『臨床リウマチ』

 

『臨床リウマチ』
Clinical Rheumatology and Related Research
Vol.26/No.4 掲載
P.317-321   一般社団法人日本臨床リウマチ学会
2014年12月30日発行

 

  

チーム医療のイロハ ABC of Team Approach

  

社会医療法人近森会 近森病院
院長 近森 正幸

 
はじめに
21世紀を迎え、医療の高度化と高齢社会の到来で業務量も膨大になるとともに、診療報酬も出来高払いからDPCによる一日包括払いに変わり、病院の業態も物品販売業から労働集約型医療サービス業に大きく変化している。従来の薬剤や検査といったモノを売るのではなく、形のない「早く元気になって自宅へ帰ってもらう」という付加価値を生み出して提供するようになり、これを報酬に変えるには種々のマネジメントが必要になってきた。その大きなツールは、地域医療連携であり病棟連携、チーム医療であるが、もっともマネジメントの難しいチーム医療のイロハを述べてみたい。

チーム医療ってなんだろう
チーム医療というとほとんどの医療人が、“みんなが集まって情熱的にエイエイオー!!”ってやることのように思っているが、チーム医療は単に業務の処理の仕方であって、リスクが高ければ質の高い業務処理を行い、リスクが低ければ効率的な業務処理を行うことで、必要な業務すべてを質高く効率的に行うことができる。業務量はスタッフ数×能力×時間であり、能力は誤差範囲で、時間は労働基準法で限られることから、業務量=スタッフ数となる。現場スタッフにはスタッフを増やす権限がないため、業務量が増えると能力を最大限に上げるために“情熱的にエイエイオー!!”にならざるを得ない。業務量が膨大になるとスタッフ数を増やさざるを得ず、増加したスタッフの人件費をどうしたらペイするかという経営的な視点が必要になる。そのためにはスタッフの専門性を高めることで医療の質が上がり労働生産性が向上、患者数が増加し単価が増えることで売り上げが上がり、増えた人件費の原資にすることができる。
業務処理の現場の視点ではコア業務に絞り込むとは、専門性を上げるにはどうすればいいか、情報共有はどうしたらいいかなどが問題となる。

スタッフの専門性を上げるために
医療は日進月歩であり、専門性を上げるためにはOJT(on the job training)を通じて日々努力することが大切で、専門性の高い医師を見れば分かるように医師以外の医療専門職もそれぞれの視点で患者を診て、判断し、介入することが専門性を高める大きなツールとなる。第一段階は業務の標準化によるルーチン業務を先輩が屋根瓦方式で後輩に教え体得することで、第二段階はスタッフ数を増やし、患者を治すための医師や看護師が普通に持っている医療人の常識やそれぞれの職種の職業倫理を身に付けることで、患者を診る段階になる。それぞれの職種の視点で患者を診、判断し、介入を繰り返し、時には失敗して怒られ、時にはうまくいって患者に感謝され、こういう体験を繰り返すことで次第に患者が診れるようになる。第三段階は患者を診ることで専門性を高め、暗黙知を体得し、自立、自動できる医療専門職になる。医師でもまったく先が見えなければ土手医者だし、少ししか先が見えなければ藪医者となる。医療専門職も同じで暗黙知を身に付けることでセンスのいい医療専門職となる。

「人事レバレッジ」と「タスクシフト」
リウマチの診断、治療という業務を行っている現場により近い医師やスタッフが、一緒に働くときにどういう働き方をしたら働きやすいかという観点からチーム医療を分類すると、「人事レバレッジ」と「タスクシフト」の二種類に分けることができる。
「人事レバレッジ」のレバレッジは梃子であり、梃子を効かせて働かせるように診断、治療を行っている医師が判断し、その指示のもと一緒に業務を行う方法である。スタッフは第一段階のルーチン業務を体得したレベルのスタッフであり、専門性が低いため医療の質も労働生産性もあまり向上することがなく、権限委譲されず、医師、看護師の雑用を取り負担軽減が大きな役割となる。
「タスクシフト」は業務の代替を意味しており、スタッフは第三段階の暗黙知を体得したスタッフで、それぞれの視点で患者を診、判断し、介入する自立、自動が特徴である。専門性が高いことより医療の質を高め、スタッフの数だけ労働生産性を高めることができる。医師、看護師から権限委譲され、スタッフはいきいきと誇りをもって働けるようになる。
「人事レバレッジ」の指示を受け業務をしているだけのスタッフは、医師にもたれて(依存して)カンファレンスですり合わせして情報を共有せざるを得ないため、次に説明する「もたれあい型」チーム医療で専門部隊型チーム医療をせざるを得ない。「タスクシフト」の自立、自動しているスタッフは、暗黙知を持ったスタッフが組み合わせおもちゃのレゴブロックを組み合わせるように情報交換のみで情報共有し、病棟に常駐し「レゴ型」チーム医療を展開する。(図1参照

情報共有の仕方でチーム医療を分けると
情報共有の仕方でチーム医療を分類すると、医師にもたれてすり合わせして情報を共有する重なりの大きいタイプの「もたれあい型」とレゴブロック同士が情報交換のみで情報共有する重なりの小さいタイプの「レゴ型」に分けることができる。
「もたれあい型」は多職種がカンファレンスですり合わせして情報を共有するため、情報共有に時間がかかり、チーム医療の質は高いが処理能力には限りがある。そのためリスクの高い、数少ない患者に対する医師中心の治療型のチーム医療に適しており、専門部隊型チーム医療となる。病棟業務において権限の委譲が少なく、医師、看護師の周辺業務が残り労働生産性は低いといえる。
「レゴ型」は電子カルテや病棟に常駐しているため、二言、三言の情報交換で情報を共有し、情報共有の時間が短く、業務の標準化で質を保ち多くの患者を処理できる。そのためリスクの低い、数多くの患者に対する多職種による効率的な患者の状態を良くするチーム医療に適している。病棟業務においても、権限の委譲が大きく医師、看護師の周辺業務を取り中核業務のみ残るため、労働生産性は極めて高くなる。(図2参照)業務の標準化の質が高いか多職種の専門性が高ければ、質が高く効率的な「高度レゴ型」チーム医療になる。

組織原理の大転換
「もたれあい型」は医師中心のピラミッド型組織によるチーム医療であり、出来高払いの時代の医師、看護師中心の少数精鋭の医療に適したチーム医療といえる。「レゴ型」はスタッフがそれぞれ独立し平等であり、多職種によるフラットな組織によるチーム医療であり、DPCによる一日包括払いの時代の多職種による多数精鋭の医療に適したチーム医療といえる。(図3参照)診療報酬の違いで病院の業態や病院組織のあり方も大きく変わり、業務処理の仕方も多職種が医師の指示に従って単に業務を行うだけでなく、各々の医療専門職が自立、自動し、専門性を高め、医療の質を上げ、労働生産性を高めることが求められる時代になったといえる。

ICUでの高度レゴ型チーム医療
当院のICU18床には医師、看護師ばかりでなく管理栄養士2名、薬剤師1名、MSW1名が病棟常駐し、理学療法士は10~20名が介入、臨床工学技士の急性期チームは人工心肺やIABP、人工呼吸器を10名が担当、透析や血漿交換は臨床工学技士の透析チームが対応、病棟常駐型レゴ型チーム医療を展開している。心臓血管外科のモーニングカンファレンスはICUで、15分という短い時間で行われている。電子カルテの大きな画面を全員が見ながら「心嚢ドレーンを抜いとって」「はい」、「昼から食事開始していいですか」「いいよ」といった、一言、二言の情報交換で情報を共有している。院内認定のエキスパートナースは、スワンガンツや動脈ラインの抜去、ドレーン抜去、膀胱バルーン抜去、末梢ヘパロック、点滴のテーパリングなどを行い、管理栄養士が食事、理学療法士が立位、歩行を行っている。
エキスパートナース二人で心嚢や胸腔ドレーンを抜去しているが、これらは業務の標準化(マニュアル化)で業務を繰り返し行い、ルーチン業務にすることで安全、確実に高度な業務に対応し、外科医の業務を代替している。心臓手術当日、理学療法士により術後2時間で適応患者の80%の患者を立たせているが、心臓リハビリの担当理学療法士がどのような患者に、どのようにして、どれぐらい立たすか、どのような状態になれば中止するかを決め実践している。これは理学療法士の専門性が高く、高度な業務に対応しているといえる。手術翌日には馬蹄形のウォーカーでスタッフステーション一周50mを10周、午前、午後2クールで1,000mを歩いている。当然食事は栄養士により100%食べている。このように業務の標準化の質が高いか、多職種の専門性が高ければ、質が高く効率的な、現時点での急性期医療における究極のチーム医療「高度レゴ型」チーム医療を展開できる。

さいごに
チーム医療は多職種の専門性を上げることで医療の質を上げ、労働生産性を高めることができるが、業務を代替することで医師、看護師の雑用や周辺業務を取り、医師、看護師がコア業務に絞り込むことができ、著しく医療の質を上げ、労働生産性を高めることができる。さらには、医師はじめ多くの医療専門職がそれぞれのコア業務に絞り込み、専門性を高めることで高度な医療に対応できるようになり、忙しくてもいきいきとやりがいを持って働けるようになる。近森病院ではスタッフみんなが笑顔で目を輝かせて働いている姿を見ることができる。未来を信じて結婚し、子供をつくり、子供たちがすくすくと育っている。職員の子供たちによる夏休み病院体験ツアーを通じて、子供たちが大きくなると医療専門職になってまた近森に来てくれる。そんなすばらしい病院をつくる力をチーム医療は持っている。
 

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    図1

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    図3