神経内科

主任部長 山崎 正博

 近森病院神経内科は、神経緊急症(neurological emergency)とされる脳卒中、てんかん・痙攣疾患、脳炎などの急性期疾患が24時間受け入れ可能な県下唯一の診療科であり、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、認知症など亜急性期から慢性期の神経変性疾患も診療している。今年度常勤医は葛目大輔部長と二人になり、金子恵子、森 千祥医師がパートのスタッフである。2017年度は佐島和晃両医師が語学研修で留学、小松奏子医師が研究員として国立精神神経医療研究センター(NCNP)に移動、2016年4月から国立精神神経医療研究センター(NCNP)国内留学していた森本優子医師が産休中である。また4月から糖尿病内分泌代謝内科に赴任した吉田 剛医師は神経内科専門医資格を持っており、SCU当直を助けてもらっている。
 2017年の神経疾患患者数は院内発症21 名、再発・薬剤調整などで再入院した25名を含めて616名であり、前年の839名に比べて著減した。この原因はスタッフ数減少により入院担当医がいないため、多くの変性疾患による初診患者を検査入院させずに外来で精査検査したためである。疾患別内訳を見ると例年と同様、神経緊急症とされている脳血管障害、中枢神経感染・炎症性疾患、けいれん・てんかんによる入院患者が多かった(表1)。脳梗塞は226名、病型別分類ではラクナ梗塞29名、アテローム血栓性脳梗塞136名、塞栓症85名、原因不明29名であり,比率からは年々塞栓症が増えている。またTIA は44名であった。その他、変性疾患であるパーキンソン病類縁疾患26名、多系統変性症4名、多系統萎縮症4名であった。
 神経疾患の診断に当たっては近年、遺伝子解析や各種抗体検査が有用になっており、他大学や研究施設との連携が重要であり当院も葛目医師が人的ネットワークを拡げて活用している。
 学術面では各種学会、研究会、若年医師向けの研修会も含め、県内のみならず中四国地域での症例検討会にも参加している。

<神経疾患診療の展望>

1.脳血管障害

  • SCU(stroke care unit)の能力アップ
     新本館5階でのSCU病棟の運用は脳外科と協力して順調に行われており、稼働率、算定率は年々改善してきている。超急性期脳梗塞治療のt-PA治療は適応時間延長に伴い症例数が増加してきている。また近年、t-PA無効例は血管内治療が必須となっており、脳外科医師が取り組み好成績を収めている。その他、病棟全体の看護能力も向上してきており、入院ベッド数の多さが国内病院の中で有数であるSCU病棟として呼吸器装着など、より重症の脳卒中患者を早期から受けいれられるようにスタッフ教育、多職種との連携などチーム医療の充実を今一歩進める必要がある。
  • 脳卒中の市民啓発運動
     脳卒中患者で発症後数日して受診する患者が未だに散見される。全国的にt-PAの対象患者の5~8%程度しか実施されていないという現況から、脳卒中診療では早期診断、早期加療が最優先されるという観点から市民に啓発運動をしていくことが重要であり、特にTIA(一過性脳虚血発作)の重要性とt-PA投与時間制限が延長されたことなどについて重点的に啓発していく必要がある。

2.地域連携の拡充
 発症時から患者であると同時に障害者であることの多い神経疾患では、医療ケースワーカー中心に多職種が参加して、神経難病ネットワークや脳卒中地域連携パスを通じた回復期病院、療養型病院および開業医との連携を深め、地域で完結する神経診療体制の構築と連携の深化を図る必要がある。大病院から地域包括診療という国の医療施策の流れに沿って地域中核病院や診療所との連携を重要視していきたい。

3.神経内科医の連携・増員
 医学部入学生の地域枠の医師が今後増えてくるが神経内科医をめざす医師がほとんどいないという状態が続いている。神経内科領域では専門医数が少なく、県央に集中する現状がこの20年間続いている。高知大学での神経内科医が増えない中で、今まで以上に教育、診療や各種研究会などあらゆる機会を通じて学生、研修医に神経内科の魅力を伝え、神経内科医の増員を図る必要がある。

4.てんかん診療の拡充
 絶対数が多く救急搬送されることの多いけいれん、てんかん患者数は年々増加しているが、高知県ではてんかん診療の専門家が少ない現状が続いている。成人のてんかん診療では、専門家のいる当院が高知県のてんかん診療の中心を担っていかざるを得ない状況である。てんかん診療の若手医師を育てていくことが今後の課題である。

表1 2017年入院患者疾患別一覧(院内発症、再入院例を含む 616名)
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