麻酔科

部長 楠目祥雄

2016年麻酔科年報

活動状況
2016年、秋に人事異動がありました。即ち、10月に河野 宏之先生が千葉県の亀田総合病院へ転出し、代わりに香川県立中央病院から池田 智子先生が入職しました。河野先生は2014年9月に入職以来、麻酔科診療の各方面に活躍してくれました。学術活動への意欲も旺盛で、いくつかの成果も生みました。これからのご活躍を祈念しております。池田先生は既に多くの経験と資格を持っており、入職当初から当科の運営に大きな戦力となっています。しかし、当科のマンパワーに大きな改善はなく、3名の常勤医のほか、院内痛みのクリニック科の須賀 太郎先生やERの山本 賢太郎先生、以前よりお願いしている昭和大学横浜市北部病院麻酔科 小坂 誠教授をはじめ多く外部からの応援の先生方、さらには4月からは岡山大学と香川大学よりのご助力も得て、何とか手術麻酔を管理してきました。
その甲斐あって、近森病院手術室の麻酔科管理手術数実績は今回も前年を少なからず上回りました。2016年の手術室管理総手術症例数(中央手術室以外で行われても、手術室看護師が関与したものを含める)は3656例で、前年比237例(6.9%)増、麻酔科管理症例は2228例で、前年比137例(6.6%)増でした。麻酔科管理2228例の内訳は別表に示しますが、その特徴を以下にまとめます。

■1.  全身麻酔が2171例で当科全管理手術麻酔全体の約97%を占めています。これはここ数年の傾向と変わりありません。当院では「脊髄くも膜下麻酔(いわゆる腰椎麻酔、半身麻酔)の適応となりにくい人工透析、重症心疾患、糖尿病、意識障害、認知障害、精神障害等の合併症例が大変多いこと」、「抗血小板薬常用の準緊急手術患者が大変多いこと」、「麻酔科医の人員不足があり、脊髄くも膜下麻酔のうち低リスクのものの多くを手術担当科(主に整形外科)で行ってもらっていること」などが原因となっています。

■2.  上記と同様の理由で全身麻酔に硬膜外麻酔を併用する症例が大変少なくなりましたが、その代わりに、全身麻酔に伝達麻酔(エコーガイド下末梢神経ブロック)を併用する症例がさらに増加しました。全身麻酔のうち67例(3.1%)に硬膜外麻酔を併用したのに対して、伝達麻酔は810例(37.3%)に達しました。伝達麻酔は出血や感染に伴うリスクが少なく、硬膜外麻酔の適応にならない症例でも大きな問題なく施行できること、そして神経ブロック用の解像度の高い超音波エコー装置が導入されたことが大きな要因となっています。この技術を元に、さらに全身麻酔自体が大きなリスクとなるような重症心疾患等の超ハイリスク症例36件においては、伝達麻酔単独で或いは最近保険適応となったプレセデックス®による鎮静を併用して管理しました。

■3.  192例の開心術(開胸胸部大動脈置換術42例を含む)を管理しました。当科では、2000年の心臓血管外科開設当初からFast Track Method(術後早期回復を目指した麻酔法)を取り入れるなど、良好な手術成績(心臓血管外科ページ参照)に永く貢献しています。
また、2014年末より当院で行われてきたTAVI(経皮的大動脈弁植え込み術)は当年47件が行われ、以前のものと合わせて通算87件において、全て成功裏に施行されました。チームワークが大変重視されるTAVI治療において、当科は安定した麻酔、繊細な循環管理でチームに大きく貢献しております。

■4.  緊急手術麻酔症例は296例で、全麻酔科管理症例のうちの約13%でした。当院は高知県の救急医療の拠点病院のひとつであり(救命救急センター指定)、頭蓋内出血、大血管破裂、急性冠症候群、急性腹症、開放骨折など、緊急手術を必要とする症例を多く受け入れています。

■5.  麻酔科管理症例の約52%が術前麻酔リスク評価で高リスク(ASA-PS 3以上)でした。当院は地域医療支援病院であり、そしてER、ICU、内科各科の充実により循環器疾患を初めとするリスクの高い合併症を有する手術症例が他施設からの紹介を含めて数多く搬送されてきております。

■6.  超高齢者(86歳以上)の症例が293例と全体の約13%ありました。高齢者が多いのは本県自体の特性でもありますが、当院がリハビリ病院をグループ内に併設し、さらには精神科も充実している地域医療支援病院ということで、多くの高齢者の骨折症例(特に大腿骨頸部・転子部骨折)が集まってきているということが、特に大きな要因です。

これらに対して当科は上述のメンバーで上記のすべての症例を大過なく管理してきております。ひとえに理事長はじめ病院経営陣のご理解、さらには周りのスタッフのご協力の賜物です。当手術室には最新のモニター類などの医療機器が充実しており、重症疾患の管理に対応できています。また、これらの機器の保守管理・運用に急性期CE(臨床工学士)チームが積極的に関与してくれており、麻酔科医の大きな助けになっています。手術室看護師は多くの手術を途切れなく運用するのに十分な数が配置されておりますが、さらに麻酔科医専用に介助してくれる麻酔補助看護師の存在は、手術麻酔の安全・効率的な運用の大きな支えとなっております。
さて、このように随分大変そうに見える麻酔科ですが、各科各部署のご協力や外部からの先生方のご支援を受けながら、日々の業務を極力平日日勤帯に集中させることにより、スタッフのON-OFFをはっきりさせることに大変心を砕いて参りました。これからも、無理のない運用を続けることが肝要かと考えております。引き続き、関係各方面のご理解・ご支援をお願い致します。
もしこの記事を見られている転勤希望の麻酔科医の先生方、或いはこれから麻酔科医を目指される研修医の先生方がおられましたら、是非当科への入職をご検討下さい。これから手術麻酔のスキルアップを図りたい若手の先生方にとっては、(特に心臓血管外科症例を中心に)ためになる症例が豊富です。また、少し仕事量をセーブしていきたいベテランの先生方や家庭をお持ちの女性の先生方に対してもそれぞれのご都合に合わせて十分な配慮をしております。2012年夏より広く明るくなった医局で、自由な空気のもとで頑張っていただける麻酔科の先生方のご加入を心からお待ちしております。見学も歓迎しております。お気軽にご連絡下さい。当科は、岡山大学麻酔科の関連施設であり、幾人かのスタッフの派遣を受けておりますが、職員枠はまだはるかに残されており、大学の医局に属する必要はありません(当院参加の麻酔科専門医研修プログラムも現在「岡山大学プログラム」のみですが、大学入局の必要はありません)。

当院は2010年に社会医療法人、2011年には救命救急センターに認定されました。これらにより当院の公益性がさらに高まり、ますます我々麻酔科医の役割も大きくなってきました。当科ではなお一層気を引き締めて頑張っていく所存ですが、今後とも関係各部署の皆様方の変わらぬご支援ご協力を宜しくお願いいたします。

【資料】 ※こちらをクリックするとPDFが開きます22
表1 麻酔法別分類
表2 依頼科別分類
表3 年齢性別分類
表4 麻酔リスク度(ASA-PS)別分類
表5 手術部位別分類