作業療法科

科長 中島 美和

【はじめに】
 平成29年は昨年に引き続き、回復期リハの目標である「対象者の機能・回復の促進、生活障害の改善、円滑な家庭および社会復帰」の実践に向け取り組んだ。ICFにも示される心身機能・活動・参加の側面とあわせて、環境や個人因子も踏まえた包括的アプローチの重要性が示される中、作業療法士がどのように関わるべきか考える1年となった。

【運営実績について】
1.人員について
 人員は昨年4月と比較すると8人減となり、各病棟11~12名(1ユニット5~6名)、外来配属は3名体制とし、ユニットのセラピストをまとめる療法士長は3名の主任を選出した。新入職員はなく2年目~5年目のスタッフが4割を占めるが、結婚、出産、子育てなどライフステージの変化を迎えるスタッフが多く、相互のサポートが必要な場面が増えてきている。
 また、ハビリテーリングセンターから作業療法士出向の依頼を受け、5月よりスタッフ1名を人選した。

2.患者数について
 昨年退院した患者709名(新規:678名、継続41名)のうち、作業療法は708名の依頼箋が出ており、昨年同様ほぼ全例に実施している。対象患者の疾患別内訳は図1に示す通り、約8割は脳血管疾患を占めている。
 毎月の実施単位数は図2に示す通りで、稼働率により増減はあるものの、365日の勤務体制で作業療法を提供している。患者一人あたりの作業療法は3.0単位であり、昨年よりわずかに低下した。
 外来患者の実施者数は、実施単位は図3に示す通りで月ごとの変動はあるが、例年にくらべ減少傾向にあった。

3.事業計画について
 回復期リハでは急性期医療を終えた患者のリスクや障害の重度化に対応できる体制があり、さまざまな職種がチームを組んで心身の機能回復、生活の再構築へと取り組んでいる。当院では脳卒中をはじめとする中枢神経疾患患者が多く、運動麻痺や高次脳機能障害など多様な障害の回復段階をとらえ、段階や状況に応じた安全かつ適切なケアや治療を提供することが重要となる。
 我々は評価の始まりである入院日評価に全例介入し、ベッドサイドの環境調整やケア方法、転倒や褥瘡対策など多職種で取り組み共有している。特に朝昼夕の食事時間帯は、前後に移動・排泄・整容などのADLを遂行することが多いが、日中の訓練との格差が生じるため、早出遅出勤務での関わりを継続している。
 また訓練室では、生活動作を遂行していく上で必要な基礎訓練、模擬訓練、応用訓練が行われ、より患者の主体性を高める関わりとフィードバックを重視している。上肢麻痺に対する基礎訓練では器具を用いた訓練や徒手療法に加え、上肢ロボット(AR2)を活用し機能改善とともに生活での使用範囲拡大に努めている。また基礎訓練を生活に汎化できるよう、生活に直結した課題を反復・提案し、段階に応じた麻痺手の使用を促進している。
 2DKのADL室では退院後の生活を想定した調理・掃除・洗濯訓練を行い、調理に栄養指導が必要な場合は管理栄養士にも協力を依頼している。ADL評価室では自宅の環境に合わせて手すりの位置が変更でき、家族への動作指導や介助のポイントを伝達している。
 社会活動に必要となる自動車運転の獲得に向け支援した患者は全体の2割程度で、自動車運転チーム中心に作成した支援マニュアルを活用し、机上評価、ドライビングシミュレーターでの模擬練習、停止車両評価、教習所や適正検査への連携など、統一したアプローチに努めた。
 平成29年4月の診療報酬改定では施設外訓練の必要性が認められ、退院後の生活を想定した屋外環境で買い物や公共交通利用の訓練を行う機会が増えてきた。今後は屋外でも目的に沿った訓練が安全に実施できるよう、手順の見直しと個々の対応力向上に向け取り組んでいく。
 このように、回復期作業療法では心身機能の回復促進、ADLやIADL自立度の向上など、退院後の生活を予測した幅広いアプローチを担っている。昨年に引き続き、主任を中心とした専門チーム(ADL/IADL、高次脳機能、自動車運転、上肢ロボット、CI療法)を編成し、より専門性の高いアプローチの実践に向けて活動した。それぞれのチームでは年間計画をたて、必要な評価の見直しや導入、マニュアルの作成やデータ蓄積、物品の管理等を行い、アプローチの質向上と業務改善に取り組んでおり、今後も継続していく予定である。
 近年、回復期では体制整備や量的確保だけでなく、ADL改善の実績や成果が重視されている。これらを実現させていく上で、機能訓練の成果を病棟生活へ汎化し定着させていくよう、多職種との目標共有ときめ細やかな協働が重要となってくる。また活動と参加へ繋げていく上で、患者の意向を十分とらえ、個人や環境要因を考慮した「将来の生活像」を具体的に描いていく作業が重要であり、作業療法士の果たすべき役割は大きいと思われる。
 職員の教育面では教育ラダーの活用、新人教育プログラム、訪問リハ研修、主任・リーダーによる個々の臨床指導に取り組んだ。昨年に引き続き各階で実施した症例検討会は、個々の症例へのアプローチを整理し討論を重ね、臨床力を高めていく機会となった。また、主任を中心とした専門チームの活動は教育的側面も兼ねており、科内勉強会や研究発表、出張なども計画的に実施することができた。しかしスタッフ個々の知識、技術など臨床力には格差があり、臨床マニュアルや勉強会の方法については今後の課題である。

【おわりに】
 回復期は患者の生活障害の改善を主軸に、機能や能力の改善に向けて様々な専門職がチームを組んで協働する場である。今後も作業療法士に期待される役割を再認識し、組織作りと臨床力向上、業務改善に取り組んでいきたい。

  • 図1図1
  • 図2図2
  • 図3図3

業績

■学会発表

学会名 発表日
演題 演者
回復期リハビリテーション病院協会 第29回研究大会in広島 2017年2月10日~11日
当院の初回転倒におけるリスクレベルとスタッフ要因の関係性について 西内 めぐみ
作業に焦点を当てる事で在宅の役割を再獲得した一症例 原 康平
第15回高知県作業療法学会 2017年5月20日~21日
高齢の症例に対して座位訓練中心とした関わり
~ADL介助量軽減を目指して~
大坪 航希
記憶、注意障害を呈した患者の排泄動作へのアプローチ 里見 紘寿
視覚刺激取り入れた反復訓練により着衣動作の学習に繋がった一症例 佐藤 麻衣
失調、感覚障害、注意機能障害を呈した症例に対して自動車運転再獲得を目指した関わり 嶋崎 康平
第54回日本リハビリテーション医学会 学術集会 2017年6月8日~10日
当院におけるArm Rehabilitation Robot を使用した上肢訓練の取り組み 信國 達也