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理事長のひとりごと

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[2017年10月24日] 新蕎麦の季節に

 10月といえばいよいよ新蕎麦の季節である。先日いつも行く中ノ橋のそば屋に行くと北海道の旭川で採れた新蕎麦を今年初めて出してくれた。

 蕎麦といえば信州長野が有名だが、いまでは北海道が最も生産量が多い。なかでも旭川は幌加内町、深川市(共に旭川周辺)に次いで三番目に多く、江丹別蕎麦がよく知られている。この江丹別地区は夏に35℃冬は--36℃ほどになり、日本でもっとも寒暖差が激しい場所としても知られている。ワイナリーの葡萄畑も寒暖差の激しいやせた土地が適しているから蕎麦も似たところがあるのだろう。

 昨年食べていた蕎麦は出来がよくなく、夏場には種物でごまかしごまかし食べていた。今年は一年中おいしく食べることができ、蕎麦喰いとしては幸せだった。今年の新蕎麦の出来はなかなかいいようで、来年もおいしい蕎麦を食べられそうである。

 私は休みの日の昼下がりに行き、夏なら桜エビのかき揚げ、冬は海老と京ネギのかき揚げのヌキ(かき揚げ蕎麦から蕎麦をぬいたもの)をアテに、純米酒のぬる燗でちびちびやるのが好きだ。海老は妻に食べてもらう。最後はトロトロになった天かすをあてにちびりちびり。次に甘汁(かけ蕎麦の汁)を日本酒に足してさらにちびり。酒が終わるとモリをすすって火照りを取り、最後に蕎麦湯であっためる。実に至福のときである。

 高知にいるときは週末には行っているので、大将がいかにおいしい蕎麦を仕入れるか、吟味しているのがよく分かる。新蕎麦の出来る時期は北海道から南下して茨城、夏の暑い時期にはしっかりして旨味のある信州産の蕎麦を出してくれる。

ご主人と美人でしっかり者の奥さん.jpg  大将は蕎麦の素材に応じて石臼で荒く碾いたり、細かく碾く。次にふるいにかけて甘皮をどれだけ入れるかを考える。多く入れると旨味は増すが粉っぽくなるし、少ないと喉ごしはいいが旨味は少なくなってしまう。温度と湿度を考えながら加水も変え、蕎麦のもてるポテンシャルをいかに引き出すか、そのぎりぎりのバランスにいつも心をくだいている。そんな日々精進し、志のある蕎麦をふらっと行って食べられるというのは、なんと幸せなことなんだろうと思う。

2017年10月24日

理事長 近森正幸