形成外科

部長 赤松順

2016年度形成外科年報  現況

前年度の引き続き、昨年、大阪医科大学形成外科の後期研修を開始した木村医師が2年目の研修を続行中しました。今年度も、筆者(形成外科専門医・皮膚腫瘍外科指導専門医・創傷外科専門医、中国四国形成外科学会副代表世話人・日本創傷外科学会評議員・日本褥瘡学会評議委員・褥瘡認定士)と杉田科長(形成外科専門医・創傷外科専門医・皮膚腫瘍外科指導専門医)の2人を加え、3人診療体制が維持されました。

年間の新患者数は581名、入院患者数は229名と増加しました。手術件数は、入院手術315例と1割以上増加、外来手術236例とやや減少(図1)し、引き続き、入院手術の増加が顕著でした。また、麻酔法別内訳は、外来手術では腰麻・伝達麻酔3例、局所麻酔233例で、入院手術では全身麻酔192例と、昨年に続き2割近い増加、腰麻・硬麻・伝麻麻酔33例、局麻手術90例で横ばいでした。形成外科疾患データベースより形成外科専門医認定施設要件の、2012年度以降の症例区分と過去5年間の件数推移を示します(表1)。

I.外傷(熱傷・凍傷・化学損傷・電撃傷の手術症例、顔面軟部組織損傷、顔面骨折、頭部・頸部・体幹の外傷、上肢の外傷、下肢の外傷、外傷後の組織欠損(2次再建))症例は171例で、昨年より微減。II.先天異常(唇裂・口蓋裂、頭蓋・顎・顔面の先天異常、頸部の先天異常、四肢の先天異常、体幹(その他)の先天異常)、III.腫瘍(良性腫瘍(レーザー治療を除く)、悪性腫瘍、腫瘍の続発症、腫瘍切除後の組織欠損(一次再建)、腫瘍切除後の組織欠損(二次再建))、IV.瘢痕・瘢痕拘縮・ケロイドは変わらず例年並み。V.難治性潰瘍(褥瘡、その他の潰瘍)は、昨年に引き続き増加。高齢化と、当院における循環器内科、透析科、糖尿病科などと連携したCLIカンファなどによるチーム医療の対応力が原因と考えられます。VI.炎症・変性疾患(蜂窩織炎、眼瞼下垂、陥入爪、腋臭症など)も、増加傾向。VII.美容(手術)は基本的に当院では0件。VIII.その他(性同一性障害、ブラッドアクセス、分類不能など)は、やや増加。Extra.レーザー治療は減少傾向です。8項目中7項目の分野の症例があり、5項目以上の要件を充足し、8項目中9件以下が1項目で、3項目以内の要件も充足、学会、論文発表など学術面での基準も充分に充足し、論文では、Ancient Schwannoma of the Neck Suspected to Be a Chronic Expanding Hematoma が、日本形成外科学会誌Vol.36 2016 No.1 p22-25で,掲載されました。

形成外科専門医のための症例区分では(1)熱傷が非手術例を除いて11件。(2)顔面骨骨折・顔面軟部組織損傷95件 (3)唇裂・口蓋裂が0件。(4)手、足の先天異常・外傷が54例 (5)その他の先天異常も10件。 (7)悪性腫瘍およびそれに関連する再建が20件。(8)瘢痕・瘢痕拘縮・ケロイドが18件。(9)褥瘡・難治性潰瘍が118件 (10)美容外科0件。(11)その他が23件で唇裂・口蓋裂、美容外科以外の区分で10件以上の症例を確保し、形成外科専門医認定施設としての責任を果たしました。

内因性疾患合併症例(糖尿病、重症下肢虚血などの難治性潰瘍など)は、相変わらず増加傾向で、患者さんの高齢化も益々進んでいるようで、当科で得意とする顔面外傷や瘢痕拘縮・ケロイド症例はやや減少傾向と思われます。また、保険適応となった乳房再建用エキスパンダー及びインプラント実施施設認定を維持致しました。

外来棟4階形成外科外来スタッフは、看護師1名が交代し、2名体制が維持され、子育てをしながら形成外科・皮膚科・外科領域で活躍しております。歯科衛生士は、病棟より必要に応じて、適宜応援を受けており、歯科衛生士免許を持つダブルライセンスの看護師の登場が待たれます。形成外科処置室での、専門看護師によるフットケア外来も続行中ですが、皮膚排泄ケア認定看護師(WOC Ns.)ともども、各部署業務多忙で十分に機能させることが難しい情勢です。診療内容の変更は無く、陥入爪治療(ラジオ波焼灼法・超弾性ワイヤー法・VHO/3TO法)や、褥瘡・皮膚潰瘍・創傷治癒関連でbFGF(塩基性ヒト線維芽細胞増殖因子)を用いた治療や持続陰圧閉鎖療法(VAC®・レナシス®・SNaP®・PICO®)も継続しQOWH(創傷治癒の質)の向上を考慮した治療を続行しています。色素性疾患に対する、Qスイッチアレキサンドライトレーザー治療、皮膚腫瘍やほくろ・老人性病変に、ラジオ波焼灼法、CO2レーザー治療も継続しています。その他、脇や足の臭いに対する治療用デオドラントクリームの処方も続行し、院内向けには、グラッシュビスタ(睫毛貧毛症治療薬)も取り扱っています。

専門医制度改革のため、様々な取り組みが必要となりますが、旧制度は今しばらく継続しますので、形成外科専門医認定施設として、引き続き皮膚悪性腫瘍、難治性皮膚潰瘍・褥瘡関連、耳や胸郭や臍部の先天異常、美容皮膚科・美容外科関連などバラエティーに富んだ内容の治療を維持し、さらに学術活動の充実をもとに教育面でも一層の努力をと考えております。

今年度はクリニカルクラークシップ・臨床研修で大阪医科大学より4名、高知大学より2名の学生さんを受け入れました。外来センター棟・形成外科処置室での顕微鏡下血管吻合練習環境の活用した教育や、褥瘡、創傷系専門のスタッフ育成なども継続して行いたいと思います。関係各位には、多大なご協力をお願い致します。

表1 年次別手術件数の症例内訳 (過去5年間)

2012年 2013年 2014年 2015年 2016年
1.外傷 (全身管理を要する非手術例は含まず) 110 98 104 180 171
2.先天異常 10 12 10 9 10
3.腫瘍 167 167 186 149 152
4.瘢痕・瘢痕拘縮・ケロイド 26 17 23 25 18
5.難治性潰瘍 74 57 92 104 118
6.炎症・変性疾患 23 26 23 23 34
7.美容(手術) 0 0 0 0 0
8.その他 15 13 16 14 23
9.Extra. レーザー治療 62 36 69 42 25
大分類 計 487 426 527 546 551


図1 年次別入院患者総数と手術件数 (過去5年間)

2012年 2013年 2014年 2015年 2016年
入院手術 242 216 235 286 315
外来手術 245 210 263 260 236
入院患者総数 219 174 193 195 229

■業績

学会発表

学会名 発表日
演題 演者
第71回中国・四国形成外科学会学術集会 2月7日
「直腸脱を合併した難治性坐骨部褥瘡の治療経験」 近森病院
形成外科

  • ○木村祐介
    杉田 直哉
    赤松 順

大阪医科大学形成外科

  • 上田 晃一
第25回高知県形成外科医会 2月20日
「開頭術後右側頭部皮膚潰瘍の1例」 近森病院 形成外科

  • ○木村祐介
    杉田 直哉
    赤松 順
    北村 龍彦
    近森 正幸
「稀な胸鎖関節部膿疱の1例」 近森病院 形成外科

  • ○杉田直哉
    木村 祐介
    赤松 順
    北村 龍彦
    近森 正幸
第16回日本褥瘡学会中国・四国地方会学術集会 2月28日
「外科的治療を回避できた膝窩部D4褥瘡の1例」~訪問看護との連携~ 近森病院 形成外科

  • ○赤松 順
    杉田 直哉
    木村 祐介

近森病院 看護部

  • 安松 和美
    西村 剛

近森病院 臨床栄養部

  • 中西 花
    佐藤 亮介

近森病院 理学療法科

  • 安松 和美
    西村 剛

訪問看護ステーションあたご

  • 岡村理香
    安岡しずか
第26回高知県形成外科医会 7月9日
「鼻形成外における頭蓋骨移植」

「ガス壊疽を発症した未治療糖尿病の2例

第8回日本創傷外科学会・学術集会 7月21-22日
「右足ガス壊疽に対してNPWTとTCC-EZ®を併用して治療した1例」 近森病院 形成外科

  • ○杉田直哉
    木村 祐介
    赤松 順

大阪医科大学 形成外科

  • 上田 昇一
第72回中国・四国形成外科学会 9月11日
「前額部に発生したSteatocytoma simplexの1例」 近森病院 形成外科

  • ○杉田直哉
    木村 祐介
    赤松 順
    北村 龍彦
    近森 正幸

大阪医科大学 形成外科

  • 上田 昇一
高知県形成外科連絡会 10月13日
「内陰部動脈領域皮弁の自経例」 近森病院 形成外科

  • ○杉田直哉
    木村 祐介
    赤松 順
    北村 龍彦
    近森 正幸
第5回高知皮膚軟部組織欠損治療研究会 11月1日
「足関節プレート露出の2例」 近森病院 形成外科

  • ○木村祐介
    杉田 直哉
    赤松 順
    北村 龍彦
    近森 正幸