ER救命救急センター

救命救急センター長 根岸 正敏

2017年 近森病院救命救急センター・救急科

【診療体制】

 近森病院救急部門は、2011年5月に高知県から救命救急センターに指定されましたが、救命救急センターとして三次救急といわれる重症患者さんの受入れを行うのは当然のことですが、中等症から軽症も含めて、救急車やヘリコプターで搬入される患者さんから、歩いて受診される患者さん(walk in)まで、あらゆる状態の患者さんを受け入れています。救急車やヘリでの搬入患者さんに対してはまず救急専従医師が、walk in患者さんは主にトリアージナース(院外、院内で訓練を受けた専門の担当看護師)が、JTASと呼ばれる選定システムに基づいて、緊急度・重症度から優先順位を判断し、それに引き続き救急専従医師による迅速な診断と治療が行われます。そして初期診断・治療により患者さんの状態の安定化を図った後に、必要に応じさらに各診療科専門医師に引き継がれ、さらに高度の入院治療が行われます。(=いわゆる北米ER型救急システムと呼ばれています)
 重症患者さんの入院を受入れる救命救急病床は18床が認可されており、ほかに高規格のICU(集中治療室) 18床、SCU(脳卒中専用病床)24床、HCU(高機能治療病床)16床、そして一般病棟と患者さんの状態に応じた病棟での入院治療が行われます。入院病棟の決定は、患者さんの病態を十分に把握した上で、担当医師、ベッドコントロールナース(*1:BCNS)、ER外来リーダー医師、リーダー看護師との協議により決定しています。
 救命救急病棟は、日勤帯はER医師が、また休日夜間帯は各診療科の応援も得て24時間専任医師が常駐する体制をとり万全の体制をとっています。またICU、SCU、HCUにもそれぞれ24時間体制で担当医師が常駐しています。各診療科がオンコール体制をとり、特に、循環器科医師、脳卒中対応医師は24時間院内に待機しており、心血管疾患、脳卒中に迅速に対応することが可能です。このような体制の中で、2017年の救急車の受入数は、四国でもトップの6,852件(図.1,2)で、前年とほぼ同様でした。Walk in患者さんが約30,000人で全体での入院が3,596件、心肺停止は121件でした。また、応需率に関しては、昨年はだいぶ改善していましたが、2017年は、1月、12月で応需率がやや低下してしまいましたが、この理由としては高齢者の肺炎などの感染症が多く、これに伴う入院期間の延長などが考えられました。全体的には90%前後は維持しています(図.3,4)。救急受入れ要請に対しては、対応病床が確保困難、救急車受入れが多数重なる(ERの対応ベッドが満床)などの理由から応需できない症例もあり、さらに改善していきたいと考えています(図.5)。
 患者さんの重症度別では、2016年とほぼ同様の傾向がみられ、軽症(外来での処置、通院で可能)は約45%、中等症(手術や入院が必要であるが、一般病棟で対応可能)が約30%、重症(ICUなどの重症対応病床への入院を要する)が25%でした(図.6)。重篤患者さんの受け入れ数についても、中四国でもトップクラスとなっています。
 2017年のヘリ搬送(高知県DRヘリ、高知県防災ヘリなど)患者数は116件で微減、ドクターカーの出動は50件とやや増加しています。疾患別ではともに循環器系疾患、外傷症例が多くなっています(図.7,8)。

 救急科の専従医師は山本医師が麻酔科に異動になったために、現在5名(根岸、杉本-兼務、井原、竹内、三木)及び非常勤医師1名で、各診療科からの応援医師、研修医4~5名での診療体制をとっています。ほかに、walk-in対応の内科系医師2~3名とで、救急車やwalk-inのすべての救急患者に対応しています。再診処置のみの患者さんには、外科、形成外科、整形外科医師が午後から専門外来で対応する体制に変更となりました。
 全日勤帯には救急科医師が常駐し、夜間は内科系、外科系医師のバックアップを含めての当直体制ではありますが、救急科、各診療科ともに直ちに対応可能なオンコール体制をとり、24時間体制でバックアップしています。
 2018年度には、専従医師、専攻医師が増員となります。
 看護師は、森澤 救命センター看護師長が地域包括病棟へ異動になりましたが、町田 ER看護師長、野瀬救命救急病棟師長を中心に、ER、救命救急病棟、放射線部門看護師など救急に精通したスタッフが一丸となって看護にあたっています。また手術部とも密な連携を取り、ERでの超緊急手術(ERでの緊急開頭、開腹術など)などにも迅速に対応できるようになっています。
 また全国的にも先駆けとなった院内救急救命士は、消防への合格などにより数名の退職がありましたが、医師や看護師とともにドクターカーやヘリ搬送患者受入れを中心として活動し、さらに救急患者さんの初期対応の業務も行っています。

*1・・・「ベッドコントロール」=「病床管理」といわれる。 空いているベッド数や退院予定患者数を把握し、スムーズな入退院を可能にするため、またより多くの患者さんに安全で質の高い医療ケアを提供するための病床管理担当看護師を「ベッドコントロールナース」という。

  • 図1図1
  • 図2図2
  • 図3図3
  • 図4図4
  • 図5図5
  • 図6図6
  • 図7図7
  • 図8図8

【統計資料】

図1:年別の救急車搬入件数(1993年~2017年)
図2:2017年 月別救急車搬入件数
図3:2017年 月別救急車応需率
図4:2016/2017年 月別救急車応需率比較
図5:2017年 救急受け入れ要請数
図6:2017年 救急車受け入れ患者重症度
図7:2017年 ヘリ搬送患者数
図8:2017年 ドクターカー出動状況

【教育】

 ERスタッフを中心に、AHA(米国心臓協会)認定のBLS、ACLSコース、日本救急医学会認定のICLSコース、JATECコース(初期外傷診療)、JMECC(日本内科学会認定内科救急・ICLS講習)やDMAT研修(災害医療)などの各講習会にもインストラクターとして積極的に参加しており、JPTEC(病院前外傷救護)は、例年通り2017年1月に近森病院コースも開催しました。またJATECコース(初期外傷診療)も近森病院、高知赤十字病院が事務局として開催し、全国から多くのスタッフ、受講生の参加がありました。
高知大学、岡山大学、群馬大学、東京女子医科大学など各地の大学からの医学生実習も受け入れ、ほかに救急救命士再教育、救急救命士養成施設からの学生、看護学生など多くの医療従事者の養成にも力を入れています。

【災害関係】

 2010年に高知県から災害拠点病院に指定され、その役割を果たすために、近森病院の災害対策委員会、高知県および高知市の災害関係機関とも連携をとりながら、2017年も各種の災害訓練や講習会等に参加しています。
 高知県DMAT研修、MCLS(多数傷病者対応)研修にも、スタッフや受講者として参加し、迫りくる南海トラフ地震への備えも行っています。

 高齢化社会を迎えた高知県では、急性期病棟の再編を迎え、さらにベッド状況などきびしい状況となります。しかし私たちは、患者さんに寄り添い、複雑化、多様化する患者さんにも十分に対応可能な高度で質の高い医療の提供を通して、県民の皆様から求められる、信頼される救急医療を追求していきます。

業績

■学会発表

学会名 発表日
演題 演者
第45回 日本救急医学会総会・学術集会 2017年10月24~26日
「ER型救命救急センターからみた、後期高齢者(75歳以上)救急搬送の現状と問題点」
  • 杉本和彦
  • 山本賢太郎
  • 三木俊史
  • 竹内敦子
  • 井原則之
  • 根岸正敏
第45回 日本救急医学会総会・学術集会 2017年10月24~26日
「感染症・敗血症4」
  • 座長:三木俊史