消化器外科

科長 坪井香保里

2016年度の消化器・一般外科における手術件数は549例であった。
2014年度が461例、であり、2015年度が494例であり、年々増加の傾向にある。

胃への手術(53例:悪性42例、良性11例)

胃癌に対する手術がほとんどである。開腹手術32例、腹腔鏡下手術21例。

当院の特徴として基礎疾患を有する高齢者の進行癌が多く、例年同様に緊急・準緊急手術もあった。また、鏡視下手術も少しずつ増え、前年度よりも12例多かった。適応を見極めて今後も症例を積み重ねていきたいと思っている。

大網・小網への手術

胃潰瘍・十二指腸潰瘍に対する手術として、大網充填や大網被覆術が施行される。今年度は十二指腸穿孔に対する腹腔鏡下手術の1例のみであった。

潰瘍穿孔の場合は保存的加療も可能である場合が比較的多く、発症時期、全身状態、理学所見、血液・画像所見、年齢や基礎疾患の有無などの患者背景から判断して治療方針を決定する。

潰瘍穿孔の原因としてはヘリコバクター・ピロリ菌感染や非ステロイド系抗炎症剤などがあるが、ヘリコバクター・ピロリ菌感染の場合は除菌治療が行われる。

大腸への手術

  1. 結腸への手術(57例:悪性37例、良性19例)
    *腹腔鏡下手術;15例
  2. 直腸への手術(17例:悪性12例、良性5例)
    *腹腔鏡下手術;7例

大腸癌は男性では死亡率3位、女性では1位の疾患です(2014年統計)。

大腸癌の好発部位としてはS状結腸と直腸であり、この両者で70%を占めるとされている。当院では今年度も約80%がS状結腸癌あるいは直腸癌であり、全国とよりやや多い傾向にあった。

大腸癌の場合、進行して腸閉塞や穿孔を合併してから医療機関を受診する場合もある。イレウス管留置やステント留置して減圧後に待機的或いは期的手術が可能なこともあるが、人工肛門(ストマ)造設を伴う緊急手術が必要となる場合もある。早期発見が望まれるが、大腸癌においても進行癌が多いのが現状である。

今年度も緊急手術や高度進行癌を除いては症例に応じて腹腔鏡下手術を選択しており、今後も症例を積み重ねていく予定である。

小腸への手術(45例:悪性0例、良性45例)

小腸の病変は腸閉塞や遺物による消化管穿孔などが今回も多かった。腸閉塞は保存的加療で改善されない場合や索状物による絞扼を疑った場合は手術の適応となる。遺物穿孔は基本的には緊急手術となる。

一方、CT・MRI・小腸内視鏡・カプセル内視鏡検査といった画像診断の進歩に伴い、癌やGISTを含む腫瘍性病変の診断のもとに外科的切除となる場合もあり、腹腔鏡下手術のよい適応であり、2016年度は13例が鏡視下手術であった。

尚、大腸、小腸の疾患の中には、便通異常や併存する循環器疾患あるいは全身状態不良に基づく腸管の血流障害(虚血、壊死)や穿孔もしばしば認めた。

虫垂炎手術(31例;緊急手術19例、待機手術12例)

近年は急性虫垂炎保存的加療後に待機手術を行う症例が増加していたが、2015年度以降は緊急手術、とくに腹腔鏡下で緊急手術を行うことが増えつつある。

待機手術12例は全て腹腔鏡下手術が行われ、緊急手術の場合も15例が腹腔鏡下手術で行った。腹腔鏡下手術は準備などで煩雑な印象があるが、実際の手術時間は従来の開腹と同程度であった。また、体型によっては(特に肥満)腹腔鏡手術の利点をより発揮できることも多く、感染のリスクも少ないことも特徴のひとつとしてあげられる。

ヘルニア根治術(71例;鼠径46例、大腿7例、臍5例、腹壁9例)

ヘルニア手術は例あったが、そのほとんどが鼠径ヘルニアに対する手術であった。

術式の選択として腹腔鏡下修復術(TAPP)も近年行うようになっている。診療報酬の改定がきっかけとなった一面もあるが、重要なことは患者さんにとってもっともよい医療を提供するということであり、これは忘れてはならない。

胆管、胆嚢への手術(145例)

今年度も胆嚢結石症に起因する急性/慢性胆嚢炎に対する手術がほとんどであった。腹腔鏡下胆嚢摘出術は107例、開腹胆嚢摘出術が36例であった。

急性胆嚢炎の場合、発症からの期間と炎症の程度、患者背景を含む全身状態から早期手術が選択される場合とドレナージ後に待機手術を選択する場合がある。

待機手術、予定手術の場合はほぼ全例に腹腔鏡下胆嚢摘出術が行われた。緊急あるいは準緊急であっても腹腔鏡下胆嚢摘出術を術式として選択することが多いが、状況よっては開腹手術に移行せざるを得ない場合もある。

肝臓への手術(15例;悪性11例、良性4例)

慢性ウイルス性肝炎やアルコール性肝障害に合併した肝細胞癌や転移性肝癌に対してがほとんどであった。

肝細胞癌は9例が切除、2例が腹腔鏡下ラジオ波焼灼術(RFA)であった。腹腔鏡下RFAは経皮的RFA困難例に対して行われた。

今年度は外傷に伴う肝損傷の手術症例はなかった。肝外傷の多くは動脈塞栓術(TAE)を含むIVR(Interventional Radiorogy)治療が選択され、軽快することが多い。しかし、損傷の状態や全身状態、IVR後の経過によっては手術が必要となる症例もある。

膵臓への手術(9例;悪性7例、良性2例)

膵頭十二指腸切除7例、体尾部切除2例であった。

悪性疾患である膵癌や前癌病変ともいえるIPMNは無症状で経過することが多い。特に膵癌の場合、症状を認めた時には進行癌となっている場合が多く、予後も不良な癌腫であるが、唯一治癒を望める手段が手術である。

膵頭十二指腸切除術は侵襲の高い手術であり、年齢や基礎疾患の有無など患者背景を見極め、受け止める姿勢が大事である。そのためには患者さんやご家族に十分な説明を行い、理解を得ることが重要である。


外科医の役割は手術治療だけではない。手術以外の治療選択後のフォローや術後のフォローも重要である。化学療法もその一つであるが、胃癌・大腸癌・膵癌においては最近になって新たな治療方法が確立されるなど、新しい知識を得ることも必要となってくる。また、各科と連携し合って適切な治療方針を選択し、実施していくことが重要となってくる。

腹腔鏡手術の経験も蓄積されつつある。昨年度から3D内視鏡が導入され、後も「腹腔鏡」を選択する機会が増すと思われる。ただし「低侵襲」イコール「低リスク」ではなく、適応となる症例を見極めて実践することが肝要である。

また、実臨床・それ以外における研修医の教育の充実、各部署との連携、学会発表、論文発表も行っていけるよう今後も努力していきたいと考えている。