看護師という医療専門職になるにふさわしい自信と落ち着きが感じられ、皆さんの成長に感動したことを覚えています。

5期生はクラス全体は物静かですが、個人、個人はバイタリティーがあり、自分の意見をしっかり持って、目標に向かって努力する学生が多いと聞いています。実習の際にも患者さんに誠実で、優しく対応できていたので、看護師になっても先輩の指導を受けながら、一生懸命努力し成長できると先生方は褒めて下さっています。

これから皆さんは看護師として医療現場に出られますが、時代の変化で医療が高度化し、高い医療、看護の質が求められるようになるとともに、手間のかかる高齢患者が増えたことで、業務量が飛躍的に増えてきました。診療報酬改定においても、重症度、医療・看護必要度が厳しくなり、必要な業務すべてを行い、重症の患者さんを数多く集めて、早く治して、早く自宅へ帰さないといけなくなり、日本の医療は大きく変わろうとしています。

高知県でも急性期基幹病院の在院日数が短くなり、稼働率が低下したことで、空床が増え、急性期基幹病院に急激に患者さんが集まっています。そのため、一般急性期病院で100床以上の病院は5年前は16病院ありましたが、現在は11病院、実質8病院とわずか5年間で半分になってしまいました。さらには、介護療養病棟は2,600床が介護医療院という施設にほぼ転換しましたし、病院や診療所の廃院も多発し、高知市内でも病院や診療所の建物が壊され、マンションなどに変わっている姿がアチコチで見られるようになりました。このことは皆さんの働く医療現場が限られてくることを意味しており、これからは看護という仕事に真摯に取り組み、努力する看護師でなければ、いい職場で働けなくなります。

それに加えて、「医師の働き方改革」で医師の長時間労働が出来なくなり、大学病院や国公立病院で行われている医師・看護師だけで業務のすべてを行なう少数精鋭の医療ではやっていけなくなっています。医師が医師しか出来ない業務、看護師が看護というコアの業務に絞り込み、医師、看護師の労働環境を改善し、薬剤師やリハビリスタッフ、管理栄養士、臨床工学技士、MSW、歯科衛生士といった多くの医療専門職が病棟に常駐して医師、看護師とともに業務を行うチーム医療でなければ、これからの急性期医療は出来なくなっています。

これから皆さんのほとんどが進まれる近森会グループは、質・量ともに全国一のチーム医療を展開している病院です。このように素晴らしい職場で専門性を高め、患者さんにとっていい看護が実践できる看護師にこれからも成長してください。そして、看護という素晴らしい仕事を通じて、皆さんの人生がいきいきと充実したものになることを祈っております。36名の卒業生の皆さん、本日は本当におめでとうございました。

2022年3月4日
社会医療法人 近森会
理事長 近森 正幸

本日はおめでとうございました。