相談役 近森正幸のドキュメント document

相談役 近森正幸のドキュメント

相談役 近森正幸のドキュメント

ひろっぱ Vol.402 2020年1月号

年頭所感
今までの発想にとらわれない自己変革
~小さなマネジメントを積み重ねアウトカムを出す~

はじめに

4年前の2016年4月の診療報酬改定で、ストラクチャー評価から、アウトカム評価が導入され、更には、急激な少子高齢化による人口の減少により、日本の医療、特に高知の地域医療が大きく変わり、右肩上がりから右肩下がりに大きく変化する、まさに2016年4月は「時の分水嶺」であったと言える。

近森会グループにも大きな影響が生じ、救急や紹介患者の受入れの促進、人件費削減を含む諸経費の徹底したコストカットや、2017年10月には地域包括ケア病棟34床の開設、昨年4月にはHCU、SCU病棟の再編成などを行わざるを得なくなった。

変化する高知の医療

2018年4月の診療報酬改定では、アウトカム評価が一段と強化され、すべてのステージで重症の患者を数多く集め、早く良くして在宅へ帰すという競争が始まっている。

高知の地域医療は過去30年間、時代と共に少しずつ変化してきたが、病床が全国平均の2倍、療養病床は2.5倍と多く、人口が減少し、重症の患者が限られることと、地域医療構想の名のもとに、医療費削減にむけた国の圧力が強まり、全国に先駆けて大きな変化が起ころうとしている。

時代の変化を見据えた近森の対応

そういう時代の変化を予見して、近森会グループは地域医療構想が出てくる10年以上前から、着々とトップダウンで体制を整えてきた。

7カ年計画で近森病院、近森リハ病院、近森オルソリハ病院の全面的な増改築工事を行い、これから20年、30年耐えうるハードを作り上げた。

近森病院は急性期338床という中小病院から、急性期452床、総合心療センターの急性期精神科病床60床を統合し512床の大病院になっている。

これにより救急車の搬入件数は1.5倍、今まで満床でお断りせざるを得なかった紹介や救急による入院患者数は1.4倍、1.6倍になった。救急搬送件数は2017年度は中四国で3番目となり、生命にかかわるメジャーな傷病の入院患者数や手術件数は2016年度から高知県トップになることができた。

ソフト面でも20年前から積極的な地域医療連携をすすめ、重症病棟と一般病棟のスムーズな病棟連携も、ベットコントロールナースにより行なわれている。2003年には栄養サポートチームにより管理栄養士が病棟に出るようになったことで、多職種による本格的な病棟常駐型チーム医療がスタートした。病院や病棟、スタッフの機能を絞り込むことで医療の質を上げ、労働生産性を高め、病院機能を整備してきたし、先生方はじめスタッフみんなの労働環境や、やりがいが飛躍的によくなっている。

組織活性化のために

組織の活性化のために、看護部でも師長、主任に代行、心得制度を導入し若いスタッフを積極的に登用するなど、病棟や外来、各部署ばかりでなく委員会でも若返りを図っている。

昨年2月からは部科長会を診療責任者会議に組織替えを行い、その会では先生方にも病院の運営や経営に参画していただき、その決定事項を合同運営会議で報告、検討し、先生方はじめ全職員に病院の方向性を周知徹底して、みんなで決めたことは確実に実行するボトムアップの体制を作っている。

医師の働き方改革への対応

医師の働き方改革では、特に地方の救命救急センターが大きな影響を受けるといわれている。週40時間勤務。週に1回又は月4回は完全に休む。時間外は月80時間以内という原則を守りながら、通常業務と同じERの時間外、休日勤務は原則交代制とし、時間外は入院患者の急変やER呼出し、緊急手術や処置といった業務に限定し、病棟業務は可能な限り時間内に行い、休日の病棟業務は担当を決め、グループ診療で行う体制をとり、先生方の労働環境の改善に繋げていきたいと考えている。

最後に

今までの発想にとらわれず、自己変革を限りなく続ける病院こそが生き残ることができる。近森会グループは毎年、小さなマネジメントを積み重ね、アウトカムを出し続けることで、常に変化し、今まで以上によりよい病院に変わり続けている。これからも元気に歩んでいきますので、どうかよろしくお願いいたします。