感染対策委員会

感染対策委員会

委員長 / 北村龍彦

2016年4月、熊本・大分県を中心に度重なる地震が発生し、多くの方々が避難所生活を余儀なくされました。被害にあわれた方々に心からお見舞い申し上げるとともに犠牲になられた方々、ご遺族の方々に深くお悔やみ申し上げます。被災地の避難所ではノロウイルス感染症やインフルエンザウイルスなど感染症が発生し、災害時における効果的な衛生管理、感染対策の重要性をひしひしと感じました。
2016年の活動の実際は、感染対策チーム【Infection Control Team以下ICTと略す】(メンバーは表2-2参照)やリンクナース(以下LN)(表2-3参照)を中心に各種サーベイランスやICTラウンドの実施、職業感染対策を行いました(表1)。感染対策委員会(以下ICC)は毎月1回開催されており、メンバーは各部署の代表から構成されています。(表2-1参照)
看護部の感染管理体制としては感染管理認定看護師(CNIC)の元、看護部代表が中心となりLNと共に活動しています。LN会は毎月1回、グループ活動も毎月1回開催し、病棟や外来の感染管理の質向上に寄与しています。特に、グループ活動では、災害時における感染対策の重要性からアクションカードの作成に取り組んでいます。
感染対策で中心的役割のあるICTは感染管理医師(ICD)、感染管理認定看護師(CNIC)、感染制御認定臨床微生物検査技師(ICMT)、薬剤師(CP)、理学療法士(PT)、管理栄養士(RD)で構成されています。週1度ICTミーティングを実施しており、院内への情報配信として「I.C.T.WeeklyNews」の編集や耐性菌の発生状況や抗菌薬の使用状況、その他感染症の発生状況について報告し合い、動向調査を実施しています。
ICTメンバーの認定資格習得状況は、臨床微生物検査技師3名が1月より感染制御認定臨床微生物検査技師(ICMT)の資格を取得しました。
週1度のICTラウンドは、3月までは、LN協力のもと、病棟のチェック項目について、事前にラウンドリーダーが巡回する部署の過去の指摘事項を確認し、プロセスを確認するPチームと環境面を確認するKチームに分かれて実施し、項目ごとに点数をつけ評価していました。4月の診療報酬改訂に伴う感染防止対策加算の疑義解釈より、新たにラウンド方法も見直しを行いました。5月からの新たなラウンドでは、ICTラウンドメンバーが2チームに別れて全部署(病棟・集中系・外来等)を等分し、目的をしぼって巡回を行いました。(表3-1~3-3参照)フィードバックについては、サイボウズ掲示板を用い、院内掲示を行うなど、これまでの対象部署中心のフィードバックから全体への情報共有へと変更しました。ただし、改善が必要な点についてはこれまで同様必要部署へ改善書提出依頼を行っています。
感染症発生(報告)状況及び細菌統計は表4~7、図1~5に示しています。一類・三類感染症の報告はありませんでしたが、二類感染症の結核、五類感染症の侵襲性肺炎球菌感染症やカルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症の報告数が多い傾向にあります。MRSA発生報告は45件と昨年(31件)から増加し、全国の定点当たりの月別定点当たり報告数を比較しても(表5 図3-1)、やや多くなっています。当院の細菌検査統計で黄色ブドウ球菌(MRSA、MSSA)の検出状況(表6 図4)は昨年よりMSSAの件数が増加しました。ESBLs(基質特異性拡張型βラクタマーゼ)産生菌とBLNARの検出率(表7 図5)は国内検出率と近い値を推移しています。MDRP、PRSPの検出率は国内検出率と比較し、低い値を推移しています。一方、CREの検出率は昨年より増加しており、国内検出率と比較しても高い値となっています。しかし、カルバペネマーゼ産生菌は少なく、AmpC過剰産生の影響と考えられますが、水平伝播を防ぐため、感染防止対策に努めなければいけません。今後も細菌検査室と常に連携を図り、耐性菌の検出時は細菌検査室から直ちに主治医とICD、ICNに連絡をし、その都度耐性菌ラウンドを実施し、耐性菌の抑制に努めています。
抗菌薬に関する統計では、カルバペネム系・セフェム系抗菌薬(注射)の使用状況とMRSA検出率(表8 図6)には、明らかな相関関係は見られず、カルバペネム系抗菌薬の使用率にも変化はありませんでした。抗菌薬ラウンドの実施や病棟薬剤師によるモニタリングを実施しています。また、「抗菌薬ガイドライン」を活用したり「近森病院抗菌薬適正使用の手引き」の見直しを行い、抗菌薬の適正使用に努めています。
薬剤感受性率(アンチバイオグラム)の推移では、Klebsiella、Enterobacterのセフェム系薬感受性率が低下傾向でした。また、腸内細菌属のカルバペネム系薬感受性率が低下しました。これは2015年に測定器が更新されたことにより、腸内細菌属のセフェム系薬BP及びカルバペネム系薬BPの設定が引き下げられた影響が考えられ、今後の推移を注意深く見ていきたいと考えています。(図7-1~7-10)
血流感染(BSI)年次推移は図8-1に示す通りで、血液培養は2セット採取が定着し、依頼数が増加傾向となっています。BSI依頼総数は8000件弱と年々増加傾向でしたが、陽性数・陽性率は減少しています。コンタミ菌の検出率は、4%を超えることがありましたが、LNによる正しい血液培養採取の啓発・指導を実施し、理想とする3%以下をキープするよう努めています。(図8-2)また、2010年以降1000件台を推移していた抗菌薬起因性下痢に関するCDトキシンの依頼数、陽性率は昨年と同様に減少した値のまま推移しています。(図9)
その他サーベイランスに関して、JANIS厚生労働省 院内感染対策サーベイランスは検査部門、手術部位感染(SSI)部門、全入院部門を実施しています。また、呼吸ケアチーム(RCT)協力の元、呼吸器感染(VAP)サーベイランスをICU対象に実施しています。
4月よりICNが1名体制となり、ICN通信については不定期発行とし、CLA-BSIは中止していています。しかし、病棟における手指衛生サーベイランスは、観察を20分×1回とし、月毎に手指衛生遵守率のグラフを部署へフィードバックし、プロセス面での感染対策の向上に努めています。
近森病院の針刺し切創・血液体液曝露発生については29件(昨年32件)と減少しました。エピネット日本版サーベイランス2015年(JES2015)**によると400~799病床規模の針刺し切創発生率は100床あたり6.7件と報告されおり、稼働病床数462床(心療センター除く)の当院では、100床あたりの感染事故発生件数は6.3件発生しており、やや少ない結果となっています。職種別では、医師・看護師が最も多くなっています。発生状況・内容では、手術中に手術器械による刺傷が増加傾向でした。(図10-18)
ワクチンプログラムでは、安全衛生委員会と協力し、2015年9月より開始した入職前の麻疹・風疹・水痘・ムンプスの抗体獲得について、運用の見直しを実施しています。また、入職者のインフルエンザ、B型肝炎の予防接種を実施しています。(詳細は安全衛生委員会年報参照)
診療報酬制度の感染防止対策加算1を算定している近森病院は、加算2を算定している近森リハビリテーション病院と年4回の合同カンファレンスを開催しており、薬剤耐性菌の検出状況、抗菌薬使用状況、感染症患者の発生状況、院内感染対策の実施内容についての報告と検討に加え、お互いの施設のICTラウンドの実施やラウンド方法の検討など、感染対策の活動について情報共有に努めています。また、地域連携加算も算定しており、高知県の感染防止対策加算1を算定している病院との相互訪問と評価は、近森病院がいずみの病院とあき総合病院のICTによる相互訪問・評価を受けました。新たな視点での指摘を受け、今後の感染対策の課題提起となりました。また、近森病院のICTはいずみの病院と高知医療センターを訪問・評価を行いました。
高知県医療関連感染対策地域支援ネットワーク事業においては高知市エリアの拠点病院として参加しており、会議や研修会への講師として出席し、医療関連感染相談対応パンフレットが4月から県内に配置されるなど高知県全体での感染対策に力を入れています。また、引き続き日本環境感染学会の教育認定施設としての役割も果たしていきたいと考えています。
今後も、感染管理について全ての職員に対し教育・啓発活動を行ない、全員で感染対策活動を継続していくとともに、医療従事者が感染源とならないように十分な対策を講じ、安全・安心で質の高い医療の提供につながるように感染管理に努めていきます。

 

<参考文献>
**エピネット日本版サーベイランス2015年(JES2015)

※ 表や図について、一部近森リハビリテーション病院、オルソリハビリテーション病院のデータを含みます。