臨床心理室

主任 和田 寿美

■はじめに
 2017年(平成29年)は、前年同様、常勤の心理士(以下、CP)3名、内訳として入院2名、外来1名という体制でスタートした。が、4月末に1名が突然の退職となり、5月以後2名体制となった。回復期リハビリテーション病棟4フロア(8ユニット)を、3・4階、5・6階担当で分担し、内1名は外来との兼務。前年までとは違う忙しさで過ごした1年であった。
 入院は、患者の状況に影響されるので業務量(対象者及び介入内容)の均一化は困難であった。しかも対応できる時間に限りがあるので、対応への優先順位をつけざるを得ず、調整に困難を来した。外来は予約制であるが、できるだけ早期に開始、負担を長引かせないように配慮すると、入院患者への介入が限られる、など時間の配分も困難であった。全体的な調整が必要との思いがひっかかりつつ、とにかく、介入対象の“患者及び家族のためにできることをしよう”という合言葉で乗り切った1年であった。

■実績
 実績は、下記(図1~図5)の通り。
 入院、外来の新規依頼件数を図1に示す。4月に入院での新規依頼件数が0となっているのは、1名減の予定が明らかとなり、業務量の調整として周囲の配慮があったといえる。中途からの1名減であるが、年間でみると前年比110%という結果であった。これまで3名体制で行っていた業務への信頼を損なわないよう何とか2名で踏ん張った結果と考えている。しかし、それも周囲の理解があってこそといえる。CP以外の職種はユニット配属もしくはフロア配属がなされているが、CPは都合上1名が2フロア担当のため、わざわざ声を掛けて情報交換する必要があり、日々の業務の状況がわからないので声を掛けづらい、という事態がありうる。同じ空間で過ごしておれば些細な内容もリアルタイムにやりとりできるはずが、それが難しいという点では他部署に迷惑を掛けており、同時に協力に感謝、である。
 図2は、入院での新規介入患者の疾患内訳を、同様に図3は、外来での新規介入患者の疾患内訳を示す。入院では、脳血管障害が約70%を、次いで頭部外傷が23%を占めた。外来では、脳血管障害が55%、頭部外傷が40%を占めた。昨年に比べ、やや頭部外傷の割合が減少した。
 図4は、施行した心理検査数を示す。対象者である患者の精神心理機能及び高次脳機能の状態を把握するために有効な手段のひとつであるが、それらの心理検査の結果だけで障害や問題の有無を判断するのではなく、そのひとを全体として理解することが目的である。発症、受傷までの生活歴(家族関係、教育歴や職歴など)、行動観察、面接などの情報と合わせて、それらを統合し解釈することが重要である。
 図5は、月別ののべ介入件数を示す。月平均では、入院が118件、外来は83件であった。介入した実人数の月平均では、入院が15名、外来が30名であった。

 高次脳機能障害を抱えた場合に、病識(病気や障害に対する認識)を持てない、持ちにくいとの症状を呈すことがあるが、更に病院という“特別な”環境で過ごしているとつい、“家に帰ったら治る、時間が経てば治る”と思っている(期待している)ことが多い。患者心理からは当然の反応であるが、住み慣れた自宅に帰ってから、ようやく病前との差異に気付き困惑するなどの事態が起こることがある。入院中の介入から、それらが予想される場合には、引き続き外来での介入となることがある。変化した事態に直面するのは家族も同様であり、その場合には、家族が高次脳機能障害と患者自身をより理解する必要があり、家族も面接の対象として介入することがある。
 また、社会的役割の獲得(再獲得)も重要な支援テーマである。患者自身に現状の気付きを促しながら、周囲に理解して貰う必要があれば、その対応を行う。院内の多職種との連携だけでなく、休職中の会社や障害者職業センター、ハローワーク等の外部機関との連携も図っている。
 自動車運転の再開への支援も、作業療法士、言語聴覚士との協働で、支援を継続していく。

■おわりに
 心理士にとって2018年は、大きな節目となりうる。というのも、この秋に初めての国家資格である『公認心理士』の第1回試験が開始されるためである。医療分野で働く以上必須であり、これまでの諸先輩方とともに切望してきた資格である。通常の業務を行いながら、並行して資格試験勉強というのは厳しいが、得難い経験として味わいつつ、取得に向けて努力していく。それと同時に、これまで曖昧にしてきた部分や課題について、明確化と整備を図っていく。
 発症、受傷によって脳、身体、心に変化を来すことがあるが、それでも“そのひとらしく”生きていくことを支援していくことを、これまでもこれからも続けていく所存である。

  • 図1図1
  • 図2図2
  • 図3図3
  • 図4図3
  • 図5図3