相談役 近森正幸のドキュメント
近森病院附属看護学校 2020年度卒業式/
2021年度入学式
近森病院附属看護学校 2020年度卒業式 祝辞/2021年度入学式 祝辞
2020年度卒業式 祝辞
39名の卒業生の皆さん、本日は卒業おめでとうございます。
皆さんは、近森病院附属看護学校の4期生として入学されました。先輩の1期生が立ち上げ、2期生、3期生が確立してくれた本校の伝統をみんなで考え、協力しあいながら充実させて下さいましたが、2020年2月から3月にかけ、新型コロナウイルス感染症の第一波が日本でも流行し始め、皆さんの学校生活に大きな影を及ぼすこととなりました。
「フリーダム&フレキシビリティ」の校風のもと、皆さんは授業はもちろん近森病院の慰霊祭や院内学会などへの参加を通じて、命の尊さやすばらしい看護のあり方なども学んでいただきましたし、さらには龍馬マラソンのサポーターとして校外活動にも積極的に参加し、本気で取り組んで下さいました。1期生がはじめた基礎看護学、実習前の「誓いのセレモニー」では、学生個々が目指す看護の目標を宣誓することで、看護学生としての自覚と向上心を高めてくれました。2年次の秋の学園祭では、自治会を中心にリーダーシップを発揮し、テーマをあげて主体的に企画・運営を行い、学内外の人々に看護学校の活動をアピールするとともに、地域の人々とのコミュニケーションも図ってくれました。
このように4期生は学校の内外で活発に活動してくれておりましたが、2年次の終わりに新型コロナが日本を襲い、学校活動に大きな影響を及ぼすこととなりました。種々の催し物の中止はもちろんですが、授業や実習にも制限がかかってきました。近森病院附属看護学校というように本校は医療機関に附属した看護学校であり、公立学校のように一律に制限、中止するのではなく、医療人にとってもっとも大事な感染防御を学ぶ千載一遇のチャンスととらえ、考え得る限りの徹底した感染対策を講じた上で、学校内での授業や近森病院での実習は可能な限り行わせて頂きました。3年次には新型コロナの影響を受け臨床実習の時間が半減した為、「コロナ世代と呼ばれるのでは」と学生の間からも実践力の弱さを心配する言葉が聞かれていますが、今回の新型コロナの経験を生かして緊張感をもって臨床の現場に臨んでいただきたいと望んでおります。
先生方からお聞きすると、4期生は社会経験がない学生が33名と多く、1年次には学生生活の中で起こる様々な悩みに苦しんだ学生もおりましたが、学年が上がるごとに自分で折り合いを付けられるようになり、現在では1年次に涙していた姿からは見違えるように成長致しました。私も3年次にチーム医療の授業をした時や、国家試験の受験前に挨拶に来てくれた学生たちの立ち居振る舞いに、看護師という医療専門職になるにふさわしい自信と落ち着きが感じられ、皆さんの成長に感動したことを覚えています。
素直で物静かな、他者を気遣える優しい学生が多く、実習の際にも患者さんに丁寧な対応ができていたので、看護師になっても先輩の指導を受けながらチームの一員になるべく、一生懸命努力できると先生方は褒めて下さっております。
これから皆さんは看護師として医療現場に出られますが、時代の変化で医療が高度化し、手間のかかる高齢患者が増えたことで、業務量が増えるとともに、高い医療の質が求められるようになっています。さらには、昨年4月の診療報酬改定で重症度・医療、看護必要度が更に厳しくなり、日本の医療は大きく変わろうとしています。従来の、7:1の看護師の数さえ揃えていれば、診療報酬が入ってくるストラクチャー評価から、必要な業務すべてを行い、重症の患者さんを数多く集めて、早く治して、自宅へ帰さないと7:1の診療報酬が入ってこないアウトカム評価に大きく変わりました。
更には、新型コロナの感染も加わり、高知県でも病院の在院日数が短くなり、稼働率の低下や病棟閉鎖、病床機能の転換による一般急性期病床の減少や地域包括ケア病棟の増加、介護医療院という施設への転換や廃院が多発し、高知の地域医療は大きく変わろうとしています。このことは皆さんの働く医療現場が限られてくることを意味しており、今までは、看護師の国家資格さえとれば雇ってもらえましたが、これからは専門性が高く、人間的にもすぐれた看護師でなければ、いい職場で働けなくなります。
それに加えて、医師の働き方改革で医師の長時間労働が出来なくなり、大学病院や国公立病院で行われている医師・看護師だけで医療を行なう少数精鋭の医療ではやっていけなくなっています。これからは大学病院や国公立病院の医療が問われ、その存亡さえもが問われる大変な時代になります。医師が医師しか出来ない業務、看護師が看護というコアの業務に絞り込み、医療の質と労働生産性を上げ、薬剤師やリハビリスタッフ、管理栄養士、臨床工学技士、MSW、歯科衛生士といった医療専門職とチームで医療を行なう、多職種による病棟常駐型チーム医療でなければ、これからの医療は出来なくなっています。
これから皆さんのほとんどが進まれる近森会グループは、質・量ともに全国一のチーム医療を展開している病院です。このように素晴らしい職場で専門性を高め、患者さんにとっていい看護が実践できる看護師にこれからも成長してください。そして、看護という素晴らしい仕事を通じて、皆さんの人生がいきいきと充実したものになることを祈っております。39名の卒業生の皆さん、本日は本当におめでとうございました。
2021年3月5日
社会医療法人 近森会
理事長 近森 正幸
本日はおめでとうございました。
2021年度入学式 祝辞
第七期生の新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。
近森病院附属看護学校は、高知県の地域医療で活躍する実務能力が高く、人間性の豊かな看護師の育成を大きな目的としています。母体となる社会医療法人近森会は、民間の医療法人ではなく、頭に社会がついた社会医療法人ですので、民間の活力にあふれた日赤や済生会と同じ公的な法人です。
高度の急性期医療を展開する救命救急センターの「近森病院」、脳卒中のリハビリを行う「近森リハビリテーション病院」、整形外科のリハビリが対象の「近森オルソリハビリテーション病院」、障害者の社会復帰や就労支援を行う社会福祉法人ファミーユ高知の、春野にある「高知ハビリテーリングセンター」及びご近所の高知警察署から一区画西にある「しごと・生活サポートセンター ウェーブ」など、急性期からリハビリテーション、在宅まで、県民、市民の皆様が、たとえ病気になっても、障害が残っても、住みなれた地域で暮らせるよう頑張ってきました。
それと共に教育、研修には従来より熱心に取り組んでおり、先生方の卵である初期研修医やそれにつづく専門医の養成、さらには、看護師特定行為研修も全国に先駆けてスタートするなど、高知の地域医療をになう人材が近森から数多く育ってくれております。昨年は、新型コロナにより研修会や学会への出席は大きな影響を受け、ほとんどが中止やWeb開催となりましたが、従来は近森会全体で県外への出張は一年間で1,000名を超え、研修会も600回以上開催され、院内外のスタッフ15,000名以上が参加するなど、医師、看護師ばかりでなく多くの医療専門職の人材育成も行ってきました。
21世紀に入り、医療の高度化と高齢社会の到来、診療報酬制度の変化により、病院の医療も大きく変化しています。日々の業務量が膨大になるとともに、高い医療レベルが求められるようになり、「医師と看護師だけで医療を行う時代」ではなくなっています。多くの医療専門職が病棟に常駐し、リハビリスタッフや薬剤師、管理栄養士、臨床工学技士、MSWといった多職種が周辺業務を担い、看護師は「看護というコアの業務」に専念し、医療ばかりでなく看護もチームで行う時代になりました。それとともに、看護師に求められる知識や技能も大きく変化しています。近森は多職種による多数精鋭の「病棟常駐型チーム医療」では質、量共に日本のトップであり、国公立病院の伝統的な「医師と看護師だけで行う医療」は、限界にきていることをご父兄を含め分かっていただきたいと思います。
本校は、近森病院附属看護学校というように医療機関に附属した看護学校であり、公立学校のように今回の新型コロナで一律に授業や実習を制限、中止するのではなく、医療人にとってもっとも大事な感染防御を学ぶ千載一遇のチャンスととらえ、考え得る限りの徹底した感染対策を講じた上で、学校内での授業や近森病院での実習は可能な限り行わせて頂きました。さらには、救命救急医療から急性期、リハビリテーション、精神、在宅などの医療の最前線で活躍している医師や看護師ばかりでなく、多くの医療専門職が講師となり、臨床現場のニーズにあった幅広い講義や演習、実習が行われています。
自由な校風と恵まれた教育環境の中で、従来の「病棟業務はすべて看護師が行う」という固定観念にとらわれない、新しい時代の看護を目指す教育を行い、看護学校だけでなく臨床現場での研修を通じて、高い実務能力と心豊かな人間性を育んでいただきたいと願っています。
学生時代は基本的な知識や技術を身につけ、看護業務が安全、確実に実践できるようになると共に、将来看護師として成長する基礎を身につけて下さい。卒業後は、先進的な医療現場で刻々と変化する患者さんを看護師の視点で診て、看護判断し、介入を繰り返して下さい。時には失敗して怒られ、時にはうまくいって患者さんから感謝の言葉や笑顔を向けられるかもしれません。こんな経験を繰り返すことで、専門性を高め、人間性や総合力を身につけ、患者さんを全人的にみれる看護師に成長します。私たちは看護学校だけではなく、卒後研修の充実した近森での研修を含めた一連の教育が、よりよい看護師を作るベストの方法であると考えています。
ここにおられる第七期生のみなさんが、校歌に歌われているように近森だけでなく高知の地域医療の杖となり、新しい看護のパイオニアに成長してくれることを信じています。学校だけでなく医療現場みんなでみなさん方を育て、患者さんにとってなくてはならない素敵な看護師になって、すばらしい人生をいきいきとやりがいをもって歩んでいただきたいと願っています。
2021年4月7日
社会医療法人 近森会
理事長 近森 正幸
本日はご入学、本当におめでとうございました。