巻頭言

平成28年を振り返って

平成28年を振り返って

常務理事・管理部長 寺田文彦 昨年4月より、川添常務理事兼管理部長のあとを受けて、新しく管理部長職を拝命し1年が経過しました。10月には常務理事職を拝命し、法人全体を俯瞰する立場となりました。 今年4月の診療報酬改定は高度急性期である近森病院にとって非常に大きな転換期となりました。今までは稼働率を上げて豊富な人材や設備投資が可能であったが、診療単価の減少と入院制限を行うことにより、稼働率90%でも採算分岐を切るようになり、大学病院や自治体病院を含め稼働率の低下と収益の減少が直面した1年であった。医療の質や労働生産性、稼働率を上げることで患者数増加と売上アップを行い、専門性の高いスタッフ増員の原資にあててアウトカムを出してきたが、診療単価の減少と入院制限を行うことで、病院の存続をかけた生き残り合戦となり現場の疲弊を招き、スタッフの労働環境の改善と患者さんへの安全・安心の医療を提供できる環境作りに影響が出始めている。良循環を行うためには、地域の患者数や競合病院、自院の医療資源に左右されるのはもちろんであるが、なにより診療報酬改定に左右されているのが現状である。8月以降は現場の努力で収支も改善し良い方向に向かっている。 近森病院は、3次救急など高度急性期の治療を行うために、5カ年建築計画で免震・耐震基準に加えヘリポートを設置し、ERや手術室、血管造影室や内視鏡センター、集中系病棟の全面拡張・整備を行った。手術や高度処置が必要な紹介患者の受け入れや救急搬入患者の増加・対応に努めると共に、重症の長期入院患者の転院促進が図られている。また、回復期機能を受け持つ、近森リハビリテーション病院や近森オルソリハビリテーション病院も新築・改修移転を行い、病棟やリハビリ訓練室の拡充、機器の整備を行ったことで、より多くの患者さんを受け入れて、より充実した治療や早期リハビリテーションができるようになった。 近森病院が7~9月の3か月で行ったことは 1)トップが危機の原因究明と対策の呈示 2)全職員との危機の共有 3)理事会の若がえりにより機能的理事会へ(現場を理解し、今までの固定観念にとらわれていない能力のある医師、管理部、看護部の参加)4)院長直轄の病院経営改善委員会により、具体的対策を提示(実務者によるワーキングでコミュニケーションを深め、セクト主義を廃し、具体的な議論を行い、現実的な対応策を提案する) 5)部科長会の再編成により、具体的対策の討議と決定 6)合同運営会議により周知徹底 今までは院長1人で考え、環境作りをするだけでよかったが、これからはトップダウンの方針のもと、現場が考え行動する時代になった。 今後の病院運営は、極めて戦略的に行わないと生き残れない時代となった。近森病院では、1)救命救急医療に特化し、リハビリとの「垂直統合」で在宅復帰を推進 2)地域医療連携を徹底し、より密接な「アライアンス連携」を推進 3)多くの高規格病棟と有機的な病棟連携に加え、多職種による病棟常駐型チーム医療を組み合わせる 4)教育、研修に力を入れ、スタッフみんながいきいきとやりがいをもって働く職場作り を実行することでこの難局を乗り越えようとしている。 2018年診療報酬同時改定の方向性として、急性期医療は医師の裁量権で自由に入退院が可能であったが、ビッグデータで7対1看護のDPC病院に「診療密度」の発想が導入された。2014年AB15%ルールが導入され、EFファイルと突合することで2016年ABC25%ルールとICUのAB80%ルールが導入された。また、高規格病棟の入院、退院基準も設定され、総合入院体制加算AC27~30%ルールで医師の業務量が分かるようになる。加えて10月から導入される「Hファイル」の提出で看護師の業務量が分かり、7対1看護から10対1看護、13対1看護へと、ストラクチャーからアウトカム評価へ変更される。一方、介護施設ではデータの電子化により介護密度による「要介護度」設定が行われ、介護サービスを受けられる基準(入所の可否や会議サービスの点数)が決定されるであろう。 地域医療の崩壊を防ぎながら急性期病院のさらなる絞込みが行われるため、高度急性期医療をするためには高規格病棟と病棟常駐型チーム医療の必要性の真価が問われるであろう。 ハード面の更新として、今年1月には、近森オルソリハビリテーション病院の改装・移転作業を行った。運動器疾患の回復期ステージとして、急性期病院との強固な連携体制を更に構築し、整形外科の回復期リハビリのモデルとなる診療体制を構築して頂きたい。近森リハビリテーション病院と同様に診療スペースを1.5倍に増加させ、新しい機器の導入などを行った。5月には近森病院附属看護学校及び教育研修センターを改修移転し、より充実した環境整備のもと実績を出して貰えればと願っております。 今年、社会医療法人は創立70周年を迎えました。病床機能の明確化と診療内容の選択と集中を繰り返し、2025年に向けたあるべき医療体制の追求を行う法人として歩み続けたいと思います。...