ER救命救急センター

救命救急センター長  根岸 正敏

救命救急センター指定から5年が経ちました

【診療体制】
近森病院救急部門は、2011年5月に高知県から救命救急センターに指定され、5年半が経ちました。救命救急センターの使命として、三次救急といわれる重症患者さんの受入れを行うのは当然のことですが、重症から軽症まで、救急車やヘリコプターで搬入される患者さんから、歩いて受診される患者さん(walk in)まで、あらゆる状態の患者さんを受け入れています。
救急車やヘリでの搬入患者さんは医師が、walk in患者さんは主にトリアージナース(院外、院内で訓練を受けた専任の担当看護師で、JTASというトリアージシステムに則り判断しています)が、緊急度・重症度から優先順位を判断した上で、救急専従医師による迅速な診断と治療が行われます。
初期診断・治療の後、必要に応じさらに専門医に引き継がれ、高度の入院治療が行われます。(=北米ER型救急システム)

重症患者さんの入院を受入れる救命救急病床は18床が認可されており、ほかにICU 18床、SCU24床、HCU16床、そして一般病棟と患者さんの状態に応じた病棟での入院治療が行われます。入院病棟の決定は、患者さんの病態を十分に把握した上で、担当医師、ベッドコントロールナース (*1:BCNS)、ERリーダー医師、ナースとの協議により決定しています。

救命救急病棟は、日勤帯はER医師が、また休日夜間帯は各診療科の応援も得て24時間専任医師が常駐する体制をとっています。

救急車の受入数は、ここ数年4,000件後半~5,000件で推移しておりましたが、2015年はついに6,000件を突破し、2016年には6,947件と過去最高を更新しました(図.1,2)。このうち入院が3,626件、心肺停止は113件でした。
また、応需率に関しては、昨年と比し著明に改善しており、最近では90%台後半を維持しています。応需率も現在まで増加傾向で推移しており(図.34)、この結果は、救急受入れのワーキンググループを立ち上げて救急担当の実務者が意見交換を行い、『救急の近森』として、これまで以上の協力体制を敷くことができたためかと思います。救急受入れ要請に対しては、対応病床が確保困難、救急車受入れが多数重なるなどの理由から応需できない症例もあり、さらに改善していきたいと考えています(図.5)。

患者さんの重症度別では、軽症(外来での処置、通院で可能)は約45%、中等症(手術や入院が必要であるが、一般病棟で対応可能)が約30%、重症(ICUなどの重症対応病床への入院を要する)が25%でした(図.6)。

ヘリポート完成後は、ヘリ搬送(高知県DRヘリ、高知県防災ヘリ)患者数も徐々に増加傾向で、2016 年は140件で、特に循環器系疾患、外傷症例が多くなっています(図.7)。

ERの救急専従医師は現在6名(根岸、杉本、井原、竹内、三木、山本)で、各診療科からの応援医師、研修医4~5名での診療体制をとっています。ほかに、walk-in対応の内科系医師2~3名とで、救急車やwalk-inのすべての救急患者に対応しています。再診処置のみの患者さんには、外科、形成外科、整形外科医師が午後から専門外来で対応する体制に変更となりました。

ERは、2014年9月より全日勤帯には救急科医師が常駐し、夜間は内科系、外科系医師による当直体制ではありますが、救急科、各診療科ともに直ちに対応可能なオンコール体制をとり、24時間体制でバックアップしています。

また、2007年に開始したドクターカーは、救急部専従医師および救急救命士で対応しており、2016年は40件の出動がありました(図.8)。循環器疾患や中枢神経疾患など緊急度・重症度ともに高い症例が多く、運用開始以降ほぼ同様の傾向となっています。

看護師は、森澤 救命センター看護師長、町田 ER看護師長を中心に、外来部門であるER、救命救急病棟、また放射線部門看護師などが、一丸となって看護にあたっています。手術部とも密な連携を取り、ERでの超緊急手術などにもスムースに対応できるよう、体制強化に努めています。
院内救急救命士は7名体制で、医師や看護師とともにドクターカーやヘリ搬送患者受入れを中心として活動し、さらに救急患者さんの初期対応の業務も行っております。

*1・・・「ベッドコントロール」=「病床管理」といわれる。 空いているベッド数や退院予定患者数を把握し、スムースな入退院を可能にするため、またより多くの患者さんに安全で質の高い医療ケアを提供するための病床管理担当看護師を「ベッドコントロールナース」という。

  • 図1
  • 図2
  • 図3
  • 図4
  • 図5
  • 図6
  • 図7
  • 図8

【統計資料】

図1:年別の救急車搬入件数(1993年~2016年)
図2:2016年 月別救急車搬入件数
図3:2016年 月別救急車応需率
図4:2015/2016年 月別救急車応需率比較
図5:2016年 救急受け入れ要請数
図6:2016年 救急車受け入れ患者重症度

【教育】
ERスタッフを中心に、AHAのBLS、ACLSコース(米国心臓協会心肺蘇生)、ICLSコース(救急医学会心肺蘇生)、JATECコース(初期外傷診療)、JMECC(日本内科学会認定内科救急・ICLS講習)やDMAT研修(災害医療)などの各講習会にもインストラクターとして積極的に参加しており、JPTEC(病院前外傷救護)は、例年通り2016年1月に近森病院コースも開催しました。またJATECコース(初期外傷診療)を近森病院、高知赤十字病院が事務局として開催し、全国から多くのスタッフ、受講生の参加がありました。

地域医療講演会でも、救急や災害関係の講演も行い、他にも定期的な勉強会を行うなど、日々研鑽を積んでいます。

【災害関係】
2010年に高知県から災害拠点病院に指定され、その役割を果たすために、近森病院の災害対策委員会、高知県および高知市の災害関係機関とも連携をとりながら、2016年も各種の災害訓練や講習会等に参加しています。
高知県DMAT研修、MCLS(多数傷病者対応)研修にも、スタッフや受講者として参加しています。
高齢化の最前線をゆく高知県でも、急性期病棟の再編を迎えようとしており、救急医療は大きく変貌する可能性があります。そのような中で複雑化、多様化する患者さんにも十分に対応可能な高度の救急医療の提供が求められています。近森病院 救命救急センターでは、地元高知県のニーズに合った、そして何よりも質の高い、必要とされる救急医療を追求してまいります。

学会発表

学会名 発表日
演題 演者
第32回日本救急医学会中国四国地方会 2016年5月20~21日
「イノシシ咬傷の3例」
  • 森本 暢
  • 山本賢太郎
  • 三木俊史
  • 竹内敦子
  • 井原則之
  • 杉本和彦
  • 根岸正敏
第44回日本救急医学会総会・学術総会 2016年11月17~19日
「t-PA静注療法を念頭において診療を開始したが急性大動脈瘤解離と判明した脳梗塞症例の検討」
  • 三木俊史
  • 根岸正敏
  • 井原則之
  • 竹内敦子
  • 山本賢太郎
  • 杉本和彦
  • 西本陽央
「高知県における薬剤師を対象とした災害医療・薬事研修の取り組み」
  • 井原則之
  • 山本賢太郎
  • 三木俊史
  • 竹内敦子
  • 杉本和彦
  • 根岸正敏
「熊本県北部医療圏におけるDMAT拠点本部活動」
  • 廣橋伸之
  • 井原則之
  • 明比 俊
  • 浜見 原
  • 田治明宏
「ER型救命救急センターからみた、後期高齢者患者(75歳以上)救急搬送の現状と問題点」
  • 杉本和彦
  • 山本賢太郎
  • 三木俊史
  • 竹内敦子
  • 井原則之
  • 根岸正敏