デイケア メンタル

主任 川渕忠義

【はじめに】

2016年(平成28年)を振り返りトピックスとしては、4月に診療報酬の改定があり、「長期にわたる頻回の精神科デイケア等の適正化」が示されたことである。今回の改定では、これまで精神科領域において、地域移行や定着支援の大きな役割を担っていた精神科デイケアにおいて、今後の役割や機能を再考する機会となり、通過型サービスとしての機能へと絞り込む方向性が示されたといえる。精神科デイケアの長期利用者の漫然とした利用が指摘されていたなか、当施設は数年前より規模を縮小して、今後のデイケアの在り方を模索しながらデイケア運営を続けてきた。若い世代の多くは就労など目的性の高い利用者で構成されている一方で、長期化しがちな高齢の精神障害者については、病状コントロールや地域生活支援、健康への配慮、認知障害といった課題が多く、展開する活動や支援内容も多岐にわたっている現状がある。このような背景のなか、若年層と高齢者層とが互いに学びあえる混在型デイケアの運営を継続しつつ、長期利用者の移行については、さまざまな機関との連携を強化する必要性を感じている。

【運営状況】

2016年は、作業療法士3名、看護師1名、臨床心理士1名の5名体制でのスタートとなった。その後、病休や産休のため年度途中での人員の入れ替わりがあり、不安定な一年であった。具体的には、3月に訪問看護ステーションラポールちかもりの作業療法士とチームリーダーをしていた作業療法士が入れ替わる人事となった。そのため、リーダーの変更をおこない、ベテランの作業療法士が後任を引き継ぎ、スタッフ全員が臨床経験10年以上のベテランスタッフの構成で運営をおこなった。11月には、リーダーの産休に伴い、再度、リーダーの変更をおこない、作業療法士2名、臨床心理士1名、看護師1名となり、これまでより1名減の4名体制の運営となった。加えて、プログラムの技術指導を専門家である外来講師へ依頼していたが、7名の外来講師枠を3名へと減少させた。理由としては、今後の精神科デイケアの在り方を再考するにあたり、経営面や利用者のニーズなどを鑑みた結果、現状のニーズに合わせた運営をおこなうにあたり、目的の明確な治療プログラムの立案、実施が必要との判断に至った。そのため、スタッフ一人当たりの仕事量は大幅に増大した。引き続き、来年度も補充の予定はなく、4名体制の運営となるが、一人あたりの業務量の増加はスタッフのモチベーションにも影響することが考えられるため、管理体制の見直しをおこない、各スタッフへのフォローを丁寧におこなっていきたい。

デイケアの転帰を表(1)に示した。

退所者転帰として、退所者数は59名で就労・復学が21名で最も多く、次に精神科入院が20名となっている。ここ数年は精神科入院が退所理由で最も多かったが、今年は2013年以来の就労・復学が退所理由のトップとなった。事業所(A型、B型、就労継続)、一般就労、障害者雇用への移行が多く、利用者年齢(表5)からもわかるように男女とも最も多い年齢層である30代の利用者の多くは就労目的での利用であるため、今後も通過型のデイケア運営を意識するうえで、維持していきたい。精神科入院については、地域生活でのストレスが要因となり、病状を崩すケースが多く、退院支援の充実と地域定着支援の見直し等が課題となる。地域定着や地域移行については、喫緊の課題であるが、今年は他のサービス移行が2名と結果であった。数こそ少ないが移行したケースについては、高齢の長期利用者であり、利用者のニーズやペースに合わせながら丁寧な支援をおこなった結果といえる。適切なタイミングで然るべき支援内容の提示と連携が何より求められる。次年度も引き続き強化していきたい。

また、中断したケースについては、昨年に比べ15名と若干であるが増えている。昨年、入所者数は増加したものの、間口を拡げ受け入れを拡大した結果、本来、デイケアの対象でない方も一定数存在していたことは否めない。そういったケースは、入所後、さまざまな問題やトラブルが発生したこともあり、中断(退所扱い)となったケースが影響していると思われる。再度、入所基準に則り、正しい利用ができるよう丁寧に導入をしていくことが効率的な運営をおこなううえで重要であると考える。しかし、目的が明確でないケースもいるため、動機付けを丁寧におこない、また、定期的な利用者意向の確認をおこなうことや精度の高いアセスメントを実践していくことでカバーしていきたい。

次に、デイケア利用者総数を表(2)に示した。

年間利用者総数は、ここ数年は大きな変化はみられないが、通過型デイケアとして一日30名を目標に今後も維持できるよう努力を続けていきたい。加えて、運営の安定化を図る上では、回転率を上げ、一定の利用者数を維持するためには展開するプログラムを充実させること、個別のケアの充実が求められる。そのためには、各スタッフがスキルアップはもとより、積極的に運営に携わる構造へシフトしていく必要がある。次年度は、役割の委譲を進め、各スタッフが受け身でなく、自らが行動変容できる環境づくりを管理者として力を入れていきたい。

新規利用患者の紹介元内訳を表(3)に示した。

今年度の入所者は総勢46名、昨年に比べ減少している。紹介元内訳では、入院からの紹介が最も多く、外来からの紹介率については、総合心療センター外来新患数の減少が影響していると考える。昨年に比べると10名程減っているが、今後も外来医師の増員は見込めないため、他院・クリニックからの紹介率をアップさせることでカバーしていきたい。他院・クリニックからの紹介については、例年と比べても大きな変化はなく、維持できている。上述したが、当デイケアの特長や現在、他院やクリニックから通所している利用者の治療経過やよりよい変化をもって、他院やクリニックから信頼されるデイケアを目指し、運営の安定化を図っていきたい。

外来部門(在宅支援)については、外来看護、相談室、訪問看護ステーションとの連携強化が重要であり、地域移行、地域定着、次へのステップの場としての機能を充実させ、外来通院のみの患者でデイケア利用に至っていないケースなどへは積極的にアプローチをおこなっていきたい。

入院部門については、病状悪化や休養目的の入院者が多く、今後も紹介率の確保は必須であるため、昨年同様、3ヶ月の入院(急性期)治療を脱したケースについては、病棟との連携(病棟カンファレンスの実施、担当看護師との情報交換等)をおこない、早期からの介入を実践していきたい。退院後、安定した通所ができるよう、入院中からの退院支援にも積極的に介入していきたい。

デイケア新規導入患者の疾患別内訳を表(4)に示した。

疾患別では、統合失調症が最も多く、入院からのケースが殆どを占めている。次に多かったのは、神経症圏で特に引きこもりのケースが増えており、精神科デイケアの治療空間を次への移行の場所として利用するケースが多い。ひきこもりのケースについては、個別ケアと小集団を軸に展開していく必要を感じている。発達障害については、ここ数年、一定の割合で推移している。今後も統合失調症をベースにしたデイケア運営にとどまることなく、多様な疾患に対応することができる精神科デイケアを目指し、集団を利用しながら個別支援の充実を図っていきたい。また、発達障害や統合失調症など疾患別のプログラムの充実は昨年度からの目標にもあげていたが、人員削減の影響を受けて、今年度中に取り組むことができなかったため、引き続き、次年度の目標に掲げ、具体的な取り組みへとつなげていきたい。

【おわりに】

今回の診療報酬の改定は、これまで予測されていたことではあったが、精神科デイケアの見直しが必要であることを明確にした出来事であった。「地域に求められるデイケアとは何か」「これからのデイケアの在るべき姿とは何か」を考えるきっかけとなった。今後、医療機関のデイケアとして根拠のある取り組みが重要となってくる。デイケアメンタルにおいては、大きく方向性を変換することはなく、これまで同様、利用者、各世代におけるリカバリー(回復)をコンセプトに運営を続けていきたい。そのためには、個別支援の充実、小集団でのかかわりをとおして社会へつなぐ準備期間としての機能を展開していくことが重要と考える。また、高齢者層と若年者層の混在型デイケアとしての機能は維持しつつ、地域移行、地域定着を促進し、他機関との連携を強化に努めたい。

  • 表1
  • 表2
  • 表3
  • 表4
  • 表5
  • 表6