時代によって患者の層や疾患にどのような変化がありましたか?どう対応されましたか?2ページ目へつづく▼皆さんは病気や患者層はあまり変わらないものだというイメージがあると思いますが、私の医師人生を考えても時代によって大きく変わるということを実感しています。食生活や薬剤、手術器械、社会保障制度などの変遷で、疾病は大きく変わってきます。例えば急性虫垂炎(いわゆるアッペ)は私が近森病院に帰って来た当時は、年間300例ぐらいあったほどのポピュラーな外科疾患でしたが、最近は食事も欧米化し憩室炎が増え、アッペは少なくなってきました。近森病院の手術記録を見ても戦後の開院当初は自費でしたので、アッペによる膿瘍や汎発性腹膜炎が半数を占めていましたが、昭和30年代国民皆保険が始まり、アッペと診断すればすべて手術をしていましたので5%まで低下、最近は抗生剤の進歩とともにアッペは外科疾患であるということを知らない内科医が増え、再度50%まで増えています。十二指腸潰瘍■孔も近森病院に帰って来た当初は高知も景気が良く、忘年会などで暴飲暴食をしておりましたので、年末は毎晩のように十二指腸潰瘍■孔の胃切除術を行っていましたが、H2ブロッカーのタガメットが初めて発売されると、発売量に反比例して十二指腸潰瘍■孔は減ってきました。昔はよく効く薬もなく潰瘍の再発と修復をくり返していたため、十二指腸潰瘍周囲の癒着が強く肝十二指腸靭帯にがっちり癒着した瘢痕組織を剥離し胃切除術を行うのは大変でしたが、H2ブロッカーに続いてPPI製剤が発売されると、十二指腸潰瘍■孔は急性期でポンと穴が開いているだけですので、癒着もなくPPI製剤やピロリ菌の除菌などの薬物治療が発達しているため、■孔部の大網充填で胃切JOB47当時の記録をみると手術患者の年齢は、10代から30代が多く見られる(撮影:近森正幸)※参考:現在の近森病院の入院患者平均年齢は75歳理事長室に保管されている近森病院手術記録簿昭和24年9月14日~33年5月30日(撮影:近森正幸)Q.33
元のページ ../index.html#49