近森病院附属看護学校

副学校長 尾原 喜美子

■はじめに

 平成30年3月9日第1期生36名が卒業しました。平成27年の開校時に入学した1期生は3年間の教育期間を終え法令に規定されている必要科目を取得し看護師国家試験を迎えることができました。3年間の教育は長い道のりでしたが、1期生と共に歩んだ看護学校の歴史を築き始めた3年間でした。学校行事の一つ一つに学生個々の深い思い入れと学校目標に近づく爽やかな達成感があったように思います。一からはじめた基礎看護学教育でしたが、教職員が一堂となり幾多の課題や難関をくぐり平成29年度を収めることができました。

 29年4月には3期生も入学し看護学校としての完成年度を迎え、看護教育の集大成の年度でした。新入学生は43名で1・2・3学年を合わせると120名となります。3期生は完成した新校舎でのはじめての授業となりました。

 平成29年度の授業は、多数の講師、指導者に恵まれ順調に進みました。特に本年度は1期生の看護師国家試験の受験年度でもあり、学校としては国家試験に向けた集中的講座開設や模擬試験の実施、教員が作成した試験による模擬試験などを実施しました。学生指導は個人指導からグループ指導と学生の個々の能力と特徴に併せた指導を実施しました。模擬試験結果から学生の理解状況を把握し、国家試験の2月まで徹底的な強化を図りました。また、一方では卒業後の進路指導を実施し学生の志望する社会に巣立てるよう支援を行いました。社会人として恥ずかしくないマナーをもつ看護師としての旅立ちを支援しました。

 卒業生を送り出したといっても近森病院附属看護学校の歴史は始まったばかりです。近森病院附属看護学校は、学生のもつ可能性を最大限に開花できるような学校づくりを今後も行なっていく所存です。更なるご支援をお願いいたします。

1. 平成29年度看護学教育の概要

●平成29年度 カリキュラム

 1年次には、基礎分野 12単位270時間、専門基礎分野 14単位360時間、専門分野Ⅰ 14単位435時間、専門分野Ⅱ 5単位75時間、合計 45単位1140時間の授業を行いました。2年次は、専門基礎分野 2単位45時間、専門分野Ⅰ 1単位30時間、専門分野Ⅱ 27単位945時間、統合分野 4単位105時間、合計 34単位1125時間の授業を行いました。3年次は、基礎分野 1単位30時間、専門基礎分野 5単位75時間、専門分野Ⅱ 6単位270時間、統合分野 10単位360時間、合計 22単位735時間の授業を行いました。
 3年間での合計単位数101単位 総時間数3000時間です。初めての3学年揃った年であり、昨年度の講義と実習との関連性の課題を踏まえ、老年看護学概論や母性看護学概論、精神看護学概論を1年次後期に行うなど一部修正を加えたカリキュラムとなりました。

表1 2017年度 カリキュラム

  • 表1
●科目担当者、講師一覧(別表参照)

 専任教員は、主に各領域別看護学に分かれて専門科目を担当しました。経験年数や実習時間とのバランス等をなるべく考慮し調整をしていますが、カリキュラム進度によってはある時期に集中してしまう教員もいました。そのため、次年度の課題としては、実習との重なりを可能な限り避け、なるべくバランスがとれた調整をしていきたいと考えています。
 約90名の非常勤講師に講義を依頼しました。講師は、医師(開業医師を含む)、薬剤師、看護師(認定看護師、専門看護師を含む)、栄養士、臨床心理士、理学療法士、大学教授等で、教育の経験豊富な方や現場で活躍されている方ばかりです。多忙な仕事の合間に、学生の現状やレディネスを考慮して、熱心に講義をしてくださっていると感じました。

●科目担当者、講師一覧

 2017年度は、92名の非常勤の講師の先生方が講義をしてくださいました。非常勤講師の先生方は近森グループの医師を始め看護師、メディカルスタッフの方々や近森会グループ以外でご活躍されている医師、看護師、高知大学や高知県立大学、東海大学の先生方など、教育の経験豊富な先生方が多忙な仕事の合間に、熱心に講義をしてくださりました。
 開校後3年が経過し非常勤講師との関係性も出来つつあり、スムーズな授業への流れが確立されてきたように感じます。
 専任教員は、5月に岡本教員が10月に高松教員が入職し、1月に育休明けで島本教員が帰ってきて実習指導や実習期間中の学内での講義が充実しました。しかし、母性看護学実習など専門性を問われること、沢山の実習施設で実習を行う状況もあり、まだ厳しい現状でした。

表2 非常勤講師担当科目・時間数

  • 表2

表3 看護学校教員担当科目・時間数

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●臨地実習

1) 基礎看護学実習Ⅰ・Ⅱ
 1年生40名は平成29年10月、近森病院、近森リハビリテーション病院、近森オルソリハビリテーション病院で基礎看護学実習Ⅰを実施させていただきました。入学後初めての実習で、どのような体験をするのか、患者さんと上手くコミュニケーションが取れるのか、学生は期待と不安でいっぱいでした。しかし、患者さんとの関わりの中から学生が体験した気づきや疑問について、スタッフの方々に具体的に指導して頂くことで、多くのことを学ぶことができました。
 平成30年1月には近森病院で基礎看護学実習Ⅱを実施させていただきました。学生は1人の受け持ち患者さんと関係性を築きながら、患者さんに合った看護援助について学習しました。基礎看護学実習Ⅰでの学びをもとに自己の課題について学習して実習に望みましたが、短期間で受け持ち患者さんが変わることもあり解剖や病態整理について具体的に学習する必要性を改めて実感しました。また、実際に構内で学習した看護技術を患者さんの個別性に合わせ実施する難しさを体験し、試行錯誤しながらではありましたが、充実した実習となりました。

2) 領域実習
 患者さんとコミュニケーションをとる、患者さんの療養環境を理解する、一連の看護過程を展開するといった、看護実践の基礎となる基礎看護学実習を1年次に終えると、2年次からは、成人期、老年期、小児期、など患者さんの発達段階や、急性期、回復期、慢性期のような健康段階に応じた看護を展開する領域実習が始まります。平成29年度の実習状況としては、2年生は7月に小児看護学実習の一部、10月末からは成人看護学実習Ⅲ(慢性期)、老年看護学実習Ⅰ、精神看護学実習、母性看護学実習が始まり、3月末までほぼ実習という状況でした。また、3年生は5月の連休明けから6月の末まで、間が空くことなく、成人看護学実習Ⅰ(急性期)、成人看護学実習Ⅱ(回復期)、老年看護学実習Ⅱ(認知症高齢者)、在宅看護論実習を行い、9月末から10月初めにかけての2週間は、これまでの講義や実習の集大成とも言える統合看護実習を近森病院で行いました。開校して3年目であり、3年生の実習は学校としても実習を受け入れる施設側としても初めてのことでした。そのため、実習内容や方法については、現場の師長さん、指導者さんたちのご意見をいただきながら、担当教員を中心に検討を重ねていきました。特に統合看護実習については、夜勤実習や複数患者の受け持ち、他部門との協同・連携、看護管理の実際を学ぶ実習ということで、森本副看護部長初め、現場の皆様には色々な調整およびご協力をいただき本当に感謝しております。

 昨年度もそうでしたが、領域実習は、学生が自分の将来進みたい分野や、興味がもてる分野、あるいは自分に向いている分野を考える重要な機会となっています。3年次の成人看護学実習Ⅰ(急性期)では、近森病院の特色を十二分に実感できる実習環境を整えていただき、最初は不安でいっぱいだった学生や、自分は急性期に向いていないと思っていた学生の多くが「急性期に興味が出て来た」「救急の方で働きたい」と生き生きとした表情で語っていたのが印象に残っています。今後も、学生たちが積み重ねてきた知識・技術と経験をもとに、有意義な実習ができるよう、現場との連携をとりながら、準備と意味づけをしっかり行っていきたいと思います。

3) 実習指導者会、実習調整会、グループとの打ち合わせなど
 平成29年度は、3学年が揃う年となりました。当校以外にも沢山の実習生を受け入れている現場の方々ができるだけ混乱しないよう、また、それぞれの実習目標が達成できるように、計画的に実習の打ち合わせ及び振り返りの会等の年間計画を立てました。前年度に引き続き行う実習に関しては、そのときの反省と課題を踏まえ、また、今年度から始まる実習に関しては、担当教員を中心に該当する施設との検討と打ち合わせを重ねていきました。また、平成29年9月1日には近森会の実習における学校調整会を設け、近森会で実習を行っている学校間での年間計画の調整・確認を行いました。さらに、今年度は、毎月行われている近森病院の実習指導者会議に、実習調整者が何度か出席させていただき、実習の打ち合わせや振り返りの会だけでは把握しきれなかった現場の状況や、指導者さんたちの考え、思いを知ることができ、大変有意義な時間であったと感じています。今後は、他教員も含め、近森病院だけでなく、近森リハビリテーション病院やオルソリハビリテーション病院の実習指導者会議や、3施設合同で実習全般についての意見交換や学習会などができる場を設けることも課題であると考えています。

●教材・教具等教育環境整備

 2017年度に3学年が揃って学習するようになりました。教材・教具各種の整備は前年度に新校舎に移転する際にほとんど整えられていましたが、前年度と比較し、学生人数の増加があった第2学年の教科においては、モデル人形を追加購入するなどし、全学生が平等に演習に取り組めるよう対応しました。

●図書の整備、図書室の管理

 本年度は全学年そろい、臨地実習や学生数の増加により図書の使用頻度や利用学生が増加しました。それに伴い学生に必要な看護専門図書、一般教養を身につける為の蔵書、教員の授業教材等を増加してきました。また、図書システムの導入により、図書の利用状況などの履歴管理が簡易に行えるようになりました。
 その他学生や教員が利用しやすいように、新刊コーナーの設置やカリキュラム毎に書架のディスプレイを行いました。
 本年度の蔵書状況は、2018年3月末の蔵書数は、和書3,643冊(前年比+905)、洋書12冊、合計3,655冊、これに加え20種類の学術雑誌を定期購読しております。蔵書が充実したことにより、2017年度の年間貸出冊数は前年度より196冊増の495冊で、このうち学生が469冊、職員が26冊でした。貸出以外にも図書室での蔵書を利用しての学習の機会も増えてきております。
 今後は、学生や教員の希望図書の把握と貸し出し履歴の傾向や利用状況など分析を行い蔵書所蔵の充実を図っていきたいと考えています。

●学生自治会活動

 平成28年度に発足した自治会も2代目となり、各行事を学生で主体的に取り組みました。

1) 学生自治会メンバー

表4

2) 1年間の活動内容

表5

3) 総括
 1年間を通して始めての行事が多く、平成29年度の自治会メンバーは一つ一つ丁寧に作り上げることができました。また、自治会での活動を行うことによりメンバーの成長が見られ、成果のあった1年でした。ただ、行事に追われ行事以外の学校生活まで検討できなかったことが次年度の課題です。

●看護師国家試験受験対策概況と結果

 4月から小テストを開始し、在宅、老年の実習が終わった7月から本格的に過去問題を中心とした学内テストを反復して行いました。全国模擬試験は学研チャレンジテスト3回、メディカコンクール2回行い、さらに学生の希望により12月にテコム必修問題全国模擬試験を追加で受験しました。
 8月高知城ホールで行われた東京アカデミー夏季特別講習には全員が参加し、その後希望者は東京アカデミー冬季講習、直前講習にも参加しました。さらに当校の弱点に特化した内容で11月に東京アカデミーの講師を招いて国家試験対策講習を2日間行いました。継続して学内外の試験結果を分析し、強化指導が必要な学生を見極め集団指導と共に成績の低迷が続く学生には個別指導を行いました。自主的な早朝学習や放課後グループ学習も支援しました。
 国家試験結果:3年生36名が出願、36名が受験し34名が合格しました。

2. 学校運営と管理

●平成29年度 学校行事

 29年度の学校行事の大要は以下のとおりです。

  • 表6
●広報活動

1) 平成29年度オープンキャンパス
 平成29年度は、参加者獲得のため、実施内容や宣伝方法を見直し内容の充実を図った。
 あわせて名称も「オープンキャンパス」へと変更し、5回開催した。

  • 表7

2) 平成29年度入学試験
 平成29年度入学試験は、推薦入学試験、一般入学試験(一次)、一般入学試験(二次)の3回実施しました。

  • 表8
●学校の管理体制

 本校は、個人情報の流出や、学校備品等の紛失・盗難、不審者の侵入を防ぐため、セキュリティ面において人的・機械的な管理を行っています。教職員による早出・遅出の業務を実施し、教室や図書室の解錠・施錠や時間外に居残り者の有無について確認を行っています。また、放課後校内へ入館する場合、教職員や学生が持つ専用のカードキーによる開錠操作が必要となっており、学校関係者以外は入館ができないようになっています。
 夜間については警備会社によるセキュリティ警備を行っており、この間は校内への入館ができません。警備を解除するセキュリティキーも貸出簿による管理を行っており、いつ誰が所持していたか把握できる対策を取っています。教室や実習室の鍵については、貸出簿による管理を行っており、こちらもいつ誰が使用したかを把握し、紛失が起こらない対策を取っています。
 個人情報の保護については、教職員が使用するパソコンは全て学校専用のサーバーによって管理しており、個人のIDとパスワードを入力しなければ操作ができない仕様となっています。
 上記のように本校では、人的・機械的な施設の管理を行っており、今後も厳重な管理を継続していきます。

●教室、実習室配置とその他

 教室は十分なスペースが確保され、大きな窓から入る日光が眩しすぎるほどよい環境で学習ができています。実習室においても3~4人に1ベッドが確保され、演習もしやすく物品等も揃っています。ゼミ室や共有スペースでは、学習や面談等学生が安心して利用しやすい状況であり、ハード面はとても恵まれた環境だと思います。しかし、実習室の物品の配置においては、煩雑となっており改善が必要だと思います。次年度は、学生自身が主体的に動けるような物品の管理方法や配置等ソフト面の充実をはかっていきたいと考えています。
 また、移転後、機器類の使用に不備が生じたりしましたが、近森会グループのシステム管理室の方の迅速な対応で学習に支障をきたすことなく現在に至っています。
 その他、課題としては教室や実習室等での電気(暖房や冷房を含め)等において節電や節約の意識が低いと思われました。現在、学校全体で取組として、教職員や学生のコスト感覚への意識付けをしています。

●経費削減の取り組み

 看護学校は、建物維持に膨大な経費を必要とします。その中でも水道光熱費は建物維持経費の多くを占めているため、継続的に経費節減が求められます。
 効果が得られた下記節減策を今後も継続実施します。

  • 冷暖房は集中パネルで一括管理
  • 冷暖房消し忘れ防止策として、定期的に自動「切」設定等

 コストに絶対的な正解はありませんが、相対的に妥当かの確認作業は常に必要です。そのためには、教職員がコスト意識を持ち続けることが何よりも大切であると考えます。
 しかしながら、学校として学びやすい学習環境の整備は必要であるため、過剰な経費節減とならないようバランスを考えた取り組みを継続していきたいと思います。

●危機管理対策

 平成29年度は3学年が揃い、約120名の学生が本校に在籍する事となりました。火災や災害に対し、120名を越える学生が安全かつ適切に避難できるよう、平成29年度も引き続き火災・災害時の避難訓練を実施しました。
 平成29年9月8日、火災を想定した消防訓練を実施しました。内容としては火災時の避難経路と避難場所の確認、水消火器や消火散水栓を使用した訓練を行っています。10月には学園祭が開催されましたが火を使う出店もあり、不測の出火に備え学生も消防設備が使用できるよう、毎年9月に消防訓練を計画しています。
 平成30年4月16日、地震を想定した防災訓練を行いました。内容としては、地震発生時の安全確保、避難誘導と避難場所の確認、負傷者への対応といった訓練を行いました。新入生は入学した直後という事もあり、地震発生時の避難場所を周知するという意味では有意義な訓練であったと思います。
 平成30年度は下記の環境整備、訓練を行いたいと考えています。

  • 1)各フロアへ火災、災害時の避難経路図を設置
  • 2)職員室内に緊急時の行動を示したアクションカードを設置
  • 3)備蓄品、緊急時使用物品の保管場所の掲示
  • 4)負傷者搬送を想定した避難訓練

 今後も校内・校外を含め、危機管理について情報収集と対策を行いたいと思います。

●各種会議開催

 会議は、毎朝のミーティング、教職員会議と教務会議は毎週火曜日、運営会議を2ヶ月に一回、入試委員会、実習指導者会議は必要時に行ないました。年度半ばから臨地実習が開始したこともあり教員全員参加は困難となり情報共有のあり方が求められました。

3. 教育の質保証に向けた取り組み(FD活動を含む)

 近森病院附属看護学校が順調に機能し学生の目標達成に向けた教育を行なうためには、近森会グループの支援と看護学校の高質な教育の提供です。そのためには、教育方針に則り目標達成に向かった運活で効果的な運営が必須です。本年度は、3学年の学生が揃い、卒業・看護師国家試験に向けた完成年度の年であったため、教職員が一丸となり綿密で具体的な計画でFDを実施しました。
 次年度に向けての課題は、学校カリキュラムの抜本的な見直し・修正、臨地実習計画の具体化、国家試験受験に向けた課題の取り組み、学生の進路指導、外部評価に向けたマニュアル作成などがあります。

■専任教員の質向上に向けた取り組み

 看護教育の核となるのは専任教員であり、専任教員の質向上は看護学校に課せられた課題です。本年度は、実習指導に必要とする専門分野の研修や教員の資質向上を目的とした研修会への参加など、教育実践力の向上を図りました。全教員は、基礎実習、臨地実習開始前に臨床研修を実習担当病棟に分かれて実施し、最新の看護や生活援助技術、病棟環境等の把握に努め実習指導能力の向上を図りました。
 8月には全教員対象の恒例となった夏季合宿を行い、教授方法や学生指導上の課題について検討を重ねました。また、マネジメント能力や指導力、研究能力の向上には、教員の専門領域で開催される各種学会や研修会に参加し能力向上を図りました。

■国家試験対策

 看護師国家試験に向けた取り組みは1年次から始まっています。1年生は、夏休み明けの9月に「人体の構造と機能」に関する模擬試験を実施し知識の確認を行ないました。後期(2月)には、企業企画の模擬試験を実施し、学生個々の1年次成績を振り返る機会としました。

 2年生は、7月、1月、3月の3回模擬試験を行うと同時に、臨地実習の合間を活用し看護師国家試験の過去問題に取り組みました。国家試験に向けた取り組みや指導においても計画的に行なう予定です。