心臓血管外科

文責 佐野俊和/ 承認 入江博之

■2016年のまとめ

2010年から取りかかっていた5カ年計画での近森病院改修工事が終了し、新リハビリテーション病院の新築、さらにオルソリハビリ病院の引っ越しと看護学校の開校など近森病院では多くの変革がなされてきております。近森病院の急性期病床も338床から452床へと増床し、中四国でも有数の病院となったとともに、今まで受けいれることができなかった多くの患者さんを受け入れる体制が整ってきました。

当科では2014年12月よりTAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)を行っており、病床数増加と相まって年々手術件数も増加の一途を辿っています。2016年の年間手術症例総数は、498例と過去最高であり、この2年間で150例以上も手術件数が増えたこととなりました。そのうち、開心術は209例、胸部大動脈手術は45例、腹部大動脈手術は46例で、心臓・大動脈手術が総計で300例と、どの分野でも手術件数の増加を認めました(グラフ1)

TAVIは2002年にヨーロッパで開始され、2013年10月より日本でも保険治療が可能となりました。TAVIというのは人工心肺を用いない大動脈弁のカテーテル治療であり、高齢化が進み、高侵襲を伴う従来の外科的大動脈弁置換術に耐えられない患者さんへの、低侵襲での治療を可能にしました。当院では2014年12月にTAVIを行って以降、今まで手術が受けることができなかった多くの患者さんを治療することができ、年々TAVI手術も件数も「増えております。現在では完全独立施設に認可され、国内でも有数のTAVI施設となり、まさに近森病院が提唱する診療科の垣根を超えたチーム医療を体現することができ、一致団結して診療に取り組んでおります(写真1)。ご紹介いただいた先生方には改めて御礼申し上げるとともに、今後もみなさまに安心して治療を受けていただけるよう、全力を尽くしていく所存であります。

心臓手術は、高侵襲を伴う手術が多く、術後早期リハビリテーションを行うことの有用性は多くの論文で報告されています。運動耐容能の改善・術後合併症の予防・譫妄の予防・QOL(生活の質)の改善・再入院率の減少または予後の改善など、その有用性は多岐にわたります。当科でも開設後より早期リハビリテーションに力を入れており、医師・看護師・理学療法士を中心に各診療科で連携を取りながら一人一人の患者さんに即した早期リハビリテーションを行っています。代表的な心臓手術である冠動脈バイパス術(CABG)術後の手術室抜管は、緊急手術を除くとon-pump及びoff-pump症例で95%、100%となっております(グラフ2)。手術の翌日に食事ができた患者さんはon-pump及びoff-pump症例で同様に95%、100%でした(グラフ3)。当日立位リハビリは、on-pump及びoff-pump症例で57%、50% (グラフ4)、翌日歩行率はon-pump及びoff-pump症例で77%、100%でした(グラフ5)。これらのデータからもわかる通り、当科では、多くの重症患者がいる中、質・量をともに高水準で維持した医療を提供できていることがわかります。また、待機的な冠動脈バイパス手術(CABG)では、高齢で貧血や低体重などの危険因子のない限り、88%の患者さんは輸血せずに退院の日を迎えられています。危険因子を有する患者さんでも、54%の人は輸血を受けずにお元気に回復しておられます(グラフ6)。特に腹部大動脈瘤の手術でも、ほとんどの患者さんが輸血をせずに退院されております。

グラフ1

近森病院心臓血管外科年間手術件数

グラフ2

抜管率CABG待機手術2000.7-2016

グラフ3

食事率CABG待機手術2000.7-2016

▲グラフ1 ▲グラフ2 ▲グラフ3

グラフ4

立位率CABG待機手術2000.7-2016

グラフ5

歩行率CABG待機手術2000.7-2016

グラフ6

無輸血(RBC)率待機手術2000.7-2016

▲グラフ4 ▲グラフ5 ▲グラフ6

■2016年の人事異動

人事の面では、高知大学を卒業し、初期研修から当院で勤務をされ、当科で2年に渡って従事されていた衣笠由佑先生が4月から聖マリア病院での外科研修を開始いたしました。また同様に当院での初期研修を終え、姫路赤十字病院で外科研修を修了された田井龍太先生が、以前よりも一回りも二回りも成長した姿で当科へ帰ってこられました。岡山大学病院との関連もあり、週1回佐野俊和先生も非常勤医師として診療されております。これにより、スタッフ3名(入江博之、池淵正彦、手嶋英樹)、後期研修医2名(田井龍太、宮本陽介)の合計5人体制で診療を行っています(写真2)

 

■2016年のイベント

2016年は手術件数の増加からもわかる通り、手術に追われる日々を過ごしていました。ですが、その中でもなんとか当科恒例である春のお花見を開催することができ、皆様の熱い要望になんとか応えることができたかと思います(写真3)。忙しい時期ではありましたが、お花見の準備のために日々奔走してくださった皆様、ありがとうございました。

5月の米国胸部外科学会及び病院見学旅行ですが、第16回目の参加者は、入江博之(心臓血管外科部長)、河野宏之(麻酔科)、宮本陽介(当科医師)、岩本奈々、尾崎若菜(ともに手術室看護師)でした。ニューヨークで毎年行われているアメリカ胸部外科学会のMitral Conclaveに参加し、みなで現在の最先端の医療・治療に対する研鑽を深めました。病院見学には、過去にも訪問歴のあるコロンビア大学を訪れ、中好文先生にお会いし、病棟、集中治療室、手術室などを中心に見学しました。コロンビア大学では豊富な手術症例のため、周術期のチーム医療が徹底されており、手術は心臓血管外科が、術後は麻酔科・循環器内科が中心となって患者の治療にあたり、他科との連携も密に行われています。それ以外にも理学療法士、栄養士、ソーシャルワーカーなど多くのコメディカルが役割分担をしながら治療を支えていました(写真4)。Westchester病院ではアメリカでのTAVIを見学することができ、当院でのTAVIも世界に引けを取らないと実感いたしました(写真5)

2016年は例年通り、多くの先生方にお越しいただきました。2月12日には日本大学の瀬在明先生、6月2日には市立函館病院森下清文部長、6月22日には葉山ハートセンターの樋上哲哉院長、7月21日には藤田保健衛生大学看護学科渡邊孝教授、9月16日には国立循環器病研究センター小林順二郎副院長、11月14日には名古屋市立大学松嶋麻子教授、11月25日には聖マリア病院安永弘副院長にご講演をいただきました(写真6-11)

手術と同時にご講演もしていただくことが多く、当科医師だけでなく、循環器に携わる多くの医療関係者にとって、とてもよい刺激となりました。

写真1 写真2 写真3 写真4
▲写真1
TAVI風景
▲写真2
心臓血管外科医師
▲写真3
お花見
▲写真4
コロンビア大学
写真5 写真6
写真7
写真8
▲写真5
Westchester病院
▲写真6 日本大学
瀬在明 先生
▲写真7 市立函館
病院 森下清文部長
▲写真8  藤田保健衛
生大学  渡邊孝教授
写真9 写真10 写真11
▲写真9 国立循環器
病研究センター
小林順二郎 副院長
▲写真10
名古屋市立大学
松嶋麻子教授
▲写真11
聖マリア病院
安永弘副院長

 

 

■2017年への展望

2017年1月から当科部長入江博之が近森病院副院長に就任されました。と同時に院長も交代となり、近森病院改修終了とともに、新たな風が吹こうとしております。4月には岡山大学病院より医師4年目の井上善紀先生が加わり、代わりに当院での研修を終えた宮本陽介先生が岡山医療センターへと移動されました。また、5月からはドイツでの短期研修を終えられ、はるばる東北大学よりこの南国高知へと、佐藤充先生が科長として就任されました。近森病院が変化をしてきている今、当科もよりフレッシュなメンバーへと変貌を遂げております。さらに、後進の指導にも積極的であり、若き外科医の活躍の場がどんどん増えてくることと思われます。当グループでは新任者も含め6人体制(現在1人休職中)で診療を行う予定です。手術件数も年々増えており、マンパワーはいくらあっても足りないほどです。今後も多くの若手医師の見学・勤務希望を受け付けております。当科で地域医療に根差しながら、高度救急医療基幹病院としてドクターヘリを含め、多くの救急患者を受け入れています。多忙ではありますが、やりがいのある、活気あふれる当病院で、ともに働ける同志を心よりお待ちしております。