臨床心理室

主任 和田寿美

■はじめに

2016年(平成28年)は、前年と同じ、常勤心理士3名体制であった。

1名は外来専任、2名で回復期リハビリテーションの入院病棟を担当とした。4フロア(8ユニット)を、3・4階、5・6階担当として分担した。

外来は、月~金曜日の午前、水曜日の午後に予約制で対応していた。入院は、入院患者の状況に影響されるため、業務量の均一化は難しく、時に外来担当者が入院患者をフォローした。

 

■実績

実績は、下記(図1~図5)の通り。

入院、外来の新規依頼件数を図1に示す。1月、10月が突出して多いが、暑い時期に少ない。

図2は、入院での新規介入患者の疾患内訳を示し、同様に、図3は、外来での新規介入患者の疾患内訳を示す。例年通り、入院では、約70%を脳血管障害が、次いで25%を頭部外傷が占めた。外来では、頭部外傷が過半数を超え、次いで40%が脳血管障害であった。損傷部位が比較的限局される脳血管障害に対して、頭部外傷は損傷が広範囲に及ぶことが多く、若年者の割合も高い。回復及び社会適応に長い時間をかけることが必要な場合がある。その一方、比較的軽症であれば、元々の自宅の生活環境に適応できたことを確認する程度のごく短期間のみのこともあった。

図4は、施行した心理検査数を示す。心理検査及び心理学的検査のテストバッテリーを施行するが、アセスメントとして重要かつ有用な方法である。

図5は、月別ののべ介入件数を示す。月平均では、入院が140件、外来は79件と、昨年と同程度であった。患者の状態に応じて、アセスメントだけで終えることもある一方、認知訓練、心理面接等を継続することもある。

入院中は、病院という”特別な”環境で過ごしているため、患者自身が病識(病気や障害に対する認識)を持ちにくいことが挙げられる。慣れた生活環境である自宅に帰ってから、以前の生活との差異に気付き、患者自身は「悪くなったように感じる」ことがあり、不安や自己評価低下などを招くことがある。高次脳機能障害を抱えた場合、回復に進んでいるからこそ感じることであり、症状や状況を確認して対処方法を共に考える必要がある。

また、患者の最も身近な存在である家族への支援も重要である。患者自身や障害について理解を深めていただき、更に適切な対応を獲得していただくと、患者の不適応行動を防ぐことにもつながる。そのため、家族との面接、地域の家族会の紹介など、孤立しないよう選択肢の提示を心がけている。

また、他職種と協同して、患者の学業や職業への復帰支援も行った。患者、家族の意向は重要であるが、社会全体の利益も考え、時期に応じてそれら支援を検討する。病院内だけにとどまらず、学校や職場、障害者職業センターなど地域の関係機関との連携が重要だと考えている。

 

■おわりに

臨床心理士の介入対象としては、高次脳機能障害が重要なキーワードの1つであるが、比較的若年者であれば、その有無だけでなく、職場(学業)復帰や自動車運転の再獲得が挙げられる。高齢者の場合は、認知症による不穏状態や、うつ状態、がキーワードになりえた。

心理士にとっては、悲願の公認心理師法の成立というのが大きな出来事であった。2018年には国家試験が開始される予定である。業務を行いながら資格取得を準備することの大変さを想像するが、医療現場で働く以上必須であり、実現に向けて努力するのみである。

いま一度基本に立ちかえり、目の前の患者、家族が安心、安全、健全に暮らすために、自分らしく存在するために、心理職としてできることを実行していく。他者を支援するとはどういうことか、チームが機能するとはどういうことか、専門的な知識、技術をどこでどう活用するか、しっかり向き合っていきたいと思う。いつでもどこでも誰とでもコミュニケーションでき、寄り添う存在でありたいと考える。

 

【図1~5】
図1.新規依頼件数;依頼箋にて、新規介入開始となった月別件数(入院、外来別)。
図2.新規介入患者の疾患内訳(入院);新規に介入開始した入院患者の疾患の内訳。
図3.新規介入患者の疾患内訳(外来);新規に介入開始した外来患者の疾患の内訳。
図4.心理検査数;実施した心理検査の月別件数。
図5.のべ介入患者数;心理面接や認知訓練(検査を含む)等の介入を実施した患者の月別のべ人数(入院、外来別)。

  • 図1図1
  • 図2図2
  • 図3
  • 図4図4
  • 図5図5