相談役 近森正幸のドキュメント
近森会グループ学術集会 特別講演 抄録
高齢社会におけるリハビリテーション栄養の使命
~必要な患者すべてに必要なリハ栄養を提供するためのチーム医療を 考えてみよう~
高齢患者は骨格筋が乏しく低栄養と廃用が特徴的であり、高齢社会の医療の両輪はリハビリテーション(以下リハ)と栄養サポート(以下NS)になる。その為、高齢患者には必要な患者すべてに、必要な時に、必要なリハ栄養を提供する体制が必要になる。
当院では多職種による病棟常駐型チーム医療を展開しリハ栄養に関してもアウトカムを出しているが、2011年度と2016年度における退院患者のリハとNST実施件数を比較検討した。退院患者数は1.3倍に増加し、リハ実施件数は4,157件が5,759件と1.4倍に増加しており、必要な患者すべてにリハが提供されている。一方、NST実施件数は2,737件が2,263件と2割近くも減少している。これは、この6年間で「NST加算の算定」を目的とするのではなく、管理栄養士を病棟に常駐させ「NSのアウトカム」を出す方針に転換したことが原因となっている。2011年度のNST実施件数に比べ2016年度のNS実施件数は1.6倍と著しく増加し、大きな変化が生じている。
全体的には年齢が高くなるほど、特に後期高齢者ほどリハ栄養の必要性は高くなっている。診断群分類別ではリハとNSの必要性が高かったのは呼吸器、神経、外傷の順で、リハのみでは外傷や神経が多く、NSのみでは消化器が多かった。リハとNS両方が行われなかった症例は循環器、消化器、腎尿路の順に多くみられた。
入院患者の半数という多くの患者すべてに必要な栄養サポートを行うためには、管理栄養士が病棟に常駐し患者を診て栄養学的に判断し介入し、電子カルテに載せるか一言、二言の情報交換で情報を共有する効率的で質の高いチーム医療が必要になる。
アウトカムの出るチーム医療を行うためには業務量に応じてスタッフ数を増やし、「医師は医師しか出来ないコア業務」に絞り込み、医療専門職はそれぞれの視点で患者を診て、自律、自働することで専門性を上げ、医療の質と労働生産性を向上させることが必要になる。