心臓血管外科

文責 佐藤 充 / 承認 主任部長 入江 博之

■2017年のまとめ

 2017年の年間手術症例総数は、417例と一昨年に次いで歴代2番目に多い年でした。スタッフ数の変動、麻酔科人員の変動等もあり、手術枠を制限せざるを得なかったことも鑑みると着々と増加している感があります。
 上記症例の内訳ですが、心臓手術は198例(内、TAVI 47例)、胸部大動脈手術は45例、腹部大動脈手術は42例で、心臓・大動脈手術が総計で285例でした(グラフ1)。特に、年始から年度末にかけては急患手術症例を多く受け入れましたが、皆の頑張りもあり、こうした多忙な時期も無事乗り越えることができました。特に冬場の急性大動脈解離については、一般的な発症率(人口10万当たり年間2-4人)を上回る頻度でありましたが、何とか対応、救命できました。
 なお、2014年12月に当科で開始したTAVI I(: Transcatheter Aortic Valve Implantation:経カテーテル的大動脈弁置換術)に関しましては満3年以上が経過し、年々増加する高齢の重症大動脈弁狭窄症患者さん方(65歳以上の罹患率は2-4%で日本における潜在患者数は推定50-100万人)の安定した治療選択肢の一つとして定着し、上記の如く着々と症例を積み重ねております。今後は次世代deviceの導入も見越し、Core Valve® の導入も視野に入れております。
 因みに8月下旬には2泊5日の日程で入江副院長と放射線科宮﨑部長一行がEdwards Lifescience社主催のTAVI見学プログラム(アメリカ西海岸)に参加しました。
 また、12月に参加した「第3回 四国TAVIの会」では、当院のTA approach症例が日本でも屈指の数であることに皆さん驚かれておりました。
 そうした新しい試みを進めながらも、安全性や確実性をさらに着実なものとしていけるよう、日々心掛けております。

 心臓手術における早期離床ですが、当日リハビリテーション治療がより一層、浸透しています。代表的な心臓手術である冠動脈バイパス術(CABG)術後の手術室抜管は、on-pump及びoff-pump症例で77.8%、90%となっております(グラフ2)。手術の翌日に食事ができた患者はon-pump及びoff-pump症例で83%、90%でした(グラフ3)。当日立位リハビリは、on-pump及びoff-pump症例で36%、50%(グラフ4)、翌日歩行率はon-pump及びoff-pump症例で58%、90%でした(グラフ5)。また、待機的な冠動脈バイパス手術(CABG)では、高齢で貧血や低体重などの危険因子のない限り、87%の患者さんは輸血せずに退院の日を迎えられています。危険因子を有する患者さんでも、54%の方は輸血を受けずにお元気に回復しておられます(グラフ6)。腹部大動脈瘤の手術でも、ほとんどの患者さんが輸血をせずに退院の日を迎えられます。

グラフ1

近森病院心臓血管外科年間手術件数

グラフ2

抜管率 CABG待機手術2000.7-2017

グラフ3

食事率 CABG待機手術2000.7-2017

▲グラフ1 ▲グラフ2 ▲グラフ3
グラフ4

立位率 CABG待機手術2000.7-2017

グラフ5

歩行率 CABG待機手術2000.7-2017

グラフ6

無輸血(RBC)率 待機手術2000.7-2017

▲グラフ4 ▲グラフ5 ▲グラフ6

■2017年の人事異動

 人事の面では、当院で2年間、身を粉にして従事してくれた「誰とでも打ち解け易く、明るい」宮本陽介先生が3月に岡山大学に帰学。その代わりとして4月から岡山大学所属で医師4年目の「ちょっと幼顔の、でもテキパキ仕事をこなす」井上善紀先生が当院心臓外科チームに加わっております。また、当院の生え抜きで当科でも後期研修を行った衣笠由祐先生は今年も福岡県の聖マリア病院での外科研修に精を出しております。岡山大学大学院に帰学された佐野俊和先生は今年も週一回の勤務(木曜日)を継続し頑張ってくれています。上記の井上先生に加え、5月からドイツでの短期臨床留学(2016年度)から帰国した東北大学大学院卒の私、佐藤充も同チームに参加させて頂いております。これにより、スタッフ5名、入江博之、池淵正彦、手嶋英樹、佐藤充、田井龍太、後期研修医1名(井上善紀)の合計6人体制で診療を行っています 。

■2017年のイベント

 病院全体としてイベントは縮小傾向の年ではありましたが、それでも興味深いいくつかの会を催すことができました。
 4月には例年であれば当科恒例の春のお花見があるのですが、残念ながら今年は調整がつかず開催されませんでした。もちろんその代りというわけではありませんが、同月にTAVI 100例記念パーティーを高知パレスホテルで行うことができました。およそ100名の方々が参加され大変盛り上がりました(写真1, 2)。
 11月は嬉しくも忙しい月でした。同月12日(日)には2年に一度の心臓血管ウェットラボを開催しました(写真3, 4, 5)。管理棟大会議室3つを繋げて使用しました。参加者総数は193名で、そのうち院外からは92名、院内101名でした。例年通り、班に分かれて、それぞれブースを廻る形式を取りましたが、前回の参加者からの声を反映し、少しでも一人当たりに割ける時間を多く確保するため、今回は参加人数を制限したにも関わらず上記の数となりました。どのブースも大変盛況で、例年にも増して満足度の高い会になったと感じております。また残念ながら今回のランチタイムではギターの生演奏はありませんでしたが、ビュッフェスタイルは今回も好評でした。因みにインストラクターの医師は、院外17名、院内12名の合計29名でした。院外では高知大学医学部老年病科、心臓血管外科、高知医療センター、高知赤十字、幡多けんみん、香川済生会、あき総合、岡山大学、井上病院、福山市民病院といった県内外の循環器を扱う病院の先生方が務めて下さいました。この場をお借りして改めて関係各位に感謝申し上げます。
 また同月26日(日)には当院主催の特別講演の一環として昨年に引き続き、作曲家でピアニストの鍋島佳緒里さんとベルギー王立美術館公認解説者の森耕治さんのコラボレーションによる名画コンサート「ゴッホ、太陽は燃えつきたか」を開催しました。通常の美術解説のほかに、絵のイメージに合った音楽を、しかも生演奏で堪能できるこの会は、そもそもヨーロッパから35年ぶりに里帰りした際に森先生が「どうしても絵の楽しさをもっと多くの人に知ってもらいたい」と願った強い思いに端を発しているとのことで、今回の参加者達も非常に感慨深く聞き入っていました(写真6, 7)。
 12月の病院忘年会ではハートセンターMVPの授賞式が行われました。今年の受賞者は、橿尾幸聖(看護部 ER)、岩本奈々(看護部 手術室)、田中宏親(画像診断部)、松本香奈子(5B クラーク)、竹崎さとみ(5C クラーク)でした。

 2017年も多くの先生方に御講演、招待手術にとお越しいただきました。4月28日には心臓病センター榊原病院の近沢元太院長補佐、5月11日には九州大学の塩瀬明教授(医療再生機構補助金講演会あり)(写真8)、5月19日には滋賀医科大学の浅井徹教授(招待手術および講演あり)(写真9)、6月2日には広島市立広島市民病院の柚木継二主任部長(招待手術あり)、6月24日には榊原記念病院の高橋幸宏副院長(高知県体外循環セミナーにて講演あり)(写真10)、7月5日には東京女子医科大学病院の西田博先生(第4回高知県心臓血管チーム医療研究会にて講演あり)(写真11)、7月28日には東京ハートセンターの磯村正副院長、9月8日には金沢大学の竹村博文教授(循環器セミナーin Kochiにて講演あり)(写真12)、11月7日には岡山大学前学長の森田潔名誉教授(第158回地域医療講演会にて講演あり)(写真13)、11月17日には岡山大学麻酔科蘇生学講座の森松博史教授(第20回高知呼吸と循環の会にて講演あり)、12月5日には市立函館病院の森下清文副院長(招待手術あり)に来高頂きました。その他、当院の手術並びに早期離床の周術期管理の見学などにも多数の方々にお越し頂きました。

グラフ1
グラフ2
グラフ3
▲写真1
TAVI100例
記念パーティー
▲写真2
TAVI100例
記念パーティー
▲写真3
ウェットラボ1
グラフ4
グラフ5
グラフ6
▲写真4
ウェットラボ2
▲写真5
ウェットラボ3
▲写真6
ゴッホ講演会 森先生
グラフ4
グラフ5
グラフ6
▲写真7
ゴッホ講演会 ピアノ
▲写真8
塩瀬明先生
▲写真9
浅井徹教授
グラフ4
グラフ5
グラフ6
▲写真10
高橋幸宏先生
▲写真11
西田博先生
▲写真12
竹村博文教授
グラフ4
▲写真13
森田潔名誉教授

■2018年への展望

 2018年は4月から当院育ちの衣笠先生が帰高されます。九州福岡の聖マリア病院での外科研修を終えて一回りどころか二回り以上も頼もしくなった先生に乞うご期待です!もうひと方、こちらも当院育ちの田井龍太先生が7月より岡山大学での研修に出向されます。先天性症例を始め、そこでしかできない多くの事柄を体感し、経験値を上げてまた帰ってきてほしいと思います。そうした種々の異動はありますが当グループとしては引き続き6人体制で診療を行う予定であります。
 上述の如く、術後の早期離床プログラムを推進していることもさることながらが、積極的な栄養管理など、様々な職種が関わる周術期管理を他には類を見ない規模で行っているのも当院の特徴です。見学をはじめ当院に御興味のある方は是非当方まで御一報をお願い致します。

 それでは今後も不断の努力で、心臓手術、大動脈手術の件数、治療の質向上を目指すとともに、地域に根差したよりフットワークの軽い病院を目標に頑張って参りますので、皆様の御指導、御鞭撻を何卒宜しくお願い申し上げます!