外科

副院長 / 北村龍彦

 2015年は近森病院の5カ年計画を終え、病床数も338床から452床へ114床増加となった。スタッフ不足のためフルオープンとなってはいないが、病院全体として徐々に入院患者が増加し、手術件数も増加した年であった。近森病院外科は、一般外科、消化器外科、呼吸器外科、乳腺・内分泌外科、形成外科などの症例を担当し、外傷や急性腹症を含むACS(Acute Care Surgery)の対応および癌・良性疾患の待機手術など手術前から周術期、早期退院まで多職種がチームで関わり、悪性疾患の術後フォローや化学療法などもチームで取り組んでいる。

 診療体制について振り返ると、外科は八木 健部長、坪井 香保里科長、辻井 茂宏科長、津田 昇一医師が変わりなく、新たに川本 常喬医師が赴任され、常勤医師5名体制で診療に臨んでいる。また、順天堂大学医学部附属順天堂医院 肝胆膵外科の塚田 暁 医師が毎週水曜日に非常勤で勤務されている。呼吸器外科は、山本 彰部長のほか、高知大学医学部外科学(外科2)の穴山 高嗣講師が今年も毎週木曜日に非常勤で勤務され、手術や気管支鏡などの診療を担当して頂いている。木曜日以外は、外科の若い医師と呼吸器内科の医師とともに協力して診療に臨んだ。形成外科は、赤松 順部長、杉田 直哉科長が変わりなく、新たに木村 祐介医師が加わり3名体制で診療に臨んだ。また、乳腺・内分泌外科と化学療法は、昨年と同様、田中 洋輔部長が担当している。

 初期研修医の外科研修については、平成25年度卒業の福島 大医師(2年目・2015/6/29~8/30)が。また、平成26年度卒業の坂西 誠秀医師(1年目・2015/4/13~5/31)、西村 祐希医師(1年目・2015/4/13~5/31)、片岡 エマ医師(1年目・2015/6/1~6/28)、橋本 大輔医師(1年目・2015/8/3~8/30)、森本 暢医師(1年目・2015/8/31~10/4)、松浦 拓也医師(1年目・2015/10/5~11/1)、松浦 洋史医師(1年目・2015/11/2~11/29)が外科研修を行った。(外科の人事に関しては資料1を参照)

 外科症例の患者統計を振り返ると、退院患者数は814名で昨年に比べて45名減少した。(図1)、平均在院日数は15.46日と、昨年から僅かながら増加した。

 手術数は、外科全体では同時に行われた複数手術を算定すると1026件で75件の増加であった。詳細な内訳は各部長に譲るが、消化器外科は494件で、33件増加、鏡視下手術は187件で、86件の増加であった。呼吸器外科は62件で、17件の増加。うち鏡視下手術は40件で19件の増加であった。形成外科は456件で16件の増加、乳腺外科は14件で9件増加であった。(図2)一方手術件数全体は839件であり、昨年から45件増加した。内訳をみると時間帯別(時間内外・深夜)では、平日の時間内が789件で前年比57件の増加、待機手術が753件と48件増加した。年齢別では、70歳以上の高齢者は374件と26件の増加、69歳以下が465件と19件の増加であった。(図3~図6)外科の入院患者は減少したが、手術件数は増加した。特に平日の待機手術と鏡視下手術が大幅に伸びているのが特徴である。

 外科の死亡診断書のレビューでは、死亡退院が12件(男性7件・女性5件)、退院患者に占める割合は1.5%であった。医療行為に関連した死亡はなく、死亡退院のうち6件50%が悪性新生物であった。在宅看取り症例は0件であった。術後1ヶ月以内の死亡は4件、入院後24時間以内の死亡は2件であった。

 2015年の外科と呼吸器外科の業績は、別紙のごとく論文が1編、学会発表が全体で19演題である。今年は研修医の発表が7編あり、その中で、第51回日本腹部救急医学会総会(2015年3月5日~6日・京都)において、「超音波ガイド下整復後に待期的手術を施行した閉鎖孔ヘルニア嵌頓の1例」で藤原 麻美研修医が優秀口演賞を受賞した。また、第77回日本臨床外科学会総会(2015年11月26日~28日・福岡)では、「当院での閉鎖孔ヘルニア13例の検討」で藤原 麻美研修医が「最優秀賞」を受賞。「急性虫垂炎の医療コスト~保存か手術か~」で福島 大医師も同じく「最優秀賞」を受賞した。そのほか、上級医の学会発表では、第90回中国四国外科学会(2015年9月11日~12日・岡山)において、「非閉塞性腸間膜虚血症に対して計画的2期手術を施行し、対照的な経過を辿った2例」で川本 常喬医師が「後期研修医セッション 奨励賞」を受賞した。

 この10年間を振り返ってみると、新医師臨床研修制度や医学生の臨床実習前の共用試験が始まり、今では後期研修医の新専門医制度も始まろうとしている。医療法は第5次6次7次と改正され、診療報酬制度では診断群分類包括評価(DPCからDPC/PDPS)が導入された。また、1999年の患者取り違え手術以降、医療安全推進総合対策とリンクし「医療安全対策加算」が新設。耐性菌や世界規模での感染伝播や周術期の感染対策への対応として「感染防止対策加算」なども設けられ、医療安全と医療の質の向上の枠組みは、日本のみならず全世界の人々へ恩恵をもたらした。外科の手術手技も鏡視下手術の普及と機械の改善により一段と進歩している。外科学会では2011年から専門医制度とリンクする手術症例入力(NCD)が始まり、正確な入力による大きなデータベースが構築され、今後はこのビッグデータの活用によりさらなる進化が望まれる。

 昨年は手術、特に公的な医療保険で認められていない腹腔鏡関連の治療で患者が亡くなるという不幸な事例がいくつも報告された。医療安全の根幹を揺るがす問題だったため、医療事故調査制度も実現した。医療安全は、患者一人一人の人権を尊重しながら医療過誤を極力回避する病院診療の中心となる原則であるが、治療によって思わぬ副作用や合併症が起きることもあり、迅速で丁寧な説明をしながら最適な対処が求められる。前段で述べた10年間の出来事から、医療を取り巻く環境は日々進化し続けており、医療以外の事にも目を配り、志高く、常に人格の涵養が求められる。しかし、医療の本質、医師の基本は変わらず、患者さんに真摯に向き合い、患者さんへの説明と同意に基づき、皆さんとの信頼関係を築き、自身の知識と技術を高めつつ、医療安全に配慮し、医療の質を高めて全身全霊で成果を残していく事に尽きると考える。これからも高知県で関係者と連携しながら良き臨床医を育て、「For You, For All」の気持ちで「Noblesse Oblige:ノブレス・オブリージュ」を果たしつつ、地域医療に貢献できる外科であり続けたいと考えている。

▲図1:退院患者数と平均在院日数 ▲図2:2015年外科手術症例の内訳 ▲図3:時間帯別手術件数 ▲図4:緊急・待機別手術件数
 
▲図5:年齢別手術件数 ▲図6:70歳以上    

 

■業績
■学会発表
名称 開催日 会場 演題名 発表者
第51回日本腹部救急医学会総会 3月5~6日 京都 超音波ガイド下整復後に待期的手術を施行した閉鎖孔ヘルニア嵌頓の1例 近森病院 外科
  • 藤原麻美
  • 津田昇一
  • 辻井茂宏
  • 坪井香保里
  • 八木健
  • 北村龍彦
腹部救急疾患でのearly exposure
~患者は50歳女性、私の母~
高知大学医学部 医学科
  • 立道理乃

近森病院 外科
  • 津田昇一
  • 辻井茂宏
  • 坪井香保里
  • 八木健
  • 北村龍彦
日本感染管理ベストプラクティス
”Saizen”研究会第10回セミナー
4月18日 大阪 当院リハビリテーション部門における病棟訓練時の手指衛生 近森病院 
  • 入野稔也
  • 山本佳代
  • 金久雅史
  • 小林早紀
  • 國澤雅裕
  • 近森幹子
  • 北村龍彦
厨房内での衛生管理について、感染管理ベストプラクティスを用いて介入した事例について 近森病院 臨床栄養部
  • 池上七帆
  • 田邊七瀬
  • 内山里美
  • 宮澤靖
近森病院 感染制御部
  • 近森幹子
  • 北村龍彦
第40回日本臨床外科学会高知県支部会 5月9日 高知 NOMIに対して2nd look operationを施行した1例 近森病院 外科
  • 川本常喬
  • 津田昇一
  • 辻井茂宏
  • 坪井香保里
  • 八木健
  • 山本彰
  • 田中洋輔
  • 北村龍彦
第68回高知県医師会医学会 8月22日 高知 指の外傷に腹部皮弁で再建を行った3例 近森病院 形成外科
  • 木村祐介
  • 赤松順
  • 杉田直哉
  • 北村龍彦
  • 近森正幸
胃 mixed adenoneuroendocrine carcinomaの1例 近森病院 外科
  • 坂西誠秀
  • 川本常喬
  • 津田昇一
  • 辻井茂宏
  • 坪井香保里
  • 八木健
  • 山本彰
  • 田中洋輔
  • 北村龍彦
近森病院 病理診断部
  • 円山英昭
第90回中国四国外科学会  9月11~12日 岡山 非閉塞性腸間膜虚血症に対して計画的2期手術を施行し、対照的な経過を辿った2例 近森病院 外科    
  • 川本常喬
  • 津田昇一
  • 辻井茂宏
  • 坪井香保里
  • 八木健
  • 山本彰
  • 田中洋輔
  • 北村龍彦
第7回Acute Care Surgery学会学術集会 10月3~4日 福岡 外科医4人で守る地方都市救命救急センターでのACSの実際と限界、そしてこれから... 近森病院 外科
  • 辻井茂宏
  • 川本常喬
  • 津田昇一
  • 坪井香保里
  • 八木健
  • 山本彰
  • 田中洋輔
  • 北村龍彦
第41回日本臨床外科学会高知県支部会  11月7日 高知 膀胱ヘルニアを伴った再発性外鼠径ヘルニアの一例 近森病院 外科
  • 津田昇一
  • 川本常喬
  • 辻井茂宏
  • 坪井香保里
  • 八木健
  • 山本彰
  • 田中洋輔
  • 北村龍彦
第31回高知県院内感染対策研究会 11月14日 高知 当院で発生したHaemophilus.influenzae(BLNAR)によるアウトブレイクと感染対策  1)近森病院 臨床検査部
 2)近森病院 ICT
 3)近森病院 呼吸器内科
  • 山崎駿介 1)
  • 柳井さや佳 1) 2)
  • 吉永詩織 1) 2)
  • 近森幹子 2)
  • 佐々木美樹 2)
  • 北村龍彦 2)
  • 石田正之 3)
第77回日本臨床外科学会総会 11月26~28日 福岡 当院での閉鎖孔ヘルニア13例の検討 近森病院 外科
  • 藤原麻美
  • 辻井茂宏
  • 津田昇一
  • 坪井香保里
  • 八木健
  • 北村龍彦
急性虫垂炎の医療コスト
~保存か手術か~
近森病院 外科
  • 福島大
  • 辻井茂宏
  • 津田昇一
  • 坪井香保里
  • 八木健
  • 北村龍彦
当院での非閉塞性腸間膜虚血(NOMI)に対する治療方針 近森病院 外科
  • 谷岡信寿
  • 辻井茂宏
  • 津田昇一
  • 坪井香保里
  • 八木健
  • 北村龍彦
異なる経過をたどった胆嚢捻転の3例 近森病院 外科
  • 西村祐希
  • 辻井茂宏
  • 津田昇一
  • 坪井香保里
  • 八木健
  • 北村龍彦
外傷性脾損傷後に仮性動脈瘤を形成した3例 近森病院 外科
  • 森本暢
  • 辻井茂宏
  • 津田昇一
  • 坪井香保里
  • 八木健
  • 北村龍彦
消化器外科周術期症例に対する理学療法士の取り組み 近森病院 理学療法科 
  • 田中健太郎
近森病院 外科
  • 辻井茂宏
  • 津田昇一
  • 坪井香保里
  • 八木健
  • 北村龍彦
周術期管理における当院の管理栄養士の関わり 近森病院 栄養サポートセンター
  • 中西 花
近森病院 外科
  • 辻井茂宏
  • 坪井香保里
  • 八木健
  • 北村龍彦
急性期病院における歯科衛生士による周術期口腔機能管理の現状 近森病院 看護部
  • 矢野菜々
近森病院 外科
  • 辻井茂宏
  • 坪井香保里
  • 八木健
  • 北村龍彦

 

■論文・著書
出版 タイトル 筆者

癌と化学療法VOL.42(2015)
[Jpn J Cancer Chemother 42(4):489-492, April, 2015]

集学的治療が奏効し長期生存中の癌性胸膜炎・癌性心タンポナーデ合併乳癌の1例 近森病院 外科
  • 田中洋輔
  • 坪井香保里
  • 山本彰
  • 津田昇一
  • 辻井茂宏
  • 八木健
  • 北村龍彦